■ハリウッドの一流映画人たちが手掛ける友情ドラマ
本作の企画は実は10年以上も前から始まっていた。
当初は『ヒート』(95)等のマイケル・マン(本作では製作総指揮でクレジットされている)で動いていて、その後はトム・クルーズの参加によって、『オブリビオン』(13)で手を組んだ彼のお気に入りでもあるジョゼフ・コジンスキーがメガホンを取り、ブラッド・ピットが共演するだろうという時期もあった。
最終的に監督となったジェームズ・マンゴールドは、ずっとこの企画の動向を探り続け、『LOGAN/ローガン』(17)の大成功と、予算を1憶ドル以下に収められるという条件でメガホンを取れることになったと言われている。
当初は群像ドラマ的な構成だったが、それをマンゴールドがふたりを軸にした友情ドラマに変えたのだ。今となれば、これ以外に考えられないし、デイモン&ベイルの組み合わせ以外もありえない。
ちなみに、マンゴールドの次回作は、あの『インディ・ジョーンズ』シリーズの第5作目。当初はスティーブン・スピルバーグの予定だったが、彼に代わってメガホンを取ることになった。スピルバーグとジョージ・ルーカスが認めた才能ということだ。
最後に、公開当時のプレスに掲載されていたデイモンとベイルの初めてのマイカーについてのコメントが面白かったので紹介したい。
「兄から買ったグレーの86年製ホンダアコードだ。調子がよくて、近所の人たちが乗っていた車よりいいものだった。大好きな車だったよ」(デイモン)
「僕は古いビュイック。まるで戦車のようだった。運転が出来なくなった年配の女性から買ったんだ。今乗っているのはトヨタのタコマ・ピックアップ。修理の必要はないし、メンテもいらない。僕にはぴったりだよ」(ベイル)
ふたりは日本車のファンでもあるよう。日本人としてはちょっと嬉しいかも。
●解説
59年、米国人として初めてル・マン24時間レースで優勝したキャロル・シェルビー。しかし、心臓を患ってレースを禁じられカーデザイナーとして活躍していた。そんな彼にフォード社のリー・アイアコッカーが、フェラーリをしのぐ車を作り、ル・マンで優勝して欲しいという途方もないオファーをしてくる。
そのためには最強で最高のレーサーが必要だ。シェルビーはケン・マイルズに声をかける。監督のジェームズ・マンゴールドは自信作のときは、大学時代の恩師の名前をエンドクレジットの最後のSpecialThanksに記しているが、本作では二人の名前がある。
ひとりはアレクサンダー・マッケンドリック(『成功の甘き香り』(57))、そしてもうひとりはミロス・フォアマン(『アマデウス』(84))。ふたりの名前が並ぶのは珍しく、恩師たちも拍手を送ってくれるに違いない自信作だったのだ。
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『フォードvsフェラーリ』
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(c) 2020 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
発売/ウォルト・ディズニー・ジャパン
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