新型コロナウイルスの感染拡大が依然として続くなか、「換気の悪い密閉空間」をつくらないよう、換気にはみなさん注意されていることだと思います。
換気をするならば「窓を開ける」、これが真っ先に浮かぶところですが、クルマの場合は走行中だとか天候によって、ためらってしまうことも。
しかしクルマには「外気導入」という機能があり、昨今のクルマの多くは、「内気循環」にしなければ、基本的に常に外気導入をしています。
とはいえ、走行中にクルマの近くの空気を取り入れているとなると、なんとなく外気を取り入れないほうがいいのではと思ってしまうなど、どこから外気が取り入れられているのか気になるところ。
本記事では、この外気導入のしくみや、気になる車内の「密」について、ご紹介していきます。
文:吉川賢一 写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock
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■クルマは意外と密閉はされていない
クルマの中は密閉空間のように思われますが、意外と隙間があります。例えばドア。
ドア外板とインナーパネルの間には、ドアノブ、ドアスピーカー、側面衝突時の安全性向上のための補強材などが入っていますが、窓ガラスを格納するための空間もあります。
そして、その格納された窓ガラスに付いた雨水などを排水するため、水抜き用の穴が開けられているのです。ほかにも、ハーネス貫通穴など、小さな穴はいたるところに開いており、クルマの中は完全な密閉空間ではありません。
気密性が高くない、といわれると、「性能が低い」と感じる方もいるかと思いますが、クルマ程度の大きさだと、気密性を高めすぎると問題が生じます。
例えば、クルマに乗り込んで、ドアを勢いよく閉じると、車内の空気圧が急激に上昇します。この気圧変化によって、耳がキーンとなったり、最悪、鼓膜が破れてしまう可能性だってゼロではありません。
エアバッグが開く際も同様です。そもそも気密性が高すぎると、ドアが閉まりづらくなります。しかしもちろん、気密性が低いと、エアコンから出てくる空気が逃げ漏れてしまいますし、遮音性能も低くなるなど、クルマの快適性に影響してしまいます。
このように、車室内の気密性は高すぎても低すぎてもダメであり、車室内は適切に空気が逃げるように自動車メーカーによって設計されています。
■外気導入の空気ってどこから取り入れているの?
乗用車の場合、外気導入口は、一般的には、フロントガラスの付け根、ワイパー取り付け部付近の助手席側にあります。
クルマは走行中、ボディ表面をなぞるように空気が流れますので、この位置に外気導入口を設置することで、エンジンからの排熱の影響を受けにくく、フレッシュな外気を取り込めるのです。
助手席側にあるのは、外気を車室内まで最短経路で導くため。運転席側や中央付近には、ステアリンングコラムを支える構造物や、ナビやスイッチ類などの装置、エアコンの配管類があるので、スペースが空いている助手席側に配置していることがほとんどです。
外気導入口から流れてきたフレッシュな空気は、ブロアーファンによって車内へと送り込まれますが、一旦、エアコンフィルターを通過することで、空気中のホコリなどを取り除いています。
その後は、エアコン機能を使っていない場合だと、エバポレーター(熱交換によって、空気を冷却、除湿する冷房装置、網目状になっている)を素通りした空気が、車室内に設けられたエアー吐出口から出てきます。
エアコンを使っている場合だと、エバポレーターで冷却、除湿したあと、ヒーターコアで必要分だけ加熱し、適温にしてから、車室内へ流しています。
こうして取り入れられた空気はクルマの各所にある隙間から排出されていきます。また、前章で取り上げたようにドアを閉めるなど、車内の空気圧が上昇するときは、車両後部のバンパーサイドなどにあるドラフターを通して、車室内の空気を外部に排出しています。
ちなみに、冬場は車内が温まりにくい、夏場は冷えるのが遅い、という場合、内気循環スイッチを押して外気導入を止める方がおられますが、このときクルマに必要なのは、断熱性です。
エアコンで調節した空気が、再び温度変化してしまわないようにすることが必要なのです。断熱フィルムなどを利用することで手軽に上げることができますが、貼る位置や透過率が道路交通法で規定されています(※1)。自分で施工される場合は、必ずプロのアドバイスに従って作業されることをお薦めします。
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