レクサスから見たトヨタ クラウン 販売現場で感じた伝統の重み


 1983年、7代目クラウンのCMに使用された「いつかはクラウン」のキャッチコピー。この言葉を体現し、クラウンは日本の代表する高級車の一つとなった。

 一方で、トヨタには高級車ブランドとして2005年に国内導入されたレクサスがある。トヨタの高級ブランドであるレクサスから、トヨタの高級車クラウンはどう見えているのだろうか。

 元レクサスセールスコンサルタントの筆者が、レクサスから見たクラウンの存在を考えていく。

文/佐々木亘、写真/TOYOTA、LEXUS、池之平昌信

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魔法の合言葉「クラウンだから大丈夫」

2003年に登場した通算12代目モデルの通称“ゼロ・クラウン”。長い歴史のなかで、クラウンは時に革新しながらオーナーの期待に応えてきた

 1955年にトヨペット・クラウンが登場してから66年。その間に14回ものフルモデルチェンジを重ねながら、クラウンは日本の高級車として、確固たる地位を築いている。

 2020年5月に全チャネル併売となるまでは、原則的にトヨタ店で専売(一部地域ではトヨペット店でも販売)されていた。

 筆者は、レクサスで営業職に就くまで、トヨタ店で営業マンをしていた。当時、トヨタ店で感じるクラウンの存在は特別に大きかったのを覚えている。

 多くのお店でショールームの真ん中にはクラウンが置いてあり、顧客からの電話を受ける際「クラウンの○○トヨタです」と出る社員もいた。まさにトヨタ店の看板車種という言葉がふさわしい。

現行型(15代目)クラウン(販売期間:2018年~/全長4910mm×全幅1800mm×全高1455mm)

 クラウンはオーナーとの結びつきも強い。クラウンを保有するユーザーの多くが、次のクルマもクラウンを選ぶ。

 新型クラウンの発表前事前受注はトヨタの他車種と比較にならないほど多く、契約していくクラウンオーナーは実車を見ずに簡易カタログだけで購入していくのだ。

 筆者は新人時代、クラウンの事前受注が、あまりに多く不安になった。注文後キャンセルなどにならないだろうかと思い「実車も見ずに契約して大丈夫ですか」と聞くと、クラウンオーナーの多くは「クラウンだから大丈夫」と笑顔で返してくるのだった。

 クラウンにはクラウンのファンがいる。

 これはトヨタのクラウンだから好きなのではなく、クラウンが好きなのだ。クラウンという一つのブランドを愛し、絶大なる信頼を寄せる。これはメルセデスのEクラスやBMW 5シリーズに乗り続けるオーナーと、どこか似ているように思う。

クラウンオーナーがレクサスを買わない2つの理由

レクサスGS(販売期間:2012年~2020年/全長4880mm×全幅1840mm×全高1455mm)

 筆者がレクサス営業マン時代、クラウンとよく比較されるレクサスはGSとISだった。

 当時、筆者はトヨタ店を母体にするレクサスにいたため、母体店のクラウンユーザーを紹介されることも数多くあった。しかし、実際にクラウンをレクサスに買い替えるユーザーは、半数いるかどうかだ。

 商談中のクラウンオーナーから、新型クラウンを買うことにすると断りの連絡をもらう際、よく言われたレクサスを買わない理由が2つあった。「価格」と「車格」だ。

 ISを検討していたクラウンオーナーからは、「クラウンと同じくらいの価格なのに小さいクルマ」と、GSと比べると「クラウンと同じくらいの大きさなのに、どうしてこんなに高いのか」と言われる。

レクサスIS(販売期間:2013年~/全長4710mm×全幅1840mm×全高1435mm)

 クラウンの魅力は、装備や価格・サイズ感などたくさんある。そのなかでも最も大きな魅力は、そのクルマが「クラウンであるかどうか」なのだ。クラウンの販売現場を離れて改めて感じたことだった。

 トヨタよりも格上のブランドと位置付けられるレクサスは、高級感や質感の高さが魅力だ。ただし、これはレクサスブランド全体としての魅力である。クラウンオーナーを振り向かせるには、ISやGSといった個々のクルマが、クラウンより愛せる、満足させられるクルマでなくてはならない。

 ブランドを訴求するレクサスの一員としては、クラウンという確立されたブランドを羨ましく思った。クラウンのような歴史に裏打ちされたブランド力を、レクサスのクルマたちは、まだ醸成している途中なのである。

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