■EVや自動運転が「ブランドを代表」で本当にいいのか
もし仮に、R35GT-Rプロジェクトが中止になったとして、GT-Rが存在しないその後の日産を想像してみてほしい。
ブランドを代表するクルマはEVのリーフで、環境/ハイテク分野には強いけれどスポーティなキャラクターは弱体化。ブランドイメージはかなり寂しいものとなっていたに違いない。
たしかに、現在はクルマ業界100年に一度の激変期で、EV、AI、自動運転、ライドシェア、モビリティ・アズ・ア・サービスなど、新たに手掛けなくちゃいけない新技術/新事業がゴマンと控えている。そんな中で(相対的に見れば)GT-Rみたいな伝統的スポーツモデルの重要度は落ちているのかもしれない。
けれども、ここで伝説的ともいえるスポーツカーを途絶えさせてしまうのは、長期的に見たらぜったいマイナス。
存亡の危機に瀕していた日産リバイバルプラン時代ですら残したGT-Rを、3期連続で過去最高益(7050億円)を更新する経営環境下で放棄するのは理解できない。
日産の大きな欠点は「継続性の欠如」だ。どんなにいいクルマを造っても、あるいはどんなにいい開発・営業施策を講じても、それが長続きしないためライバルに逆転を許していまう。
ルノー傘下で生まれかわったはずの日産だが、20年近く経つとまたぞろ昔の悪い癖が顔をのぞかせているのだろうか?
■競合他社にはない「独自のストーリー」を大切に
ともあれ、いまの日産の技術トレンドの中で次期GT-Rを実現しようとすれば、電動化が大きなテーマとなるのは必然。テスラのように高性能・高価格のEVスポーツを目指すのか、あるいはフェラーリやポルシェのように高性能エンジン+電気モーターのハイブリッドを目指すのか、方向はどちらかに絞られる。
いずれにしても、電動化パワーの可能性をアピールするツールとしてGT-Rを位置付けたいところだ。
たとえば、昨年の東京モーターショーに出品されたコンセプトカー“IMx”あたりをベースに思考実験してみるというのはどうだろう。
IMxのメインテーマは未来の自動運転EVだが、ツインモーターで320kW、700Nmというパワープラントは侮れない。トルクだけでいえばGT-R NISMOの652Nmを超えている。
しかも、このスペックは非現実的なものではなくリーフのモーター×2で容易に達成可能。これに、北米向けの3L V6ツインターボ(401ps/48.4kgm)を組み合わせれば、世界中どこへ出しても恥ずかしくないハイブリッドスーパーカーができあがる。
最近よく「ブランドには物語が必要」と言われるが、日産が力を注いでいるEVについても、競合他社と差別化するなら独自のストーリーが欲しいはず。GT-Rこそ、その物語を紡ぐ最大の武器になると思うのだけど、いかがでしょう。
コメント
コメントの使い方