世界初の5バルブエンジンを積んだミニカ
日本車のエンジンは昭和末期あたりからDOHC化とともに最低1気筒あたり1ずつで済む吸気と排気を行うバルブのマルチ化も進んだ。
マルチバルブ化は吸気、排気ともに2つとなる4バルブがほとんどだったのだが、「さらにパワーを出すためには吸気を増やしたい、吸気バルブを小型化して高回転まで回したい」というコンセプトで、吸気バルブ3つ、排気バルブ2つという形で世界初の5バルブを実用化したのが1989年登場の三菱ミニカの搭載されたNAとターボのDOHCエンジンである。
5バルブは日本車では1991年登場の100系と1995年登場の110系カローラ&スプリンターなどにスポーツエンジンとして搭載された1.6リッターの4A-GE型も採用し、確かに高回転化による出力向上には貢献した。
しかし、市販車ではバルブが増えることによるコスト高やコスト高ほどのメリットが薄かったのは否めず、「4バルブのまま性能を追求する方が得策」という結論になり、採用例は増えないまま消えてしまった。
ホンダのFFミドシップレイアウト
FF車はキャビンを広くするため現在もエンジン横置きがほとんどで、エンジン縦置きのFF車はスバル車とA4以上のアウディくらいと少数派だ。
しかし、ホンダが1989年登場の初代インスパイアと3代目ビガーで当時上級小型車と呼ばれていたFRのマークII三兄弟やローレルのマーケットに直列5気筒エンジン搭載のFF車で参入するにあたり、開発されたのが世界初となるエンジン縦置きのFFミドシップレイアウトである。
FFミドシップレイアウトはエンジン縦置きによる振動低減による高級感の向上や重量配分の適正化による軽快なハンドリングの実現などをメリットとしていた。
しかし、FFミドシップレイアウトは縦置きエンジンの後方に置かれるトランスミッションとデファレンシャルを独立させ、ドライブシャフトをオイルパン(エンジンオイルが入っているところ)を貫通させるという複雑な構造だった。
さらに重量配分の適正化と言いながらフロントが軽くなったせいかクルマにとって重要なトラクションの不足やエンジン縦置きによりトランスミッションがキャビンに食い込んでいるためエンジン横置きのFF車のような広さもなかった。
結局メリットは前輪の位置を前に出せることによりFF車でFR車のようなフロントオーバーハングの短いスタイルにできた点(「このためのレイアウトでは?」という説も強い)と、FF車にしてはタイヤの切れ角が大きいので小回りが効くくらいだった。
FFミドシップレイアウトはスタイルとインテリアの雰囲気のよさを大きな理由にまずまずの成功を収めた初代インスパイア&3代目ビガーのあと、1990年登場の2代目レジェンドと1996年登場の3代目レジェンドといったホンダの上級セダンに採用されただけで、特に功績は残せないまま姿を消した。
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