衝突安全は? 運動性能は?? 「左右非対称」のクルマの懸念と大丈夫な理由

衝突安全は? 運動性能は?? 「左右非対称」のクルマの懸念と大丈夫な理由

 現在売られているクルマの多くは、左右対称のつくりとなっており、外見上、左右でそのつくりに大きな違いはありません。

 しかし中には、トヨタポルテ、MINIクラブマンなどように、左右でドアの枚数が違っていたり、日産キューブのようにCピラーの形状が大きく違っていたり、タントのように助手席側のBピラーがなかったり、左右対称ではないクルマもあります。

 クルマに限らず、人間は対称となっているものに、美しさや安定感、といったイメージを受ける傾向があります。これらのクルマがわざわざ左右非対称としているのは、その使い勝手を考慮してのこと。しかし、これら左右対称ではないクルマについては、その安全性能や走行性能に、疑問を投げかける人もいます。

 果たして、左右が対象でないクルマの性能は大丈夫なのでしょうか。今回は、左右非対称なクルマの安全性能は走行性能について、考えていきたいと思います。

文:吉川賢一
写真:TOYOTA、NISSAN、DAIHATHU

【画像ギャラリー】左右非対称デザインによって、利便性に特化したクルマたち


Bピラーレス車は衝突安全性が低い!?

 今回は、分かりやすさを重視して、片側Bピラーレスのクルマを例に考えていきます。

タントの助手席側に備わる「ミラクルオープンドア」は、フルオープン時で1490mmも開く リアのフロア高を370mmと低くしたことで、乗り降りがしやすく、リアシートへもアクセスしやすい
タントの助手席側に備わる「ミラクルオープンドア」は、フルオープン時で1490mmも開く リアのフロア高を370mmと低くしたことで、乗り降りがしやすく、リアシートへもアクセスしやすい

 車体骨格の一部であるBピラーがなくなると、当然ながら、ボディの剛性や強度に左右差がつきます。そのため、左右差をなくす対策が、必ず施されます。この衝突安全性は法規で定められていますが、この法規は年々厳しくなっているため、クルマの年式によって内容に差はありますが、しっかりと法規に則った対策が施されています。

 また、その他にも、国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)が一体となって行っている「自動車アセスメント」では、衝突試験結果をレーティングし、結果を公表しています。

 「新型車が、衝突安全性能評価の最高評価、ファイブスターを獲得!」というアピールを見たことがあるでしょう。自動車アセスメントで良い点をとることは、販売促進にも使われるため、各自動車メーカーは一生懸命に目標を達成させていきます。

 この自動車アセスメントで好成績を出していれば、「Bピラーレスは衝突安全性が低い」といったことはなく、ひとまずは、安心してよいクルマといえます。

通常の鋼板の3倍以上の強度を持つ「超高張力ハイテン材」を使用し、本来は車体側にあるピラーを、フロントドア後端とリアスライドドア前端に内蔵したことで、ボディ剛性や安全面にも抜かりはない
通常の鋼板の3倍以上の強度を持つ「超高張力ハイテン材」を使用し、本来は車体側にあるピラーを、フロントドア後端とリアスライドドア前端に内蔵したことで、ボディ剛性や安全面にも抜かりはない

 ちなみに、Bピラーレス、というと、側突に関する影響がよく取り沙汰されますが、Bピラーレスで影響を受ける衝突性能は、側突だけではありません。

 Bピラーには、正面衝突やオフセット衝突(車体の中心よりずれた状態での衝突)の際の衝撃を受け止めて力を逃がす、という役割もあり、クルマの衝突安全性において、とても重要な役割を担っています。

 そのため、Bピラーレスのクルマは、スライドドア(もしくは観音開きのドア)の中に梁を通して、Bピラーの代わりになるような補強を入れて、成立させています。

骨格部材や補強部品など、配置見直しや適正化によって、重量増を抑えたタント
骨格部材や補強部品など、配置見直しや適正化によって、重量増を抑えたタント

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