トヨタシエンタ失速!! 前年比販売7割減の手痛い裏事情

■トヨタ車同士の競争で!? 納期にも影響あり! シエンタ失速の真相

 また2019年7月から9月における小型/普通車の登録台数を見ると、日産やマツダが減る代わりに、トヨタは対前年比を上乗せした。当時は現行カローラのセダンとツーリングが登場する直前だったから、シエンタが稼ぎ頭になっていた。

 この反動で2020年のシエンタは売れ行きを下げたと見られ、販売店は次のようにコメントしている。

「2019年の終盤から、トヨタでは比較的コンパクトな新型車を積極的に発売しています。2019年9月にはカローラセダンとツーリング、11月にはライズ、2020年2月はヤリス、8月にはヤリスクロスです。お客様の話題性やディーラーの販売力は、こういった新型車に集中するので、既存の車種にも影響を与えています」

販売台数ランキングで好調を維持するトヨタ「ライズ」
販売台数ランキングで好調を維持するトヨタ「ライズ」
トヨタ「ヤリスクロス」(写真右)&「ヤリス」(写真左)。ヤリスは自販連発表の販売台数ランキングでは、2020年7月から首位を獲得している(9月からはヤリス+ヤリスクロスの合算になった)
トヨタ「ヤリスクロス」(写真右)&「ヤリス」(写真左)。ヤリスは自販連発表の販売台数ランキングでは、2020年7月から首位を獲得している(9月からはヤリス+ヤリスクロスの合算になった)

 コロナ禍の影響が生じるなかで、トヨタはライズやヤリスなどの新型車を投入することにより、売れ行きの下降を抑えた。2020年1~10月の国内販売累計を見ると、自動車市場全体では14.7%のマイナスだが、トヨタは8.8%の減少に食い止めている。前述のコンパクトな新型車を多く販売したためだ。ライズやヤリスが好調に売れると、従来型のシエンタはマイナスの影響を受ける。

 ちなみに2020年1~10月における小型/普通車の登録台数を見ると、トヨタ車が49%を占めた。直近の10月に限ると、国内で登録された小型/普通車の54%がトヨタ車だ。今はホンダや日産も軽自動車の国内販売比率を高め、2020年1~10月にはホンダ車の52%、日産も43%に達した。このように他メーカーが軽自動車に力を入れると、小型/普通車はトヨタ車同士の戦いになる。シエンタはライバル車というより、トヨタ車同士の競争に巻き込まれて売れ行きを下げた。

 販売店からは、シエンタの生産と納期に関する話も聞けた。

「2020年11月上旬に契約した場合、ノーマルエンジンを搭載するシエンタの納期は、2021年1月下旬から2月上旬です。ハイブリッドはさらに伸びて2月下旬以降です。納期が全般的に長く、同じ工場で、好調に売れるヤリスクロスを製造していることが影響しているかも知れません。シエンタの納期は先が見えにくく不安定です」

■ピークは過ぎたが堅実な販売は評価されるべき

 このほか3列シートミニバン全体の伸び悩みもある。2020年9月において、ミニバンの主力車種で対前年比が上向いたのはトヨタ「アルファード」だけだ。姉妹車のヴェルファイアは、アルファードが伸びた影響を受けて、63.4%の大幅なマイナスになった。同じくトヨタの「ヴォクシー」も36%、「ノア」は21.1%、「エスクァイア」は44%減少している。トヨタ以外のミニバンでも、セレナが31.1%、ステップワゴンは43.5%減った。

2017年12月のマイナーチェンジで、フロントの意匠を大幅変更したトヨタ「アルファード」。姉妹車の「ヴェルファイア」を置き去りにして、ミニバンで唯一前年比増を達成
2017年12月のマイナーチェンジで、フロントの意匠を大幅変更したトヨタ「アルファード」。姉妹車の「ヴェルファイア」を置き去りにして、ミニバンで唯一前年比増を達成

 このように今は、小型/普通車でも、全長を4m前後に設定した2列シートのコンパクトな車種が人気だ。安全装備の充実などによってクルマの価格が全般的に高まり、所得は1990年代の後半をピークに伸び悩んでいるから、小さな車種に乗り替えるユーザーが増えている。その渦中でシエンタは、新型車のライズ、ヤリス、ヤリスクロスなどに押されて売れ行きを下げた。

 しかし設計が古くなった割に需要は根強く、月々の変動はあるが、手堅く売れる面を併せ持つ。2019年7~9月のように、市場環境の変化に応じて売れ行きを伸ばす人気の根強さ、したたかさを備える。メーカーが安定した業績を保つには、シエンタのように、ピンチに陥った時に需要を支えてくれる孝行息子を持つことが大切だ。

【画像ギャラリー】歴代シエンタと失速も堅実に売れている現行型シエンタの詳細をチェック!!

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