デザイン不変のN-ONEが抱える期待と不安 売れている路線キープとはちょっと違う!

■開発関係者が明かした”あえて”変えなかった理由

 開発関係者によると、台数の出るクルマから優先的に開発リソースを使っていくのは当然のことで最後発となったのだが、最初からこうする方針だったわけではなく、残すことを前提に2代目をどうすべきかをさんざん議論し、合理的な方法を検討した結果、こうなったという。

 実は初期段階では全面的に変える案もあり、原寸大のモデルも作ったものの、どうにもN-ONEらしさに欠ける感があった。そこで原点に立ち返り、ユーザーにとってもホンダにとっても意味のあることをと考えた。

 もともとN-ONEはこのデザインだからこそ気に入って指名買いするユーザーが多く、愛着を持ってもらえている。それを受けて、いっそのこと見た目は全面踏襲すべきという案が有力となり、デザインを大きく変えることなく中身だけ新しくするという方向で進められる運びとなった。

 ホンダ内の販売サイドの反応も気になるところだが、開発責任者の宮本渉チーフエンジニアによると、発売前に関係者に実車を見せたところ、2割程度からモデルチェンジなら変えて当たり前という声が上がったものの、ざっくり8割の販売現場でそのあたりの事情をよく理解している関係者には開発サイドの考え方を好意的に受け入れてもらうことができたという。

「実際の話、フルモデルチェンジだから変わらなければいけないと変わった結果、失敗した例が過去にいくつも見受けられます。それにカタチに意味のあるクルマであればあるほど、どうして変えたのだろうと思われてしまいます。そういう声は少なからずありました。なので今回は、変える必要のないものは変えないという強い意志を持って作りました」と前出の宮本氏も述べていた。

 月販目標も2000台と控えめ。ホンダセンシングの搭載や6速MTの投入など目ぼしい話題もあるとはいえ劇的な増加は望めないにせよ、当面は問題なくこれぐらいの目標なら達成できそうな気はするが、いずれにせよこれぐらいの台数しか見込めないのに残されたことをポジティブに捉えるべきだと思う。

新型N-ONE RSには、6速MTが設定された。「ガチッ」としたフィールのシフトで、操作感がはっきりとしている
新型N-ONE RSには、6速MTが設定された。「ガチッ」としたフィールのシフトで、操作感がはっきりとしている

「オジリナル」、「プレミアム」、「プレミアム ツアラー」、「RS」という4つのグレードのうち、自然吸気とターボの設定は半々で、それぞれわかりやすく個性が差別化されている。

 ボトムの「オリジナル」もけっして他車でよくある廉価グレードではなく、N-ONEひとつの個性として仕立てられているのは、カタログの表紙を飾っていることでも明らか。幅広い層を相手にするのではなく、こんな感じのN-ONEが欲しいというそれぞれのユーザーの思いにしっかり応えている印象を受ける。

新型N-ONE オリジナルのすっきりしたスタイリング。58psのNAエンジンは十分なトルクを発揮する
新型N-ONE オリジナルのすっきりしたスタイリング。58psのNAエンジンは十分なトルクを発揮する

 初代は、当時の時代のニーズを受けて全高が1600mmを超えるハイルーフのみとされていたところ、途中でロールーフ仕様が加わったが、2代目はロールーフのみとされた。走行性能面でもこのほうが有利であることには違いなく、N-ONEはそういうクルマだという方向性をより強く打ち出したことも見て取れる。

 それにしてもボディパネルをすべて旧型から流用するというのは前代未聞だが、似たような手法の成功例がすでにある。ほかならぬ「MINI」だ。筆者はN-ONEが世に出た時から、上手くやれば「日本のMINI」になれるんじゃないかと思っているのだが、2代目がこうなったことでますますその思いが強まった。

 BMW傘下でMINIが2001年に復活してから、これまで2度フルモデルチェンジしており、中身はそれなりに変わっているほか、むろん外見も時間の経過とともに微妙に変わっているものの、誰が見てもひとめでMINIとわかるデザインは変わっていない。それはファンガ求めるものにメーカーが応えているよい例だ。N-ONEもそうなれるとよいなと思う。

新型N-ONE 主要諸元
新型N-ONE 主要諸元

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