トヨタが日本で再現 ニュルはなぜ車作りに必要なのか?

「GT-Rだからニュル」というわけではない

ニュルで車を煮詰めたトヨタのC-HR
ニュルで車を煮詰めたトヨタのC-HR

 話は戻りますが、「GT-Rだからニュル」ということではなく、たとえ車がSUVであれ、セダンであれ、ワンボックスであれ、適度に高性能な車であればニュルへ持ち込むと路面を舐めるような、どこへ行っても接地感がキープされる安全な車に仕上げることができます。

 走りの懐の深さとか、高負荷での耐久信頼性などには車種は関係ないのです。GT-Rだからニュルで、SUVだからふつうのテストコースでいい、という話ではないのです。

 トヨタ C-HRはニュルを走り込んでいるということですが、実際に運転してみて感じた(C-HRの)ボディ剛性の高さや4輪の接地バランスのよさは納得できました。

 ニュルを走り込むことで懐の深い走りが作られますが、併せて乗り心地もよくなります。

 とはいえ、エンジンが2LのNA程度ではパワー不足でニュルのコースに負けてしまい、日本のテストコースやサーキットでの開発とさほど入力は変わらず、耐久信頼性の向上の効果は薄れます。わざわざニュルに持って行く費用対効果はあまり期待できません。

 低速域から強いトルクがあって微妙なアクセルコントロールが必要となる2Lターボエンジン搭載車以上での開発が効果的でしょう。

欧州と日本は車作りの“環境”も異なる

水野氏がいま在籍している台湾の自動車メーカー、ラクスジェンのU6
水野氏がいま在籍している台湾の自動車メーカー、ラクスジェンのU6

 国内自動車メーカーのテストコースは安全性確保の点からも常に改修して事故が起きないようにフラットで安全に走れる路面になっていますが、ニュルの路面は荒れていますし、危険なアップダウンでのブラインドコーナーも数多く、毎年多くの方が亡くなり、また負傷しています。

 GT-R開発の時もひっきりなしに緊急用サイレンが鳴り響いていました。日本の場合、開発テスト走行についても労働基準法や安全管理基準など法律を含め多くの安全災害への規定があり、ニュルのような危険で暴れまくるコースは作れないのです。

 また、開発専用のライセンスプレートまで設定され、かぎられた条件のテストコースだけでなく、山道や街中そして速度無制限のアウトバーンなど実際の公道を使い、あらゆる品質確保を要求している欧州や米国などと違い、日本では公道を使った開発走行は法律で禁止されています。

 私が「ラクスジェン」ブランドで現在開発している新プラットフォームの高性能SUVなどでは当然ニュルでのテストは視野に入れています。

 なぜなら……クラス下で販売中のU6モデルのマイナーチェンジ車開発でさえ耐久信頼性や高性能化のために、アップダウンがあり入力の厳しい九州のオートポリスサーキットでテストしていますし、これ以上に超高性能な新プラットフォーム適用上級モデルのパフォーマンスを考えたら(ニュルやアウトバーンに)持って行かなければおかしいのです。今後を期待していてください。

◆ニュルブルクリンク(北コース) 基本データ
・所在地/ドイツ・ラインラント=プファルツ州
・アクセス/フランクフルト空港より車で約1時間半
・開設年/1927年
・コース長/20.8km
・主な開催レース/ニュル24時間耐久、F1(1983年以前)

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