RX-VISIONはお蔵入り決定!? 日本が世界に誇る発売されなかった悲運のスーパーカー

 日本のクルマ界は基本的に大量生産、大量消費が前提となっているが、これまで多くのスーパースポーツカー、スーパーカーと呼ばれるエキゾチックなモデルが企画されてきた。

 少量生産のスーパースポーツカー、スーパーカーが発売されるのは非常にレアケースゆえ、悲運のモデルはたくさんあるが、その志は壮大なものがあった。

 最近ではマツダのコンセプトカーのRX-VISIONもRX-9という車名で登場するのではないかと期待させたが、残念ながらお蔵入りの気配が濃厚だ。

 本企画では世界が注目していたにも関わらず発売されなかった悲運の和製スーパースポーツカー、スーパーカーを集めてみた。

文/伊達軍曹
写真/MAZDA、DOME、NISSAN、YAMAHA

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■マツダRX-VISION

2015年の東京モーターショーで世界初公開

 2015年10月の第44回東京モーターショーにて、マツダファンのみならず、ほぼすべての自動車ファンを熱狂のるつぼへと巻き込んだマツダのロータリースポーツコンセプト「MAZDA RX-VISON」。

 超ロングノーズ&ショートデッキというスポーツカーデザインの古典を踏まえながら、同時に現代的でもあるそのフォルムは、まさにマツダの「世界一美しいFRのプロポーションを作りたい」との宣言がフカシではなかったことを証明した。

RX-VISIONの主要諸元は、乗車定員:2名、ホイールベース:2700mm、全長4389mm×全幅1925mm×全高1160mm。エンジンはSKYACTIV-Rを搭載し、駆動方式はFR、タイヤ:前245/40R20、後285/35R20、リム:前9.5J/後11Jを履く
随所にマツダのスポーツカーの歴史を感じさせるデザインモチーフを織り込み、今も変わらないスポーツカーに対するマツダの情熱を表現

 コンセプトカーゆえ詳細なスペックは不明だったが、「次世代ロータリーエンジン『SKYACTIV-R』を搭載!」、「駆動方式はFR!」とは正式にアナウンスされたことで、世の車好きは「うむ、これが次のRX-9に違いない!」と大盛り上がり。

 そして「RX-9用に取得した特許が公開された!」、「発売は2020年中らしい!」などとその後も盛り上がったわけだが、以降はぷっつり音信不通に。

 「RX-9の開発計画は凍結されました」との正式アナウンスはないが、凍結されているとしても不思議はないほどの音信不通っぷりである。

 2015年の東京モーターショーでMAZDA RX-VISONが初披露されて以降の次世代ロータリーにまつわる正式な動きといえば、コンパクトSUVのMX-30に2022年前半から順次、ロータリーエンジンを発電機として使用するマルチ電動化技術を採用したモデルを投入されるということ。

 そして、『グランツーリスモSPORT』用のバーチャルレースカーとして「RX VISION GT3コンセプト」が“デビュー”した程度。

グランツーリスモSPORTで2020年にデビューした「RX VISION GT3コンセプト」。一度聞くと癖になる甲高いロータリーサウンドと、卓越したコーナーリング性能で人気の1台

 このGT3コンセプトが「リアルなRX-9発売に向けたマーケティング戦略の一環」と見ることもできるが、真相はあくまで藪の中である。

 RX-9の登場を期待したいのはやまやまだが、厳格化されるいっぽうの燃費規制等々の現状から鑑みると、MAZDA RX-VISONが「そもそものコンセプトどおりに市販される」という望みは、そろそろ捨てたほうがいいのかもしれない……。

■童夢-零

1978年のジュネーブショーで世界初公開

 株式会社童夢は、日本におけるレーシングカー・コンストラクターの草分けといえる林みのるが1975年に京都で興した会社。1994年にはF1への挑戦を開始し、現在は滋賀県に本社を置いてスーパー耐久シリーズなどに参戦している。

 そんな童夢が1978年のジュネーブモーターショーで初公開した和製スーパースポーツが「童夢-零」だった。

 「どうせ作るからには何か“世界一”となる要素が欲しい」と考えた林氏は、童夢-零の全高を「980mm」という世界一低い寸法に設定。

「世界一全高が低いクルマ」というコンセプトを掲げてデザインされた全高は、カウンタックより低い980mm

 そのうえで、開発には当時の日本を代表するレーシングカーデザイナーたちが参加した。ちなみに童夢-零はショーカーではなくあくまで市販を前提としたスーパーカーであるため、エンジンはメンテナンス性と供給性の観点から日産のL28型直6SOHCが選ばれている。

 スチール製のモノコックシャシーにFRP製の超絶ウェッジシェイプなボディを載せたフォルムはまさにスーパーカーそのものだったが、残念ながら日本では型式認定が取得できなかった。

ヘッドライトはリトラクタブル、ドアはガルウィング。生粋のスーパーカーとしてデザインされた1台

 そのため、アメリカの法規に合わせた改良モデル「童夢 P-2」を製作し、走行テストも行われたが、結果として資金難から計画は頓挫。 もしもあのまま童夢-零またはP-2が市販されていたなら……もしかしたら今ごろ、MJブロンディさんはカウンタックではなく「童夢」に乗っていたのかもしれない(……いや、それはないか)。

■日産MID4&MID4II

1985年のフランクフルトショーで世界初公開(MID4)、1987年の東京モーターショーで世界初公開(MID4II)

