■なぜヴェゼルはこれほどまでに人気となったのか? 日本にフィットしたその要因
こと日本では、とにかく売れる要素が満載だったと筆者も考えている。それはホンダが別の人気車種でも謳っているのと同じで、いろいろなことが「ちょうどよい」からだ。
まずサイズとデザインがちょうどよかった。大きすぎず小さすぎず、街中でも取り回しがよく、見た目も個性の演出を狙って過度に冒険をしていないところがよい。あまりSUV然としていないので、乗用車プラスアルファのつもりで、とっつきやすかったのだろう。
センターに柱を通したインテリアは個性的ながら、やりすぎていないところが巧い。
あるいは、いちはやくSUVにクーペ的な要素を取り入れたクルマでもあり、スタイリッシュに見えながらもクーペしすぎていないおかげで、年代を問わず幅広い層のユーザーに受け入れられたところもちょうどよかった。
しかもクーペライクなフォルムのわりには、そして室内も荷室もしっかり広さが確保されている。後席だって成人男性が座るにも十分ことたりるし、ラゲッジも404リットルとCセグに匹敵する広さがある。さらには、ホンダ得意のセンタータンクレイアウトにより、ラゲッジのフロアが低く、リアシートのアレンジ性が高いといった強みもある。
いろいろな要素の按配が絶妙にバランスしていて、よく競合車との比較企画に携わった際にも、本当によくできているなと感心したものだ。それでいて200万円台半ばがメインというリーズナブルな価格もちょうどよかった。
かくしてヴェゼルは、SUVトレンドに乗ってフィットなどのコンパクトハッチバックからの乗り替えたユーザーや、ミニバンからのダウンサイザーなど幅広い層を取り込むことができだ。
走りもちょうどよかった。実のところ筆者らのように評価する立場からすると、初期型で指摘され、その後に改善したもののそれでも硬めだった乗り心地や、すでにホンダでは廃止の方針を打ち出しているi-DCDのギクシャク感など、気になる点はかなりあったのだが、一般ユーザーにとって許せる範囲の問題であり、むしろその相反として得られる軽快でスポーティな走りがヴェゼルが受け入れられる要因のひとつになったように思う。加えて燃費もまずまずで、十分に期待に応えていた。
そして中身もクルマ自体も7年あまりで大きく進化し、クルマとしての実力を高めてきた。
出た当初と最新版では、先進運転支援装備もぜんぜん違えば、AWDシステムも大きく進化した。最新版の「リアルタイムAWD」を北海道の雪上で試した機会では、Bセグの手ごろな都会派SUVでありながら、これほどまでの走破性能が与えられたことに驚いたものだ。
そんなヴェゼルの人気を尻目に、時間の経過とともに、同カテゴリーに競合SUVの投入が相次いだが、新たな価値を加えるべく、Honda SENSING標準装備のタイプや、「RS」、「TOURING」といった走りを訴求するグレードなどを追加してきた。
■ついに新型が登場!新型ヴェゼルの期待と不安
まもなく登場する2代目も、初代の延長上で大きな進化をはたす。詳細なスペックは明らかにされていないが、持ち前のちょうどよい手ごろなサイズながらも十分に広くて便利に使えて走りもよく経済的という強みには、さらに磨きがかけられることに違いない。
パワートレインについては、フィットと同じくハイブリッドがi-DCDにかえてe:HEVとなりメインに位置付けられる。「Honda SENSING」もさらに機能が充実する。
さらに、電動テールゲートのようにライバルが先んじた装備でも追いつくのに加えて、車内WiFiや、デジタルキー、アプリセンター、などといった、時代のニーズにいちはやく応える装備で先に立つことにも注目だ。
そしてなによりデザインがよい。一見すると欧州プレミアムブランドのような雰囲気すらただよわせるほどスタイリッシュになった外見は、車格が上がったかのように感じさせるほど。
それは、実用性だけでなくプラスアルファの体験価値を提供することで、日々の生活の楽しさを増幅させることを目指したという、グランドコンセプトの「AMP UP YOUR LIFE」の表れといえそうだ。
これで価格がどれだけ上がるかが問題だが、前出の「TOURING」にも高額になることを避けるためAWDを設定しなかったぐらいなので、あくまでヴェゼルであることを念頭に、それほど高くならないものと思われる。
初代が世に出た当初は、BセグのSUV自体がまだそう多くはない状況だったところ、いまやそれが激戦区。国内外に有力な競合車が多く存在するようになり、初代のように続けてベストセラーとなるのは難しいかもしれず、とくに現在はトヨタの強敵たちが勢いをあましたまま迎え撃つ状況となっているが、かたやこれまでも人気カテゴリーを象徴する存在であったヴェゼルの新作がはたしてどんな戦いを演じるのか楽しみだ。
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