「なぜ」かを知れば改善できる! やっちゃいけない内掛けハンドルのホントのところ

「なぜ」かを知れば改善できる! やっちゃいけない内掛けハンドルのホントのところ

 ハンドル操作の中でも、やっちゃいけないと言われるのが「内掛けハンドル」だ。しかし、街中の交差点などで見ていると、内掛けハンドルをしている人を結構な確率で目撃する。

 内掛けハンドルをする人からすると、力を入れやすいからという理由のようだが、いけない理由がわからない……という人も多いと思う。

 今回は、レーシングドライバーであり、安全運転について啓蒙活動行っている松田秀士氏が、「なぜ内掛けハンドルはダメなのか」「どういった点が危ないのか?」などを人間工学的な分析も交えつつ解説していく。

文/松田秀士
写真/Adobe Stock(west_photo@Adobe Stock)、編集部

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■「内掛けハンドル」する人はなぜ多い?

「内掛けハンドル」は危険なので使わないようにと、誰しもが自動車教習所で教わった記憶があると思う(Marko@Adobe Stock)
「内掛けハンドル」は危険なので使わないようにと、誰しもが自動車教習所で教わった記憶があると思う(Marko@Adobe Stock)

 いまだに内掛けハンドルをする人は多いようですね。いまだに、と言ったのには理由があります。

 その昔、クルマのハンドルは重ステ(ステアリング)でした。現在のハンドルにはパワーステアリングが装備されているので理解できない人も多いかと思いますが、昔のクルマは車庫入れする時は汗だくになることもありました。

現在のハンドルにはパワーステアリングが装備されているので女性でも楽々操作できる(metamorworks@Adobe Stock)
現在のハンドルにはパワーステアリングが装備されているので女性でも楽々操作できる(metamorworks@Adobe Stock)

 しかも、その頃ATはそれほど普及しておらず、MTのギアチェンジをしながらステアリングを操作しなくてはならなかったのです。そのため、引きハンドルが多用されていました。その頃の癖が残っている、と片付けてしまえばそれまでですが。実はこんな理由が考えられます。

 日本と欧米で「のこぎり」と「かんな」の使い方が逆なのをご存知でしょうか?

 日本は引いて切れる(削れる)のに対して欧米のそれは押して切るのです。つまり歯が逆。湿度の低い欧米の樹は育成するのが遅く、木の身が締まっていることもあり堅いため体重が乗せられるよう押して切るように設計され進化してきた、という説があります。

 押す場合、腕の筋肉の中で裏側の三頭筋を中心に使います。逆に引くのはポパイが力こぶを出す内側の二頭筋です。

押しハンドルでは二の腕の裏側の筋肉の上腕三頭筋、引き(内掛け)ハンドルでは内側の上腕二頭筋を使う(Paylessimages@Adobe Stock)
押しハンドルでは二の腕の裏側の筋肉の上腕三頭筋、引き(内掛け)ハンドルでは内側の上腕二頭筋を使う(Paylessimages@Adobe Stock)

 余談ですが、この表裏の筋肉はどちらかいっぽうに力を入れると反対側の筋肉は自動的に弛緩して、力んでいるほうの筋肉の邪魔をしません。この習性を利用してジャックナイフストレッチというハムストリングス(太ももの裏側)を緩めるエクササイズがあります。

 で、高湿な気候で育つ日本の樹は柔らかいので、繊細な加工に適した引く歯のほうが適した、という説もあります。

 何が言いたいのかというと、日本人は力を入れる作業を行う場合、押すよりも引くほうが力を入れやすい民族である、ということです。重ステの時代はまさにそれだったと考えます。

 もうひとつの例を挙げるとトラックやバス。これらのステアリングは大きく寝ていますね。昔はパワステがなかったので引いて押すの両方の作業がしやすかったこと。また運転席が前輪の真上または前方にあるため、機構的にステアリングシャフトが立っていた、などのの理由でハンドルが寝ていたのです。最近はこれらの車両のハンドルもパワステの採用によって小さくなってきています。

 さて、乗用車のハンドルは現在押すように設計されています。またハンドル径も小さくなってきています。小さいハンドル径のほうが少しの操作で大きく前輪が動くのでスポーティーです。とはいえその分クルマの動きはシビアになります。

 最近のクルマは性能が上がりスタビリティ(安定性)が高くなっているのです。つまりタイヤがよくグリップするようになった。その結果、ハンドルも重くなりパワーステアリングがあたりまえに装備されるようになったのです。

 前置きが長くなりました。とりあえず日本人は引く方が操作しやすい民族だ、引く方が繊細な動きに適している。ということが考えられると思います。

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