ライバル対決で再確認 日本車界の宝 スイフトスポーツがクルマ好きを魅了し続ける理由

 スポーツハッチ、昔流にいうところのボーイズレーサーはすでに絶滅危惧種にある。かつてボーイズレーサーとして若者を魅了してきたシビックタイプRも、今やクラスアップして大型化&高額化、誰もが買えるシロモノではなくなっている。

 そんな中、孤軍奮闘しているのがスズキスイフトスポーツだろう。スイフトスポーツは現行モデルが4代目で、2017年にデビューしている。

 デビューから3年が経過するが、その評価は高く、販売も好調だ。

 日本のクルマ界の宝とも称されるスイフトスポーツを、欧州を意識したコンパクトカーであるマツダ2と、Bセグメントコンパクトカーの世界的なベンチマークであるVWポロと対決させてみた。

 その対決を通して、スイフトスポーツがクルマ好きを魅了し続ける理由について考察していく。

文/松田秀士、写真/SUZUKI、平野学、平野陽、池之平昌信

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マツダ2:日本のコンパクトカーで最も質感が高い

2019年7月にデミオがマイチェンを受け、それを機にマツダ2に車名変更。1.3Lガソリンエンジンは消滅し、現在は1.5Lのガソリン&ディーゼル

 スイフトスポーツとマツダ2に共通するのは、内外装とともに走りも欧州を意識したコンパクトハッチバックということだろう。

 マツダ2の前身であるデミオは、初代は安くて広い、実用性を追求した”スズキ的クルマ”だったが、今では驚くほどのクォリティを誇っている。対するスイフトスポーツも、初代は武骨なデザインのチープなスポーツハッチだったが、現在は見違えるほど進化している。

 バックボーンも含めこの2台、同じ穴のムジナ的存在でもある。

 では、現行スイフトスポーツとマツダ2を比べてみたい。

小気味よい走りが心地いいスイフトスポーツ。1.5Lターボの分厚いトルクと970kg(6MT)の軽量ボディにより痛快な走りを実現している

 スイフトスポーツは、日本で唯一と言っていいボーイズレーサーで、FFスポーツとして走りに特化している点がすばらしい。そして誰もが安いと感じるコストパフォーマンスも大きな魅力となっている。

 スイフトスポーツの唯一の弱点はブランドイメージだろう。スズキは軽メーカーとして有名ないっぽう、安っぽいイメージを持っている人も多いだろう。

 しかし裏を返せば、スズキはいかにコストをかけずにいいクルマを作るかのノウハウを持っていて、その集大成がスイフトスポーツと言っていいのかもしれない。

 逆にマツダ2は、マツダのプレミアムブランド路線により、コンパクトカーとしては贅沢な造りとなっている。この点では日本のコンパクトカーでは最高レベルのクォリティに仕上げられていて、ユーザーの満足度も高い。

マツダ2はまだ進化しきれていない部分もあるが、それは次期モデルでの実現に期待。25.5kgmのトルクを低回転で発生するため、走りにストレスはない
デミオ、スイフトスポーツとも6MTをラインナップしている

スイフトスポーツはボーイズレーサーの概念を覆した

 対決のキモである走りについて見ていく。

 まず、動力性能では、スイフトスポーツは1.4Lターボで、マツダ2には1.5Lのクリーンディーゼルがある。

 実用域での加速性能については、ディーゼルのビッグトルク、スイフトスポーツのターボによる分厚いトルクは、タイプは違うがともに甲乙つけがたい魅力を持っている。

 ではハンドリングはどうか。

 かつて一世を風靡したボーイズレーサーは、アシはガチガチに固めて、過給エンジン、NAエンジンにかかわらず、パワーでクルマを走らせる、結果乗り心地もよくないというのが一般的で、その最たるものが初代シビックタイプRだったと思う。

アシはガチガチに固めているのではなく、しっかりとストロークする。しなやかな身のこなしもスイフトスポーツの楽しさの一因

 しかしスイフトスポーツは、従来のボーイズレーサーの概念を覆した。足回りのセッティングについては、ある意味サルーンのような考え方をしている。

 しっかりと動くアシ、しなやかな身のこなしにより快適な乗り心地に加えて、走行中の静粛性も高い。予算の制約のあるなか、よく仕上げていると感心させられる。

 ボクはスーパー耐久レースにホンダフィットで参戦していたことがあり、同じクラスのライバルにデミオ(ディーゼル)がいたのだが、コーナーの速さにはお手上げだった。フィットよりも明らかにコーナリングスピードが速かったのは素性のよさだ。