日産MID4は3.0L V型6気筒VG30DEエンジンをミッドシップに搭載。最高出力230ps/6000rpm、最大トルク28.5kgm/4000rpm、5速MTであった
全長4150×全幅1770×全高1200mm、ホイールベース:2435mm、車両重量は1230kg

 日産 MID4は、1980年代に入ってシェアを失った日産が、状況を打開すべく開発をスタートさせたミッドシップスポーツ。

 開発担当者となったのはスカイラインでおなじみの桜井眞一郎氏で、エンジンはVG30EをDOHC化した最高出力230psのVG30DEを横置きに搭載。

 駆動方式は4WDで、トラクションに優れる4WDとミッドシップレイアウトを組み合わせることで、海外のスーパーカーに負けないレベルの運動性能を得ようとした。

 1985年のフランクフルトモーターショーでデビューしたMID4は同年の東京モーターショーにも出品され、そして市販化を前提とした「MID4 II」の開発がスタート。

 開発主査は桜井氏から指名された中安三貴氏で、デザインはベストカーの「デザイン水掛け論」でおなじみだった前澤義雄氏が担当した。

 ミッドシップ+四輪駆動というレイアウトはI型から踏襲されたが、エンジンは最高出力330psのVG30DETT型ツインターボを縦置き搭載することに。

 サスペンションはフロントがツインダンパー式のダブルウィッシュボーンで、リアはマルチリンクに「HICAS」を装備した。

日産MID4IIは3.0L V型6気筒VG30DETTターボエンジンをミッドシップに搭載。最高出力330ps/6800rpm、最大トルク28.5kgm/3200rpm、5速MTであった

 そのような形でいちおう完成したMID4 IIだったが、それを市販するには「(問題点をつぶすための)さらなる開発期間」と「それを売るのだという全社的なコンセンサス」、さらには「2000万円級の車両価格」が必要となることが判明。

 当時の日産は「それらを受け入れる体力は弊社にはない」と判断し、MID4 IIの市販化を断念。もしも発売されていたならば、ホンダにおける初代ホンダNSXにも似た日産の「伝説」あるいは「金字塔」になったのかもしれないが……。

■ヤマハ OX99-11

1992年にイギリスのロンドンで世界初公開

ヤマハOX99-11は3.5L V型12気筒DOHCエンジンをミッドシップに搭載。最高出力450ps/10000rpm、最大トルク40kgm/9000rpm、6速MTであった

 ヤマハは1985年、F2選手権用エンジンとして2L V6 5バルブDOHCの「OX66」を開発。その後もOXエンジンは進化を続け、1991年にはF1用の3.5L V12「OX99」を開発するに至る。

 で、そのF1用エンジンを搭載するスーパースポーツカーとして計画され、1992年5月にロンドンで発表されたのが「ヤマハ OX99-11」だった。

 F1用であるOX99型エンジンを公道でも走行可能なレベルにデチューンしたうえで、カーボンファイバーとアルミニウム製のハニカムモノコックにミッドシップ搭載。

全長4400×全高2000×全幅1220mm、ホイールベース:2650mm、車両重量は1000kg

 特徴的なカウルは、FRPだけでなくアルミニウムの叩き出しも用いられるという凝りようで、デザインを担当したのは、かの由良拓也氏である。

 左右ではなく前後に2人乗るタンデムシートも特徴的だったOX99-11は「最高速度350km/h、0-100km/h加速3.2秒」と公表され、英国で生産を開始。だがバブル崩壊に伴うヤマハの業績不振のため、OX99-11の計画は1993年に撤回されてしまった。

 「バブルの徒花」と言ってしまえばそれまでかもしれない。だがOX99-11のデザインと独自性には、そう切って捨てるには忍びない美しさがある。

■ジオット キャピスタ

1989年の東京モーターショーで世界初公開

スバル、童夢、ワコールの3社が市販を前提として共同で制作した、和製スーパーカージオット キャスピタ1号車は、石川県の日本自動車博物館に展示されている

 「ジオット キャスピタ」は、服飾メーカーであるワコールの出資で1988年に設立された「ジオット」が企画し、童夢が開発と製作を行った和製スーパーカー。

 搭載予定だったエンジンは、F1のエンジン製作も行っていたイタリアのモトーリ・モデルニとスバルが共同開発する「1235」というF1用3.5L水平対向12気筒である。

 だが肝心の1235エンジンがF1でまったく不振だったため(予備予選を一度も通過できなかった)、スバルはとっとと撤退。

 そしてモトーリ・モデルニとの提携も解消したため、残されたワコール(ジオット)は水平対向12気筒に代わるエンジンを探さなくてはならなくなった。

 結果としてエンジン・ディベロップメント社のF1用V10エンジンを搭載することが決定したが、もともと水平対向エンジンを搭載する前提で開発されてきた車にV型エンジンを搭載することになったため、設計はなんだかよくわからないことに。

 その後、いちおう2台のジオット キャスピタが完成はしたが、時はすでにバブル崩壊後。和製スーパーカービジネスが成り立つムードは皆無であったため、市販には至らなかった。

F1で有名なイギリスのジャッドV10エンジンを搭載したジオット キャスピタ2号車。JARIの矢田部テストコースで激走!!

 こちらこそ「バブルの徒花」と呼ぶべき一台だとは思うが、それにしてもジオットキャスピタのデザインだけは非常に美しい。 さすがは下着メーカーのワコールである(というか、実際にデザインしたのはGMやオペル、フォードなどに在籍していた有名デザイナーの伊藤邦久氏なので、ワコールの下着はぜんぜん関係ないのですが!)

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