ABSの普及から自動ブレーキの登場まで。多彩な機能で実は劇的に変わった、車を止める技術の進化とは?
「動く」というクルマの機能においてもっとも大切な部分でして思い浮かぶのは、クルマを止めるブレーキだろう。自動車黎明期から振り返ると現在の自動ブレーキに至るまでその進化は目覚ましい。
なかでも当記事では多機能化しつつあるブレーキの役割やその変化、今後の進化などを中心にスポットライトを当てつつ、考察していきたい。
文/永田恵一、写真/ホンダ、トヨタ
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1960年代後半~1970年代 世界初のABSが登場
タイヤの内側に付く車輪速センサーからの情報を基に、ブレーキでタイヤがロックした際にはロックを解除し、状況によってはブレーキを掛けながらでもハンドルが効く、制動距離が短くなるといった安全性向上に貢献する「ABS(アンチ・ブレーキロック・システム)」が登場したのはこの頃だ。
ABSは1968年のリンカーンコンチネンタルが、フルブレーキの際のスピンを防止する目的でリアだけに装着し、1978年にはベンツが450SELで世界初の四輪ABSを搭載。日本初のABSは1982年に登場したホンダプレリュードの2代目モデルだった。
特に日本車のABSは1980年代までフルブレーキの際に制動距離が伸びることが多いなど、一定以上の運転スキルがあるドライバーには邪魔になることも多かった。
しかし、1990年代以降ABSはブレーキを解除する時間が短くなるなどスポーツ走行の際にも武器になるほど性能が向上した。
なおABSやABSを構成する車輪速センサーは後述する横滑り防止装置や自動ブレーキを成立されるための基盤となるパーツでもある。
1990年代中盤~ 今や当たり前の横滑り防止装置やHVの回生ブレーキが登場
1995年はクルマやブレーキにとって歴史的な進歩となる「横滑り防止装置」がW140型のベンツ Sクラスの「ESP」、トヨタ クラウンマジェスタ4WDの「VSC」で登場した大きな節目だった。
横滑り防止装置は、ABSの車輪速センサーの情報を基にホイールスピンを抑えるトラクションコントロールとABSを統合制御し、クルマが危険な状態になった際にはアクセル(正確にはエンジンの出力制御を行うスロットルバルブ)を戻す、ブレーキを四輪個別に掛けることも可能というもので、装着車が自損事故に遭う可能性は劇的に減少した。
翌1996年にはベンツ、1997年にはトヨタがブレーキを強く踏んだ際にさらにブレーキ踏力を増し、最大の危険回避であるフルブレーキが多くの人に可能になるブレーキアシストを市販車に搭載。
また、1997年登場の初代プリウスは、世界初の量産ハイブリッドカーというだけでなく、ブレーキという面でも大きな一歩を踏み出したクルマだった。
具体的にはプリウスはモーターも持つ電動車のため、減速の際には駆動用モーターを使って減速エネルギーを駆動用バッテリーに戻しながら止まる回生制動が可能だ。
回生制動は、電動車の燃費、電費向上に大きく影響する重要な要素なこともあり、回生制動からパッドやシューを使った摩擦ブレーキへのバトンタッチを上手に行いたく、回生協調ブレーキと呼ばれるブレーキペダルをスイッチのように使う電子制御ブレーキ(=バイワイヤブレーキ)が誕生した。
初代プリウスの初期モデルの回生協調ブレーキは、ブレーキを踏んだ際のフィーリングが唐突などの難点もあったが、安全に関係する問題も起こさず、燃費も向上させたことは凄いことであり、回生協調ブレーキは電気自動車や燃料電池車といった電動車にもつながる技術となった。
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