ベストカー本誌で30年も続いている超人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」。過去の記事を不定期で掲載していきます。今回は日産 3代目ノート(2020年-)試乗です!(本稿は「ベストカー」2021年6月10日号に掲載した記事の再録版となります)
撮影:西尾タクト
■今の日産で最も健康的なクルマ
新型ノートに乗って、「e-POWERは見事な発明だな」と思った。
エンジンを発電専用に使って、クルマを動かすのは電気のみ。つまり、充電の心配をしなくていい電気自動車ということで、これってエンジン車と電気自動車のいいとこどりではないか。
e-POWERは2016年の先代ノートから始まっているからもう5年も経っているのだが、今さらながらそう感じたしだいだ。
おそらくe-POWERも進化しているということだろう。聞けばパワーが上がっていながら静粛性も向上しているらしい。しかも、アクセルだけで加減速できるワンペダルドライブもより自然な感覚に近づけているとかで、私も今回新型ノートで久しぶりに体感して、e-POWERのよさに改めて気づいたというわけだ。
新型ノートは今の日産で最も健康的なクルマだ。このe-POWERの魅力もあるし、デザインがスッキリしていてクセがなく、室内の広さも不満なし。それにボディサイズもちょうどいい。
撮影と試乗でしばらく新型ノートに触れて、乗っていると、緑がいっぱいの公園で、仲よく過ごすファミリーの姿が思い浮かんだ。
公園で休日を過ごす元気な子どもたちと優しそうな夫婦。午後3時頃「今日の晩ご飯はなに~?」「スパゲッティよ」「やった~!」という会話を交わしながら、新型ノートに乗って帰っていく家族の姿だ。
そんな幸せな家族を見て「ケッ!」とねたみ、ひがんでしまう人がいるだろうか。もしいたとしたら、完全にアウト。
新型ノートに文句をつける人がいるとしたら、それはそんな幸せいっぱいのファミリーも許せない人だろう。そんな人とは、友だちにはなれそうにない。
【画像ギャラリー】e-POWERは見事な発明だ! テリーさん、日産3代目ノートに試乗する(10枚)画像ギャラリー■町中華的な親しみやすさも加えてほしい
新型ノートは、普通に真面目に生きている、幸せな家族のためのクルマに見える。明らかに先代モデルよりよくなっているし、ただただ「いいクルマですね」と認めるしかない。
ひとつ不安があるとしたら、クルマの世界は「旬の変化」がとても早いということだ。現行フィットが登場した時、その柔らかなデザインを絶賛した私だが、ホンダeが出た途端に古く見えるようになってしまったし、一昨年の日本カー・オブ・ザ・イヤーでイヤーカーに輝き、大ヒットしたRAV4もすでに色褪せているように見える。
特に自動車業界激動期の今は、クルマの旬があっという間に変化する。新型ノートが現在の魅力をいつまで維持できるのかわからない。
e-POWERで電動化の波には乗れているかもしれないが、ひとつの世代のクルマを長く売るようになった今、その優位性が6年も7年も続くとは到底思えない。今は輝いていても「一寸先は闇」という恐怖がついて回るのだ。
少しでも長く高い商品性を維持するためには、ちょっとずつ変化させることが必要だ。
編集部によると、日産はノートをベースにした上級モデルを用意しているというが(編註:ノートオーラのこと。今年(2021年)8月頃発売との情報)、このノートでも充分に上級モデルの香りをさせている。これより高級なクルマは必要ないのではないだろうか。
それよりも「下町の匂い」がするノートが見てみたい。公園で遊ぶ、幸せいっぱいの家族を見て素直に「いいな」と思えないひねくれた人たちに合わせた仕様だ。イメージで言えば、世田谷の砧公園ではなく葛飾柴又。あるいは美男美女ではなくガッツ石松とあき竹城。
実は、新型ノートのカタログを見ていて、ちょっと鼻につく部分を感じたのも事実なのだ。どんな暮らしをしているのかよくわからない、CGのような美男美女のカットがところどころに散りばめられたレイアウト。
そこにリアリティはなく、ただただイメージだけが先行している。そういう戦略で「旬の変化」についていけるのかと心配してしまう。
だからといって、ガッツ石松とあき竹城を載せればいいというものでもないだろうが、気持ちとしてはそのくらいの大技を仕掛けてもいい。
新型ノートにある「幸せの匂い」はそのままに、少しだけ「町中華的な親しみやすさ」をまぶすのだ。派生車を作るとしたら、そちらの方向ではないだろうか。
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
【画像ギャラリー】e-POWERは見事な発明だ! テリーさん、日産3代目ノートに試乗する(10枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方