レクサスのフラッグシップサルーン『LS』が2020年11月19日に初めてのビッグマイナーチェンジを行った。
日本だけでなく世界中をターゲットとした高級サルーンである新型LSの走りはライバルと比べてどう評価されるのか!? 今回はV6、3.5Lハイブリッドの『LS500h』で、そのなかでも最上級の「エグゼクティブ」グレードに鈴木利男氏が試乗!
レーシングドライバー、そしてGT-R開発のテストドライバーとして著名な鈴木利男氏はいかなる評価を下すのか!?
※本稿は2021年1月のものです
レポート/鈴木利男 写真/平野学
初出:『ベストカー』 2021年2月10日号
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■何かが足りない……低速での乗り心地に課題あり
レクサス『LS』には縁がなく、乗るのは今回が初めて。だからマイチェン前のモデルに対してどう変わったかは語れないのですが、今回のクルマそのものの評価をしてみたいと思います。
下道をゆっくり走っていると、乗り心地が気になります。小さな揺れがけっこう体にきて、サスペンションでいなしていない印象です。ボディ全体が揺れている感じがするのです。
荒れた路面で振動が出るのはしかたない。大事なのはどう振動させて、どう収束させるかなのですが、このクルマは細かい揺れがずっと続いています。コンフォートモードも試してみましたが、あまり変化はありませんでした。
凄く細かい指摘で、決して「乗り心地が悪い」というわけでもないのですが、車両価格1687万円の高級車なら、そのへんは期待したいところ。大きめの入力が入った時にもドシンという振動がきて、これでいいのかな? という印象を持ってしまいました。
ただスピードを上げ、70km/hくらいになると細かな揺れは気にならなくなり、フラットな乗り心地になります。おそらく高速道路を走っている時には、高級車にふさわしい快適性が楽しめるのではないでしょうか。
■開発陣の苦労は認めるも、「LSでなければならない」という要素が足りない
一方で、ワインディングを少し速めのペースで走った時の操縦性はかなりいいです。かなり大きなボディで、車重は2290kgもあるのですが、そんな重くて大きなクルマを運転している感覚はありません。ハンドリングはなかなかのものです。
パワーユニットはスムーズで静か。特にドラマチックな印象はありませんが、高級車にふさわしいユニットであると感じます。
もっとどっしりとした乗り味を予想していたのですが、意外にそうでもないですね。逆に、それがワインディングでの軽快感に繋がっているのかもしれませんが。
スピードが上がれば快適になるのは確認できましたが、おそらく一般ユーザーは下道を50~60km/hで走るシーンがほとんどでしょう。そこで上質感のある乗り心地を提供できないのはどうなのかな、と思ってしまいます。
「このクルマでなければならない」という魅力には少し欠けるというのが正直な感想です。先進安全システムを始め、最高の装備が付いているのはわかりますが、クルマそのものの上質感がもうちょっと欲しい。
開発陣の苦労も知らずに勝手なことを言っているなと自分でも思ってしまいますが、低速域での細かな揺れが気になるのは事実。世界と戦うためにはそのあたりの上質さが必要だと感じます。
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