■GM『ハマー』→ GMC『ハマーEV』
●往年のハマーはどんなクルマだった?
『ハマー』はもともとアメリカのAMゼネラル社が生産していた、かつてのトヨタ『メガクルーザー』が影響を受けたと思われる軍用車である『ハンヴィー』の民生用だった。
ハマーのブランドは1999年にGMに譲渡され、ハンヴィーは『H1』に車名を変えた。さらにハマーブランドにはGMのフルサイズピックアップトラックの『タホ』をベースにした『H2』、ミドルピックアップのコロラドベースの『H3』も加わり、H2とH3はH1を小さくしたような軍用車の雰囲気を持つ内外装を大きな理由に、日本を含めまずまずの人気を集めた。
しかし、リーマンショックの影響もあり、ハマーブランドは2009年にGMが経営破綻した際に中国の四川騰中重工機械に譲渡される方向だったのだが、破談となり、ハマーブランドは2010年に消滅した。
●復活するハマーってどんなクルマ?
『ハマーEV』という車名で2021年秋に復活するハマーは、EVのフルサイズピックアップトラックである。ハマーEVはGMが近いうちに市販車を発表する『キャデラック リリック』から採用する新しいEVプラットホームとGMが開発したアルティウムバッテリー(容量は50から200kWh)を使ったモデルで、ポジションとしては登場時期も含めテスラ『サイバートラック』に近い。
最初に登場するハマーEVはトップモデルの「エディション1」で、エディション1は3つのモーターを搭載し合計した最高出力は1000馬力! 0-100km/h加速は約3秒とピックアップトラックながらスーパーカー級の加速力を持つという恐ろしい速さを持つモデルだ。なお航続距離は563kmと発表されており、バッテリー容量は200kWhと思われる。
悪路走破性に関しても4WSや車高調整可能なエアサス、オフロードタイヤを履くなど、ハマーの名に相応しい性能を備え、かつてのハマーよりは洗練されながらもハマーらしいワイルドな雰囲気を持つ内外装も魅力だ。
ハマーEVのエディション1はすでに予約段階で完売となっているのだが、今後ハマーEVには「3X」(3モーターで800馬力、航続距離483km)、「2X」(2モーターで625馬力、航続距離483km)、「2」(2モーターで625馬力、航続距離402km)というバリエーションが順次追加される予定だ。
ハマーが復活すること自体はめでたいが、よくて3km台と思われる電費の悪さを考えると、クルマから出る二酸化炭素はゼロにせよ、総合的に見た環境性能には疑問があるのも事実だ。
■VWバス→ VW『I.D.BUZZ』
●往年のVWバスはどんなクルマだった?
ドイツ本国での絶版後のメキシコも含めると、1938年から2003年まで65年間生産されたVWの『空冷ビートル(正式にはタイプI)』は、シャーシにアッパーボディ(家でいう上物)を被せるという構造だったため、空冷ビートルから派生した軍用車の『キューベルワーゲン』、2ドアセダンや2ドアステーションワゴンの『タイプIII』、スペシャリティな『カルマンギア』といったモデルが多数あった。
1950年に初代モデルが登場した『VWバス』(正式な車名はトランスポーター、VW社内ではタイプII)も空冷ビートル派生のRRの空冷フラット4エンジンを搭載する1BOXカーで、広さをはじめとした実用性の高さやユーモラスなデザインを大きな理由に世界中で愛された。また、日本ではトランスポーターをモチーフとしたエクステリアを持つ軽1BOXカーのカスタムカーを目にすることもある。
空冷ビートル派生のトランスポーターと言えるのは1967年登場の2代目モデルまでで、トランスポーターの2代目モデルは1979年にドイツ本国での生産を終了した後も空冷ビートルがメキシコで継続生産されたように、ブラジルにて最後はエンジンを水冷の直4に変更しながら2013年まで生産された。
●復活するVWバスってどんなクルマ?
現代版となるトランスポーターは、コンセプトカーが何度かモーターショーに出展されてきたが、2017年に発表された『I.D.BUZZ』(コンセプトカーの車名)の市販車が2022年に登場する予定だ。
I.D.BUZZの市販車は、VWのEV専用車である『I.D.3』などと共通のリアにモーターを積む「MEB」を使ったミニバンとなる見込みで、コンセプトカーのボディサイズは全長4942×全幅1976×全高1963mmと、現在のVWのラインナップでは『シャラン』に近いラージライズだ。
I.D.BUZZのコンセプトカーは、リアモーターということやスタイルこそトランスポーターを思い出させるが、自動運転も想定しているようでハンドルが飛行機の操縦桿に近い形状をしている点、1列目シートの回転対座機能や通常の3列シートミニバンで2列目シートが付くあたりにテーブルを配置できることなど、未来感に溢れている。
ただ、I.D.BUZZの市販車が日本に導入される可能性が低いのは非常に残念だ。
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