日産が抱えるラインナップ問題! 日本を見捨てたマーチ、マーチを見捨てた日本人

■マーチはなぜ売れない!? すべてが後手に回った不振のワケ

 現行マーチが売れない一番の理由は商品力だ。発売直後から、外観や内装のデザインと質感、乗り心地、安定性、操舵感、エンジンノイズなどが不評だった。

 従って売れ行きも2010年の発売直後から伸び悩んだ。

現行4代目マーチは2010年7月に発売された。10年前の設計では古さを感じてしまう、趣向は違うが走りに特化したNISMOバーションであればまだまだ売れそうだが……
現行4代目マーチは2010年7月に発売された。10年前の設計では古さを感じてしまう、趣向は違うが走りに特化したNISMOバーションであればまだまだ売れそうだが……

 2011年は東日本大震災が発生したので、2012年の登録台数を見ると、1カ月平均で約3300台だ。当時のトヨタ『パッソ』、マツダ『デミオ』、スズキ『スイフト』、日産『キューブ』などを下まわった。2015年になると1カ月平均の登録台数は約1300台に下がり、2019年は約780台、2020年は約480台と低迷した。

 必要な改良を施さなかったことも、売れ行きを落とした要因だ。特に衝突被害軽減ブレーキは、2012年頃から軽自動車にも採用が開始され、2016年頃には、低価格車を含めて大半の売れ筋車種が装着していた。先代ノートも、2013年には単眼カメラを使った歩行者を検知可能な衝突被害軽減ブレーキを採用している。

 ところが、マーチは衝突被害軽減ブレーキを採用せず、前述のとおり2020年7月のマイナーチェンジでようやく装着した。これでは売れ行きが伸びなくて当然だ。つまりマーチの販売低迷は今に始まった話ではなく、発売直後からその傾向が見られた。加えて衝突被害軽減ブレーキの不備などを放置したことで、毎年売れ行きを下げていった。

 先代ノートは前述のとおり2013年に衝突被害軽減ブレーキを採用して、2014年には1カ月平均で約9000台を登録する人気車になった。2016年にe-POWERを加えると売れ行きをさらに伸ばし、2017年には1カ月平均で約1万1600台、2018年には約1万1400台、2019年には約9900台と好調に売れた。2018年には小型/普通車の登録台数ナンバーワンになっている。マーチとはケタが違う。

 先代ノートがここまで好調に売れたのはe-POWERの効果だが、商品力が低く安全装備の充実しないマーチの顧客を引き寄せた結果でもあった。いい換えれば先代ノートの好調には、マーチの販売不振もプラスの効果を与えていた。

 直列3気筒1.2Lノーマルエンジンを搭載する先代ノートとマーチを並べられたら、大半のユーザーは先代ノートを選んだだろう。同程度の装備を採用したグレード同士で比べると、価格は先代ノートが15万円ほど高かったが、内装の造り、乗り心地、安定性、後席の足元空間などで勝っていたからだ。

 この実力の違いを考えると、新型ノートでノーマルエンジン搭載車を選べないから、ユーザーがマーチを買うことは考えにくい。販売店が指摘したとおり、先代ノートから乗り替えるならデイズやルークスだろう。

 マーチは2020年7月に衝突被害軽減ブレーキを追加したが、デイズやルークスでは、2台先を走る車両も検知して早期にドライバーへ警報を発する。つまり安全装備は今でもデイズやルークスが優れているから、マーチは進化したものの、依然として魅力が乏しい。

現行マーチに採用されたインテリジェント エマージェンシーブレーキ。クルマだけでなく、人との衝突回避もアシストする
現行マーチに採用されたインテリジェント エマージェンシーブレーキ。クルマだけでなく、人との衝突回避もアシストする

 以上のように、もはやデザイン、車内の広さ、乗り心地といった限定的な話ではなく、さまざまな分野でマーチは新旧のノート、デイズ、ルークスに負けている。しかもマーチの粗い造りは、販売店の試乗車で街中を少し走った程度でも、スグにわかってしまう。いわば日常的な欠点だ。ユーザーが難色を示した時、セールスマンがデイズやルークスを推奨すれば、それを選ぶだろう。これらの軽自動車の販売は堅調だ。

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