■なぜ今、復刻部品を手掛ける!?
マツダ車の補修部品を手掛けているとはいえ、なぜ旧車部品の復刻に取り組むのだろうか。その大きな目的は、技術の伝承にあるという。
今、日清紡精機広島の主要製品は、エンジン関係が主体。ブレーキ関連部品は縮小傾向にあるという。特に、2020年5月にマツダ商用車の「ボンゴ」が生産終了したことで、継続生産されるブレーキパーツがなくなったことも大きかったそうだ。
そこでブレーキシリンダーなどの同社の得意とするブレーキ部品の技術を失わないためにも、今後も旧車への対応を行う決断をしたのだ。これはマツダ車に限ったことではなく、まとまった数の依頼であれば、さまざまな車種で行っていきたいとしている。これは旧車ファンにとって救いとなりそうだ。
■今も新旧マツダを支える日清紡精機広島の匠たち
マツダ傘下から離れたことで、継続部品を除き、マツダへの新規部品がなくなった時期もあったが、2016年より、マツダ新型車用のエンジン部品を受注。
SKYACTIV-G2.5Tエンジンの排気バルブに加え、2019年からSKYACTIV-Xのインテークマニホールドも手掛けている。まさにマツダの今を支えているメイドイン広島なのだ。
ただ辰栄工業時代に比べると会社の規模は縮小され、現在の従業員数は70名弱。マツダから離れたあと、リーマンショック、東日本大震災、タイの洪水など影響で、経営危機に陥り、大リストラを断行したこともあった。そのなかで、生き残りをかけて奮闘した結果、マツダとの新規ビジネスが業績回復の大きな足掛かりとなったという。
ただ現在も辰栄工業時代からの社員が多いというだけに、マツダ車への想いも深いものがあるのだろう。それが同社の復活の大きな力になったに違いない。
もちろん、新車だけでなく、マツダの従来車向けの部品も製造しており、取材時にはマツダ「RX-7(FD3S)」のエアーコントロールバルブの組み立てが行われていた。熟練の職人によりひとつひとつ丁寧に手組で生産しているという。このように旧型車の部品は、多くの中小企業に支えられていることを、我々は忘れてはならない。
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