 マツダは昔から、ハンドリングに独自のこだわりを持っていて、デミオにもそれがしっかりと注入されていた。マツダ2は走りに関してはそれを踏襲している。

 しかし、ハンドリングへのこだわりは、スイフトスポーツのほうにより高い志を感じる。

マツダ2の内外装の質感は日本のコンパクトカーで群を抜いている。おまけにオーディオがいいので、運転しながらムーディに音楽を聴くのが似合っている

マツダ2は運転しながら音楽を聴きたくなる

 マツダ2は前述のとおり、内外装のクォリティの高さが魅力だが、なかでもオーディオがいいのが特筆だ。そのため、マツダ2は運転しながら音楽が聴きたくなる。

 マツダ2は夜が似合っていて、高速道路を流してムーディに乗りたくなる。

 いっぽうのスイフトスポーツは、山に行ってワインディングを走りたくなる。乗り心地、静粛性も高いので、スポーツ走行しても快適性は高い。

 同じヨーロピアンテイストのスポーツハッチでもキャラクターはかなり違う。

VWポロ:Bセグメントコンパクトカーの世界的ベンチマーク

現行のポロは6代目で、2018年3月から日本で販売開始。当初は1Lターボのみだったが、その後2LターボのGTI、1.5LターボのRラインを追加

 ポロはいまだにBセグメントの世界的なベンチマークとなっている。現代のクルマとして先進の安全装備も充実している。ステアリングの剛性感が高く、安心して走ることができる本当によくできたBセグメントのコンパクトカーだ。

 スイフトスポーツとの最大の違いはどこにあるのか?

 それは、ポロをベースにSUVとしたT-CROSSがあるように、派生車を想定した設計がされていて、設計で図面を引いた時からある程度決まっている。こうなると望む、望まないにかかわらず妥協点が増えてくる。

 その点、スズキはバリエーションが少なく、スイフトスポーツは特化していて、ワンオフに近いクルマ作りがされている。ほかに転用がないモデルは魅力的だ。

ボディ剛性、ステアリング剛性という点ではポロに劣るスイフトスポーツだが、絶妙な味付けのハンドリングの魅力が勝っている
ポロはマニュアルトランスミッションの設定はなく、ツインクラッチの7速DSGのみ

クルマとしての総合力はポロ優位

 ポロを走らせると、特に高速道路をはじめハイスピード領域でのスタビリティの高さは、日本のコンパクトカーより1枚も2枚も上を行っている。

 日本で販売されているポロは、1Lターボ、1.5Lターボ、2Lターボ(GTI)と3種類のエンジンが用意されていて、当然ながら排気量が大きいほど加速性能に優れているが、1Lターボでもまったく不満はないレベル。

 いっぽうスイフトスポーツは1.4Lターボで、分厚いトルクによる加速感は爽快。

 上記のとおり、実際に走らせるとさすがポロとうならされ、納得させられることは多い。特にボディ剛性に関しては、ポロのガチっとしたしっかり感は走りの質感の向上に寄与している。実際に旧型ポロに比べて、大幅にボディ剛性がアップしている。

 しかし、ボディ剛性が高いにこしたことはないが、大きな問題ではない。スイフトスポーツはボディ剛性という点ではポロに劣っているが、走らせて楽しいハンドリングをしっかりと実現している。

 スイフトスポーツの頑張りが際立っているように思う。

Bセグメントコンパクトカーの世界的ベンチマークであるポロは、走り、実用性、装備、安全性能などを含めたトータル性能はさすがピカイチ

万人受けするポロと好みがわかれるスイフトスポーツ

 ポロは使い勝手よし、ブランドイメージもいい、走りもいい、装備も充実していることに加えて、人気のドイツ車ということで死角はない。世界のベンチマークだけあって、コンパクトカーとしての総合力はポロに分がある。

 実際にポロは万人受けする極めつけの大衆車で、10人いれば10人が評価して欲しがるクルマだ。

 それに対してスイフトスポーツはポロよりも趣味的要素が強いから好き嫌いもはっきりと分かれ、10人いれば欲しいと思う人は、多くて4~5人程度。スイフトスポーツはいいけど、いらないという人も少なくない。

 だけど乗ると本当に楽しいんだよなぁ。

 こんなクルマが200万円少々で買えるのはすばらしいと思う。これが日本車界の宝と言われるゆえんだろう。

ポロは全幅が1750mmに拡幅されたことによって室内の横方向の余裕が生まれた。インテリアは派手さはないが、しっかりと作りこんでいる印象

【画像ギャラリー】カッコいい! 走りが楽しい!! 安い!!! 三拍子揃ったスイフトスポーツをくまなくチェック