Bピラーレス車はハンドリングに左右差がある!?
Bピラーレス、といった分かりやすく左右非対称のクルマだけでなく、見た目は左右対称となっているクルマでも、実は左右で違いがたくさんあります。横置きエンジンとトランスミッション、ステアリングホイールを支えているメンバー、計器類、運転席と助手性のシート構造、燃料給油口の位置、マフラーの経路など、左右で異なる機構はたくさんあります。
そもそも人間が一人、車両中心からオフセットした位置へ着座するので、左右の重量差がついて当然です。そのため、「ハンドリングに左右差がある(左にハンドルをきったときと、右にきったときで、運動性能に違いがある)」というのは、ある意味当たり前の現象なのです。
しかしながら、左右でつくりに違いがある、などで、クルマの車体剛性に過度な左右差があると、ステアリングホイールを真っすぐに持っていても、右か左へ片流れしたり、マンホールなどのギャップに乗ったあとに車体の揺れが収まりにくかったり、走行中の荷重変動で車体がブルブル、ワナワナと異常振動を発生したりと、不具合が起きる可能性が高まります。
これらの不具合が起きないよう、自動車メーカーでは、入念な実験と対策を繰り返しており、市販されているクルマで、体感できるような不具合が起きることはありません。もし、市販車でこのような不具合が体感できてしまうと、そのクルマ、および自動車メーカーとしては失格です。
ハンドリングに左右差があったとしても、元メーカーエンジニアの筆者としては、これをBピラーレスのせいにするのは、安直すぎると考えます。そもそもクルマはさまざまな箇所が左右非対称であり、Bピラーがないせいでそれが起こっているかどうかは、オンオフ実験をしない限り、判別できないからです。
クルマは完全な線対称にはつくれない
クルマは、ドライバーが座っている側は重たくなりますし、ドライバーの体重によって、その左右差は変わってきます。また、同乗者が増えれば、タイヤにかかる重量のバランスも変わります。
そもそも道路には、雨水を流すために片勾配(カント)がつけられているため、市販されているクルマは、このカントによる片流れをキャンセルする動きとなるよう、ステアリングやタイヤに、左右で異なる細工をしています。クルマは、どうしたって左右対称にはならないのです。
少し前のFFハイパワー車では、強い加速をすると、ステアリングが左右にとられる「トルクステア」が起きていました。FF車の横置きエンジンレイアウトの場合、トルクステアは、構造上避けられません。昨今は、トルクステアが発生するクルマはあまり聞かなくなりましたが、それは、左右差を打ち消す技術開発がなされたためです。
クルマの設計で重要なのは、多少の重量条件が変わったとしても、性能の変化が最小限になるよう、「ロバスト」な設計ができていることです。ご自身のクルマの裏側を覗く機会があれば、左右非対称になっている部分を見てみてください。きっと面白い発見ができるはずです。
コメント
コメントの使い方