アクセルの踏み加減を調節しやすいオルガン式
オルガン式ペダルは、アクセルペダルとブレーキペダルとの位置関係が真横ではないため、右足の踵を付けた状態での踏みかえが多少やりにくい、といった特徴があります。
しかし、吊り下げ式と違い、踏み込む際の足裏の軌跡と、踏み込まれたときのペダルの軌跡は同一の円弧を描きますので、アクセルの微妙な踏み加減を調節しやすく、疲労も少なく済む傾向にあります。
そのため、高速道路等を利用して長距離を移動するような運転環境では、微妙な速度調節ができるオルガン式ペダルのほうが適しているといえます。一定速を維持しやすいため、低燃費走行もしやすいです。
以前は、オルガン式ペダルには、吊り下げ式よりも高コストとなる、というデメリットがありました。そのためオルガン式ペダルには、「高級車の装備」というイメージがありましたが、最近は、アクセルの踏み込み量をセンサーで検出して、電気的にスロットルを駆動させるスロットルバイワイヤー方式が採用されている場合がほとんどです。
その結果、ワイヤー取り回しといったレイアウト上の課題がなくなり、吊り下げ式とのコストの差は、小さくなっています。
しかしながら、現在オルガン式ペダルを採用しているクルマは、メルセデスベンツ(Cクラス以上)やBMW、ポルシェなどのハイクラスの輸入車が多く、国産車でも採用しているクルマはミドルクラス以上のクルマであるケースがほとんどであり、いまでも「高級車を中心に採用されている装備」ではあります。
マツダがオルガン式ペダルを全車で採用するワケ
国産車では採用の少ないオルガン式ペダルですが、日本の自動車メーカーで、全車オルガン式ペダルを採用しているのが、マツダです。
マツダは、オルガン式アクセルペダルについて、
「シートに座って自然に足を前に出した位置にアクセルペダルを配置することで、運転時の疲労を軽減し、とっさのときの踏み間違いも起きにくくなります。」
と、しており、実際に、公益財団法人交通事故総合分析センター(ITARDA)が2017年に行った調査では、アクセラとアテンザ、デミオの販売台数1万台あたりでのペダルの踏み間違いによる死傷事故件数が、旧世代モデルより新世代モデルで86%も減少しているそうです。
先進安全装備や、衝突安全性能の違いなど、他の要素も考慮に入れる必要があるため、オルガン式ペダルだけの効果とはいえませんが、オルガン式のほうが、踏み間違えが起こりにくいであろうことは、なんとなくイメージできるかと思います。
ハリアーが現行型でオルガン式を採用した背景にも、高級感を演出するためだけではなく、踏み間違えにつながる要素をすこしでも排除しよう、というトヨタの狙いがあるのかもしれません。
メリットの多いオルガン式、しかし逆行する流れも…
しかしその一方、かつてはオルガン式を採用していたのに、吊り下げ式へとシフトしているメーカーもあります。フォルクスワーゲンです。量販車のポロやゴルフに限らず、高額車のパサートやアルテオン、そして同じグループの高級ブランドのアウディA3、A4、A6、A8にまで、吊り下げ式にしています。
A6やA8は1000万円強もするクルマですから、コストカットが目的とは思えず、アクセルペダル操作に対するメーカー思想の問題だと考えられます。
また日産車でも、スカイラインはオルガン式ですが、R35型GT-Rは吊り下げ式です。サーキット走行もこなすGT-Rの場合、コーナー手前でのブレーキングから、コーナー出口に向かって加速するときの、ペダル踏み換えにかかる極わずかなタイムロスを削るために吊り下げ型にした、といわれています。
ちなみに、スーパーGTに参戦するGT-R NISMOのレーシングカーの場合だと、アクセルペダルもブレーキペダルもオルガン式です。
NISMOはこの理由について
===(引用開始)===
ペダルの手前(ドライバー側)の下に収められたブレーキマスターシリンダーストッパーとの距離を短くして剛性を上げるため。低重心でシンプルな構造の方が、レースカーはいいのです
NISMO社「GT入門コンテンツ」より
https://www.nismo.co.jp/M_SPORTS/RACE/SUPERGT2005/ABOUT/INTRODUCTION/04.html
===(引用ここまで)===
と、説明しています。
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