クラウンオーナーがレクサスを買わない2つの理由
筆者がレクサス営業マン時代、クラウンとよく比較されるレクサスはGSとISだった。
当時、筆者はトヨタ店を母体にするレクサスにいたため、母体店のクラウンユーザーを紹介されることも数多くあった。しかし、実際にクラウンをレクサスに買い替えるユーザーは、半数いるかどうかだ。
商談中のクラウンオーナーから、新型クラウンを買うことにすると断りの連絡をもらう際、よく言われたレクサスを買わない理由が2つあった。「価格」と「車格」だ。
ISを検討していたクラウンオーナーからは、「クラウンと同じくらいの価格なのに小さいクルマ」と、GSと比べると「クラウンと同じくらいの大きさなのに、どうしてこんなに高いのか」と言われる。
クラウンの魅力は、装備や価格・サイズ感などたくさんある。そのなかでも最も大きな魅力は、そのクルマが「クラウンであるかどうか」なのだ。クラウンの販売現場を離れて改めて感じたことだった。
トヨタよりも格上のブランドと位置付けられるレクサスは、高級感や質感の高さが魅力だ。ただし、これはレクサスブランド全体としての魅力である。クラウンオーナーを振り向かせるには、ISやGSといった個々のクルマが、クラウンより愛せる、満足させられるクルマでなくてはならない。
ブランドを訴求するレクサスの一員としては、クラウンという確立されたブランドを羨ましく思った。クラウンのような歴史に裏打ちされたブランド力を、レクサスのクルマたちは、まだ醸成している途中なのである。
クラウンとレクサス「高級」の本質
クラウンとレクサスは、ともにトヨタの高級車というイメージがあるが、高級の捉え方が異なると筆者は思う。
トヨタの小型車から段々と車格を上げていき、「いつかはクラウン」の高みにたどり着いた満足感は、クラウンならではのものだろう。登り詰めて手に入れたこの高級は、達成感と似ている。
対してレクサスの高級は、優雅で快適な生活のようだ。頂を目指して登るというよりも、用意された上質な空間に入り込むのと似ている。
高揚感のクラウンと充足感のレクサス、どちらもいい気分だが性質的には動と静、違う高級であろう。
それぞれの高級があるなかでも、レクサス車種のブランド化は急務だ。ある程度の年月がかかるのは仕方ないが、トヨタ・レクサスには、車種ブランドを確立するまでの道筋が見えているはずだ。現在のクラウンが歩んだ道があるのだから。
まだ、公式な発表はないが、クラウンがSUVとして生まれ変わるのではないかと噂される。
筆者としては、クラウンエステートのような、派生車としてSUVを作るのなら良いことだと思う。ただ、セダンを廃止してというのなら、しっかりとクラウンがもつブランドの礎を、レクサスに引き継ぎ終わるまで待つべきだろう。
今から半世紀後、国内のレクサスは、今のクラウンと同じ66年を迎える。その時レクサスの各車種には、今のクラウンのようなファンがいるはずだ。クラウンとレクサスには、日本の高級車市場を牽引する同志として、今後も二人三脚で頑張ってほしい。
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