マツダがオルガン式ペダルを全車で採用するワケ
国産車では採用の少ないオルガン式ペダルですが、日本の自動車メーカーで、全車オルガン式ペダルを採用しているのが、マツダです。
マツダは、オルガン式アクセルペダルについて、
「シートに座って自然に足を前に出した位置にアクセルペダルを配置することで、運転時の疲労を軽減し、とっさのときの踏み間違いも起きにくくなります。」
と、しており、実際に、公益財団法人交通事故総合分析センター(ITARDA)が2017年に行った調査では、アクセラとアテンザ、デミオの販売台数1万台あたりでのペダルの踏み間違いによる死傷事故件数が、旧世代モデルより新世代モデルで86%も減少しているそうです。
先進安全装備や、衝突安全性能の違いなど、他の要素も考慮に入れる必要があるため、オルガン式ペダルだけの効果とはいえませんが、オルガン式のほうが、踏み間違えが起こりにくいであろうことは、なんとなくイメージできるかと思います。
ハリアーが現行型でオルガン式を採用した背景にも、高級感を演出するためだけではなく、踏み間違えにつながる要素をすこしでも排除しよう、というトヨタの狙いがあるのかもしれません。
メリットの多いオルガン式、しかし逆行する流れも…
しかしその一方、かつてはオルガン式を採用していたのに、吊り下げ式へとシフトしているメーカーもあります。フォルクスワーゲンです。量販車のポロやゴルフに限らず、高額車のパサートやアルテオン、そして同じグループの高級ブランドのアウディA3、A4、A6、A8にまで、吊り下げ式にしています。
A6やA8は1000万円強もするクルマですから、コストカットが目的とは思えず、アクセルペダル操作に対するメーカー思想の問題だと考えられます。
また日産車でも、スカイラインはオルガン式ですが、R35型GT-Rは吊り下げ式です。サーキット走行もこなすGT-Rの場合、コーナー手前でのブレーキングから、コーナー出口に向かって加速するときの、ペダル踏み換えにかかる極わずかなタイムロスを削るために吊り下げ型にした、といわれています。
ちなみに、スーパーGTに参戦するGT-R NISMOのレーシングカーの場合だと、アクセルペダルもブレーキペダルもオルガン式です。
NISMOはこの理由について
===(引用開始)===
ペダルの手前(ドライバー側)の下に収められたブレーキマスターシリンダーストッパーとの距離を短くして剛性を上げるため。低重心でシンプルな構造の方が、レースカーはいいのです
NISMO社「GT入門コンテンツ」より
https://www.nismo.co.jp/M_SPORTS/RACE/SUPERGT2005/ABOUT/INTRODUCTION/04.html
===(引用ここまで)===
と、説明しています。
オルガン式が正解とは言い切れない
オルガン式の方が、メリットが多いように思えますが、運転の環境や時代が変われば、「正解」は変わってきます。ACCや自動運転が当たり前になると、右足の置き場確保のために、吊り下げ型が、再び見直されるかもしれません。いまから10年後、ペダルのレイアウトがどのようになっているのか、技術の進歩が非常に楽しみです。
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