■クルマの出来ることのひとつの提案として
取材に対応してくれたのは、京都トヨペットの執行役員 辻直也さんだ。同社は、京都府内でトヨタ新車ディーラーを展開し、同じグループ会社である「ネッツトヨタ京華」と共に「トヨカラ」を展開するという。
辻氏によれば、今回の企画は、販売促進キャンペーンを検討する会議の中で、ふとしたきっかけで生まれたという。
「昨春の新型コロナウイルス感染症の感染拡大から、感染予防対策を行いながら、当初は販売を自粛しつつ、顧客のサポートとして重要なメンテナンス業務は続けてきました。そんな我々も手探りで営業を続ける中で、『今のクルマの価値って何だろう?』と改めて考えました」と辻さんは話す。
コロナ過の状況でも、あまりネガティブに捕らわれず、クルマのある生活を少しでも華やかに感じてもらえる取り組みを定期的に行っている販売促進キャンペーンを通じて行えないかと、社内でアイデアを出し合ったそうだ。
その第一弾として昨秋には、「電源」シリーズを投入。これは、クルマのシガーソケットやUSB給電ポートを活用することで、クルマで好きな場所に出向き、仕事や休憩をすることで、ステイホームの中で、安全に配慮しながら、気分転換をしてもらえるようにと考えられたもの。
この「電源」シリーズには、USBケーブルやシガー電源ソケット、ポータブル電源をプレゼントして、クルマと電源のある生活の魅力を訴求しようと試みたが、なかなか上手くいかなかったという。
ただクルマを使った気分転換というコンセプトは間違っていないと信じ、それをも少しポジティブに、楽しく感じてもらえる企画ができるはずと、会議で話し合っていくうちに、ある社員が「今、カラオケって行きづらいですよね」と話したことから、「それじゃあ、クルマでカラオケが気軽に楽しめるといいよね」となり、アイデアを詰めていった。それが「トヨカラ」だったという。
■既存客にも好評!意外とニーズは高い!?
辻さんによれば、「トヨカラ」は、モノよりもコトを重視しており、展開車種やパッケージは、わかりやすさを重視したそう。このため、割とフレキシブルなパッケージとなり、細かい仕様などは公表していないという。
もちろん、指定車種以外でも顧客からの要望があれば、トヨカラ対応も可能だ。あくまでクルマでカラオケが楽しめるという提案がメインなのだ。ただ雰囲気を盛り上げるためのアイテムとして、ミラーボールとカラオケ用マイクをプレゼントしている。
すでに既存客からも愛車でカラオケが楽しめないかという問い合わせも多いそうで、スタッフがその対応にもあたっている。「トヨカラ」の展開が新規だけでなく、既存客とのコミュニケーションの手段となっていることが、顧客とのコミュニケーションがとりにくい現状に、現場も嬉しいと感じているようだ。
利用時は、感染拡大防止と安全確保のため、個人や家族のみに限定し、車両も安全に駐車できる場所を確保して欲しいとするが、クルマのある生活を楽しみつつ、ユーザーの気分転換に繋がればと、「トヨカラ」の活躍に期待する。
今後も「トヨカラ」は継続していく予定だそうで、顧客の声などを反映させ、より発展させていければと話す。まだ取り組みも始まったばかりなので、まずは「トヨカラ」という提案が、「変わったことをしているディ―ラーがある」、「面白いな」と楽しんで貰い、それがクルマや当社に興味に繋がればと辻さんは話を締めくくった。
「トヨカラ」には、コロナ過だから、あれもこれもできないという考えではなく、クルマというプライベート空間を活用すれば、今の状況でも楽しめることもあるというの提案のひとつだ。コロナ過で生活は、我々の心に見えないが、大きな負荷を与え続けている。その解消のひとつとしても、周りを気にせずに済む車内カラオケは、かなり効果的ではないだろうか。
コロナ過でもポジティブなクルマの楽しみ方が提案されたことは、今の生活下でも前向きに進むためのヒントにもなりそうだ。
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