■売れているから変われない… 求められる変革への積極性
この販売格差が生み出す一番の弊害は、「日本市場はN-BOXやフィットなどの4車種に任せればいい」という空気がホンダに蔓延することだ。
日産のように全般的に売れず、メーカー別国内販売ランキングも5位まで下がれば、抜本的にテコ入れを図ろうとする気運が盛り上がる。それがホンダは、粗利が少ないとはいえ、4車種がキッチリと売れている。メーカー別国内販売ランキングも2位を保ってきた。そうなると前述4車種への依存度が一層強くなり、「小さなクルマのメーカー」にハマっていく。売れているために生じる弊害もある。
この影響により、2018年以降に国内で発売されたホンダ車は、軽自動車やフィットを除くと販売の主力にならない車種ばかりだ。インサイト(2018年)、クラリティPHEV(2018年)、CR-V(2018年)、アコード(2020年)、ホンダe(2020年)という具合になる。
このうち、アコードは2017年に北米で発表され、2年半も経過してから日本国内で発売された。それまで安全性の劣る旧型アコードを国内で売っていたのだから、日本メーカーの日本のユーザーに対する向き合い方としては相当に消極的だ。クラリティPHEVは価格が割高で、CR-VはLサイズSUVなのに内外装の質が低い。
こういった2018年以降に発売されたホンダ車は、発売時点において、すでに販売低迷が予想されていた。N-BOX/N-WGN/フィット/フリードの4車種に比べると、日本における市場性が雲泥の差であったからだ。4車種への依存体質が出来上がり、ほかの車種は国内市場に対する意欲を失っていた。
シビックもせっかく国内販売を復活させたのに、セダンは2020年に廃止された。十分な販売促進が行われた結果とは思えない。もはやシビックセダンが国内で改めて売られることはないだろう。
せめて近年において好調に売れた実績のあるヴェゼルとステップワゴンは、特別仕様車の追加などを含めてテコ入れを行い、販売促進に力を入れるべきだ。このままでは、ますます付加価値の高いホンダ車が登場しにくくなる。
なお特定の車種だけが好調に売れる販売格差の背景には、取り扱い車種を含めた販売系列の撤廃がある。かつてのホンダには、クリオ/ベルノ/プリモ店があり、レジェンドやアコードはクリオ店の専売車種だった。軽自動車はプリモ店の専売だからクリオ店は扱わず、薄利多売は成り立たない。そこでレジェンドやアコードを大切に売っていた。
それが全店で全車を扱う体制になると、販売しやすい車種だけが売れ行きを伸ばし、ほかは落ち込む。トヨタも今では全店が全車を扱い、アルファードは好調に売れてヴェルファイアは低下した。両姉妹車には、短期間で8倍の販売格差が生じている。
つまりホンダの国内販売状況は、今の国内市場の典型ともいえるだろう。ホンダに限らず各メーカーとも、いろいろな車種を選べる楽しさを大切にして欲しい。
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