■絶対的コストに優れた純内燃機関グレードを設けるべき !?
ちなみに最近のキックスの登録台数を見ると、1か月当たり3500~4000台だ。選択肢が少ない割に好調だが、ノートの月販目標は8000台だからさらに多い。要は国内の主力は、あくまでもノートだ。
そのために現行ノートは、プラットフォームをルノー・ルーテシアや海外で売られる2代目ジュークと共通化しながら、国内専用車として内外装を日本のユーザーに最適なセンスで造り込んだ。パワーユニットはe-POWERのみだが、駆動方式は、前述の通り2WDと4WDをそろえる。
力の入ったノートに比べると、キックスは脇役的な存在だから、日本で製造せずにタイから輸入して、SUVなのに4WDを用意しなかった。国内の販売戦略に基づく判断だ。
この意図は理解できるが、ユーザーの反応はどうか。日産の販売店に尋ねると、以下の返答であった。
「キックスが(2020年6月に)発売された当初は、お客様からなぜ4WDを選べないのか、という質問を受けた。キックスはボディがコンパクトなのに荷室は広く、スキーにも使いやすい。そこで4WDを希望するお客様も少なくなかった。最近は2WDのみの設定になることが認知され、4WDの質問は受けないが、追加してくれると有り難い。多くのお客様に乗っていただくには、4WDが必要になるからだ。以前のジュークも1.5Lエンジンには4WDが用意されず(4WDは1.6Lターボのみ)、追加して欲しいと感じた」
日産の業績がよければ、さまざまな分野に十分なコストを費やせる。しかし業績の回復を目指している段階では、選択と集中が求められ、生産拠点やメカニズムのバリエーションが限定的になる。
日産の狙いとしては、まずはノートに4WDを加え、今後は上級仕様の『ノート・オーラ』も設定して売れ行きを伸ばす。その上で、ほかの車種についても、商品力を充実させていく。
e-POWERは優れたパワーユニットだが、コンパクトな車種に搭載するには価格が高い。キックスXは前述のとおり275万9900円だ。ノートもX(218万6800円)に、運転支援機能のプロパイロットとLEDヘッドランプをオプションで加えると、合計価格が最低でも270万6000円に達する。複数の装備を併せて装着するセットオプションが多いから、価格も高まってしまう。
特にプロパイロットは人気の装備で、キックスでは全車が標準装着するのに、ノートのオプション装着比率は41%と低い。セットオプション価格が高く、装着しにくいためだ。
今後はキックス、ノートともに、ノーマルエンジンの追加、駆動方式の充実、人気の装備を厳選して価格を割安に抑えた特別仕様車の設定などが求められる。ユーザーや販売店の声を汲み取って、商品開発に反映させて欲しい。
そうなれば日産の国内販売順位が5位(2020年の国内販売ランキングはトヨタ/スズキ/ホンダ/ダイハツ/日産の順番)に甘んじることはないはずだ。今後の発展に期待したい。
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