毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ マークX(2004-2019)をご紹介します。
文/伊達軍曹、写真/TOYOTA
【画像ギャラリー】51年と15年 トヨタ マークIIとマークXの歴史を画像で振り返る
■マークIIからの刷新が図られ登場したマークX
「セダンである」「しかもFRレイアウトである」「それゆえスポーティである」というその根本的な価値観が、当初はそれなりにウケた。
しかし、いつしかそういった価値自体が世の中で希薄になったためモデル整理の憂き目にあった、前身から数えれば非常に長い歴史を持つセダン。
それが、トヨタ マークXです。
1960年代に、コロナとクラウンの間を埋めるための車種「コロナ マークII」としてスタートしたトヨタ マークIIは、代を重ねるうちにどんどんと高級車路線へとシフトしていきました。
マークIIの高級車路線と、それがもたらす人気は1988年登場の80系(6代目)でピークに達しましたが、1992年デビューの90系(7代目)ではバブル崩壊の影響で各部のコストダウンを実施。
そして続く100系(8代目/1996年~)と110系(9代目/2000年~)では、販売台数の低下傾向がよりいっそう顕著になってしまいました。
そのためトヨタは110系をもってマークIIを廃止し、よりスポーティなイメージの「トヨタ マークX」を新たに登場させました。
2004年に登場した初代マークXの車台は、12代目のトヨタ クラウン(通称ゼロ・クラウン)に採用された新世代FRシャシーをベースに軽量化したもので、そこに2.5Lまたは3LのV型6気筒エンジンを搭載。
トランスミッションは5速ATまたは6速ATです。110系マークIIでは居住性を重視したあまり背が高くなりすぎてしまった全高も見直され、前身より30~40mm低いスポーティなフォルムとなりました。
オーナーの平均年齢が約60歳という「おやじ御用達セダン」になってしまっていたマークIIから、マークXは「スポーツセダン」への回帰を図ることで、ユーザーの年齢層を40代半ばから50代半ばぐらいまで若返らそうと狙ったわけです。
そして人気俳優の佐藤浩市さんを起用したテレビCMなども話題となり、初代トヨタ マークXは当初、メーカーの販売目標に近い台数をキープすることができました。
ただし「ユーザーの若返り」については、どうやらあまりうまくいかなかった模様です。
そしてマークXは初代の登場から5年後の2009年、フルモデルチェンジを行います。
2代目のマークXはAピラーの付け根を80mm前に、Cピラーのそれは30mm後ろにすることで、フォルム全体としてのスポーティ感をよりいっそう強化。
エンジンは先代の3L V6を3.5Lに拡大して「2.5L V6または3.5L V6」という組み合わせに変更し、トランスミッションも6速ATに統一しました。
しかし全体としてのイメージは初代とさほど大きくは変わらなかったせいか、2代目マークXの人気と販売台数は低迷し続けました。
そのためトヨタは2019年12月にマークXの生産を終了し、「コロナ マークII」の時代から数えるなら51年の長い歴史に終止符を打ったのでした。
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