2020年、ついにレブル250の販売台数が1万台を超えた。2017年にデビューすると2018年にはベストセラーモデルに躍進。販売台数は右肩上がりで増え続け3年連続でベストセラーを記録しただけでなく、数においても万単位に上り詰めた。
一体何が起きているのか? 1983年のピーク以来シュリンクし続けてきたバイク市場で、しかもコロナ禍をものともせず売れ続ける秘密に迫るため、ホンダモーターサイクルジャパンに取材を試みた。
文/市本行平、写真/市本行平、HONDA、取材協力/ホンダモーターサイクルジャパン
【画像ギャラリー】ついに1万台を突破した大ヒットレブル250の初公開グラフはこちら
【常識外1】レブル250は販売台数が右肩上がりで増え続けている
レブル250はホンダの250ccのクルーザーモデル。クルーザーは一般にアメリカンとも呼ばれ、リラックスしたポジションでゆったり走れるジャンルのバイクだ。2017年に500cc版と同時に発売された。
ホンダによるとレブル250の初年度の販売台数は約3500台。ベストセラーではないが、250ccクラスの中では良い数字で年間計画台数の1500台に対して2.3倍を記録している。だが、この時点でレブル250は特に目立った存在ではない。ニューモデルは、初年度が一番売れて翌年からは販売数が減っていくのが普通なので、そのまま行けばレブル250は中の上という評価だっただろう。
ところがこの表を見ても分かる通り、右肩上がりで販売台数が増え続けており、2018年は約5300台、2019年は約8000台、2020年は約13000台を記録している。これについてホンダモーターサイクルジャパン(HMJ)のレブルシリーズを担当する商品企画課の和泉氏(以下、和泉氏)は次のように語る。
「レブル250は、2017年に発売して2018年に伸びてきたものの、それでも2019年は4500~5000台くらいかなと見ていました。また、モデルチェンジした2020年も最初は手堅く読んでいました。ただ、2019年も蓋を開けてみると台数は毎月伸びているということもあって、2020年に発表したモデルの年間販売台数を9000台と公表しました。これに対してSNSでは”ホンダ強気だな”などというコメントも見受けられましたが、私はいけると考えてました。9000台でも結構多めに立てた計画ですけど実際ここまで売れるとは思わなかったですね」
ホンダの営業担当者でも想定していない売れ行き。また、通常のモデルでは見られない右肩上がりの推移をしているのもすごい。
【常識外2】年齢別トップは20代、購入層はキレイな右肩下がり
日本自動車工業会の2019年度調査では、国内でバイクを新車で購入した人の平均年齢は54.7歳となっている。これは年々上昇しており、前年よりも2歳上昇している。二輪マーケットは”おじさん”が支えているというのが常識で、各メーカーも国内では中高年をターゲットに戦略を立てている。一方同時進行で将来を見込んで若者層の取り込みも進めるが、なかなか実を結ばないのが実情だ。
ところがレブル250は、20代の間で最も売れている。次いで30代、40代、50代と続き、60代と10代はほぼ同じ比率という年齢構成だ。こんなにキレイな右肩下がりの年齢構成は普通見られない。ここでもレブル250は常識外の存在となった。
「20代を中心にした年齢構成になっていまして、若い方にどんどん入ってきていただいている状態です。傾向としては、初めてバイクに乗るお客様にレブル250を選んでいただいているということが実際起こっていますね」(和泉氏)というように、若いライダーのバイクデビューに選ばれている様子が分かる。
【常識外3】女性比率が桁外れに高く、男性よりも平均年齢も若い
バイクは男性の乗り物というイメージが強い。日本自動車工業会の2019年度調査では、大型オンロードバイク購入者の女性比率は1%。400ccクラスで4%、250ccクラスで7%というのが最新の動向だ。和泉氏も「ホンダのモデルでも女性比率は10%を超えることはほぼないです。だいたい5~6%あたりが平均でスーパースポーツ系では1%程度ということもあります」と語る。
ところがレブル250の場合は、女性ユーザーが多い250ccクラスにおいても考えられない程の女性比率を記録している。また、平均年齢も男性より若いという。
「レブル250のお客様は、かなり女性比率が高いです。恐らくどのモデルよりも高いのではないか、というくらい高いです。女性でも安心して乗れる優れた足着き性や軽さ、取り回し性の良さなどがポイントで、多くの女性の方にも乗っていただいている状況です」(和泉氏)
他にもレブル250は、2020年モデルでアシストスリッパークラッチを採用し、クラッチレバーが大幅に軽くなっている。また、スピードメーターにはギアポジションを表示できるようになり、ビギナーの使い勝手に配慮した仕様も購入を後押しするきっかけになっているという。
【常識外4】認知拡大メディアはSNS、リアルな言葉を信じて買う
SNSを利用したアンバサダーマーケティングが隆盛となっている現在ではすでに常識外とは言えないが、バイク販売においてSNSのメディア力はまだ活用され切ってはいないだろう。バイクの新車販売ではWEBメディアや雑誌が主な情報発信手段。しかし、レブル250において認知拡大の効果を発揮しているのは、SNSの一つであるツイッターなのだ。
ツイッターで他の利用者から直接レブル250を勧められることが購入動機になっており、個人の口コミによる認知拡大となっていることが時間の経過とともに台数を増やしている理由だろう。また、ツイッターの現象は自然発生的なものなので発信は利用者の本音。そのリアルな言葉が若者に響いている。
「レブル250がなぜ若い人に売れているのかというと、一番大きな要因はSNSの力だと思います。初めてバイクを買おうとしている方が”オススメのバイク何ですか?”と聞いたりしています。その時”レブルってどう? 足着き性もいいよ”と紹介してくれる例が実際多く見受けられます。細かく指摘されていますし、結構具体的なことも書いて下さったりしますね。
ホンダとしてはSNS展開をレブル250だけ特に強化したということはないので、実際はお客様、ユーザー様で認知拡大を図っていただいた形になります。そして、少しずつ販売台数が増えていった中で、2020年1月にモデルチェンジしたことがきっかけでさらにSNSで拡散されて、それを知った方が購入されているケースも多いと推測しています」(和泉氏)
【常識外5】クルーザースタイルだが、ネイキッド寄りなことで人気に
シンプル、RAW(未加工の素材)をコンセプトにデザインされたレブルシリーズ。日本でもシンプルでクールと狙い通りの反応が得られている。面白いのは、日本ではクルーザーというよりもネイキッドバイク寄りなことで人気が得られている。例えば足置きとなるステップ位置が通常のネイキッドバイクと同じ位置にあることによるという。
「レブルは、クルーザーという領域でホンダはリリースしているのですが、どちらかというとネイキッド寄りな存在でご好評いただいているところもあります。ステップの位置は普通のクルーザーモデルでは前方になりますが、スポーティな走りを体感できるようにニーグリップもできる位置で確保されています。
こういった特性もありますがダントツは足着き性です。圧倒的な足着き性がこれだけ多くの若い方、初めての方に受け入れられているのかなと思います」(和泉氏)
つまり、シート高は低くくてもカッコいいバイクじゃなきゃダメ。そしてネイキッドレベルのスポーツ性や、初心者でも安心して扱える取り回し性もある。これらが国内におけるレブル250人気の要素としてまとめることができる。これにSNSで火が付けば再現性も見込めるはずだ。
和泉氏は「レブル250は現在でも非常に多くの受注をいただいておりますので、販売台数はまだまだ拡大傾向にあると思います」と語っており、今年もレブル旋風が止むことはなさそうだ。