アクティが2021年6月に生産終了! 日本の軽トラック衰退のワケと電動化待ったなしで抱える不安

■OEMなくしては成り立たず! 軽トラックが抱える構造的問題

 つまり軽トラックは、薄利多売の軽自動車の中でも、特に1台当たりの粗利が限られて大量に生産する必要がある。他メーカーに供給するOEM車があって、初めて成り立つ商品でもあるわけだ。

 そうなるとアクティは辛い。今のホンダはOEM関係を結ばず、アクティトラックの年間生産台数は前述の2万台以下だ。ハイゼットトラックやキャリイがOEM車を含めて8~9万台を製造するのに比べると、量産効果は低い。今後安全装備や環境性能における義務化が増えると、採算が取れなくなることも考えられる。そこで生産終了の判断を下した。

 過去を振り返ると、以前はスバル/マツダ/三菱も自社で軽自動車を製造しており、軽トラックも含まれていた。これらのメーカーも採算が合わず、軽自動車製造から撤退した経緯がある。

スバルサンバートラック
2011年に発売された、サンバー発売50周年記念特別仕様車「WRブルー リミテッド」のスバル サンバートラック。リアエンジンで「農道のポルシェ」とまで言われた

 しかし販売も終了すると、車検、修理、保険といった仕事まで失ってしまう。また三菱が『ミニキャブ』の販売を終えたことで、その顧客がスズキ『キャリイ』を購入したとする。そうなると営業車として使っていた三菱『ミラージュ』まで、スズキの『スイフト』に切り替わる心配が生じる。販売店の仕事をなるべく減らさず、顧客を繋ぎ止めるために、OEM車を導入するわけだ。

 いずれにしろ軽自動車の全体需要が増える中で、軽トラックは農業就業人口の減少もあって売れ行きを下げた。薄利多売の商品で、今後は開発費用が増えることも予想される。そこで各メーカーとも、軽トラックをOEM車に変更した。日産と三菱は、軽乗用車は共同開発して製造も行うが、軽トラックはスズキ製OEM車を導入する。

 それなのにホンダは、アクティトラックの生産を終えて、ユーザーを逃す心配もあるがOEM車は導入しない見とおしだ。軽トラックを手がけるのは、ダイハツ、スズキ、OEM車の供給を受けるメーカーのみになる。

■今後さらに危機的状況に!? ユーザーを圧迫することになる電動化

 それでも農業や水産業を営む上で、軽トラックは不可欠だ。届け出台数が減ったとはいえ、今でも1年間に18万台の需要に支えられている。ダイハツ『ハイゼットトラック』、スズキ『キャリイ』、そのOEM車という品ぞろえは、もはやこれ以上は減らせない。

 今後のクルマはハイブリッドを含めた電動化を迫られるが、軽トラックの場合、価格が高まるとユーザーの利益を圧迫する。仕事に不可欠の商品でもあるから、配慮が必要だ。

 また軽トラックは、主に地域内の移動に使われ、フォークリフトのような用途もあるから走行距離は短い。日本自動車工業会のデータによると、1カ月に300km(1年間に3600km)以内の使われ方が多い。燃費規制によって縛るメリットの乏しいカテゴリーでもあるだろう。 そして、仕事上不可欠のライフラインでもあるから、ユーザーを困らせない配慮をして欲しい。電動化が最も負担になるのが軽トラックだ。

 そして、仕事上不可欠のライフラインでもあるから、ユーザーを困らせない配慮をして欲しい。電動化が最も負担になるのが軽トラックだ。

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