日産『新型ノート』がe-POWER専売になったことで、ノートのガソリン車を購入したい人にディーラーからおススメされるのは『マーチ』だという。
しかし、現在もマーチは売り上げが伸びておらず、SNSなどインターネット上の反応を見ても、「ノートの代わりをマーチが担うことは難しい」といった否定的な意見が多くを占めている。
マーチはなぜ売れないのか? 海外では『マイクラ』として売っていて、デザインがカッコいいと評判なのに、日本向けはいつまでも不評なデザインを引っ張るからなのか? それとも別の理由があるのか?
今回は、かつてはコンパクトカーカテゴリーで人気を博したものの、急激に失速することになった『マーチ』が抱える問題について考察していく。
文/渡辺陽一郎
写真/NISSAN
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■ノートのガソリン仕様の代役は「マーチ」? 日産の思惑とは違う厳しい実情
2020年11月に発表された日産『新型ノート』は、ハイブリッドのe-POWERのみを搭載して、ノーマルエンジン車の用意はない。理由を開発者に尋ねると、以下のように返答された。
「先代ノートでは75%前後をe-POWERが占めた。また新型は内装の質を向上させており、同じインパネを低価格のノーマルエンジン車には採用できない。2種類を造り分ける必要も生じるから、新型ノートはe-POWERに限定した」
先代ノートは確かにe-POWER比率が高かったが、25%前後はノーマルエンジン車が売れていた。その売れ筋グレードの価格は150~160万円であった。一方、e-POWERのみを搭載する新型ノートの価格は、販売構成比が84%に達する「X」で218万6800円だ。ノーマルエンジンを搭載する先代ノートに比べて約60万円高い。
しかも、運転支援機能のプロパイロットを含んだセットオプション(42万200円)、LEDヘッドランプを含んだセットオプション(9万9000円)を両方とも加えると、合計額は270万6000円に達する。
ここまで新型ノートの価格が高まると、購入予算を200万円以内に抑えたいユーザーは困るだろう。特に法人の場合、社内規定で購入する車両の価格などが決められている場合も多い。どのように対応しているのか販売店に尋ねた。
「日産のコンパクトカーには、ノートのほかに『マーチ』も選べる。以前のマーチはインテリジェントエマージェンシーブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)などが用意されず、購入しにくかったが、(2020年7月の)マイナーチェンジで安全装備を幅広く充実させた」
マーチ以外の車種はどうか?
「先代ノートから『デイズ』や『デイズルークス』に乗り替えるお客様も多い。軽自動車だが、天井の高いルークスの車内は、先代ノートよりも広い。安全装備は新型ノートと同様に先進的だ。価格はルークスの場合でも先代ノートと同程度だから、乗り替えにも適する」
マーチが安全装備を充実させたのは2020年7月だから、改良がユーザーから評価されたなら、翌月以降は前年に比べて売れ行きを増やす。しかし実際は、マーチの売れ行きは伸び悩む。2020年10月以降の国内販売は、コロナ禍の影響を脱して対前年比が増加に転じたが、マーチの1カ月当たりの登録台数は400~800台だ。前年に比べると110~120%で若干増えたが、コンパクトカーとしては少ない。
ちなみに2021年1月には、2020年末から納車を開始した新型ノートが約7500台、トヨタ『ヤリス』は『ヤリスクロス』の台数を除いても約9200台、ホンダ『フィット』も約5900台を登録した。マーチの売れ行きは、新型ノートやヤリスの10%前後だ。
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