■ロータリーエンジンの開発、実用化がマツダにもたらしたもの
ひとつには他に得難いブランドヘリテージ(遺産)だ。
世界でマツダだけしか実用化できなかったエンジンを開発し、ファンを熱狂させるロータリースポーツカーを量産、1991年にはロータリーエンジンでル・マン24時間レースを制覇するという偉業を成し遂げている。
いまマツダの看板車種となっているロードスターも、突然生まれたわけじゃない。プロローグとしてのロータリーエンジン物語があるからこそ、マツダのブランドイメージにスポーティな個性が宿るのだ。
もうひとつ、会社としての文化や人が育ったことも大きい。
ロータリーエンジンの開発は困難の連続だったが、そこで鍛えられた不屈の精神が後のマツダを支える大きな力となる。
マツダは業績の浮き沈みが激しいメーカーで、初期のロータリーで急成長を遂げたと思ったら石油ショックで急降下。
初代FFファミリアの大ヒットで一息ついたのも束の間、バブル崩壊でフォード傘下へ。そしてまた、リーマンショックで会社存続の瀬戸際に……。見ていてハラハラするといったらない。
ところが、こういうジェットコースターみたいな会社なのに(だからこそ?)、内部の人間、とりわけエンジニアには不屈の精神力を持ったサムライが揃ってる。
最近でいえば、ミスタースカイアクティブの人見光夫さんなんかが典型。こういうタイプのエンジニアは、たぶんマツダ以外からは出てこない。
人を束ねる求心力としてロータリーエンジンは理屈抜きに特別な存在。そして、その中心にいたのが、山本健一という偉大なエンジニアだったのである。
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