消えていった哀しき世界初 日本初の装備はなぜ続かなかったのか?

世界最小排気量のV6エンジン

1991年6月にデビューしたユーノスプレッソには世界初の世界最小1.8L、V6エンジンが搭載された。K8-ZE型エンジンは140㎰/16.0kgmを発生
1991年6月にデビューしたユーノスプレッソには世界初の世界最小1.8L、V6エンジンが搭載された。K8-ZE型エンジンは140㎰/16.0kgmを発生
三菱は4代目ミラージュと4代目ランサーに1.6LのV6エンジンを搭載。最高出力は140㎰/15.0kgm。燃費やコストパフォーマンスを度外視した小排気量V6エンジンだ
三菱は4代目ミラージュと4代目ランサーに1.6LのV6エンジンを搭載。最高出力は140㎰/15.0kgm。燃費やコストパフォーマンスを度外視した小排気量V6エンジンだ

 2000年代初めまでは「高回転化によるパワーとスムースさの向上のため、気筒数を増やしたい」というコンセプトやニーズにより、今ではまったく見なくなった2リッターの6気筒エンジンも少なくなくなかった。

 バブル期にはこのコンセプトがさらに加速しており、1991年にマツダはユーノスプレッソに1.8リッター(こちらのほうが先)、三菱はそれぞれ4代目となるミラージュとランサーに1.6リッターという世界初となる2リッター以下のV6エンジンを搭載した。どちらも小排気量ながら6気筒エンジンらしい高級感ある回転フィールや、カタログ上のスペックはそれなりのものを備えていたのは事実だった。

 しかし、どちらも1気筒あたりの排気量が小さいため低中回転域の力強さに乏しかった点や、V6エンジンだったため重量増(この点も動力性能や燃費をスポイル)やカムシャフトなどが左右バンクで2ペア必要となるなど直4エンジンに比べると、非常にコストが高いことなど、同じ排気量の直4エンジンに対するメリットがほとんどなく、大きな発展なく姿を消した。

世界初のエクストロイドCVT

1999年11月に発売された日産セドリック、グロリアに搭載されたエクストロイドCVT。期待は大きかったが、300LX-Z Sパッケージ(セドリック)の477万円とATモデルよりも50万円高
1999年11月に発売された日産セドリック、グロリアに搭載されたエクストロイドCVT。期待は大きかったが、300LX-Z Sパッケージ(セドリック)の477万円とATモデルよりも50万円高

 エクストロイドCVTは、日産とジャトコが手を組み、大排気量のFR車にもマッチするCVTとして開発され、1999年11月、セドリック/グロリアに世界で初めて採用された。

 エクストロイドCVTは、従来のベルト式CVTと違って、ディスクとパワーローラーにより、動力を伝達するCVT。

 280馬力にも対応し、素早いレスポンスと滑らかな変速と、燃費の向上(旧来のATに対し10%)というのが持ち味だったが、高コストで、部分修理ができず、FR車の減少もあり、2005年で生産中止となった。

エクストロイドCVTの基本メカニズム。変速機の中心はディスク(入力&出力ディスク)とパワーローラーから構成される。エンジンの動力を受けた入力ディスクの回転は、パワーローラーから出力ディスクへと伝えられる。パワーローラーの傾きを連続的に変えることで、滑らかな無断変速を行う
エクストロイドCVTの基本メカニズム。変速機の中心はディスク(入力&出力ディスク)とパワーローラーから構成される。エンジンの動力を受けた入力ディスクの回転は、パワーローラーから出力ディスクへと伝えられる。パワーローラーの傾きを連続的に変えることで、滑らかな無断変速を行う

F1にも採用されたアクティブサスペンション

ハイドロニューマチックアクティブサス+4WD+ABSで登場。1989年に300台限定で販売された。ベースに対して約120万円高の320万円とGT-FOURより高額だった
ハイドロニューマチックアクティブサス+4WD+ABSで登場。1989年に300台限定で販売された。ベースに対して約120万円高の320万円とGT-FOURより高額だった

 最後はかろうじて生き残っているアクティブサスペンションを紹介したい。

 サスペンションが付いているクルマは当然前後左右上下の動きが起きるのだが、「その動きを抑え常に一定の姿勢で走行できるのが理想」というコンセプトで開発されたのが、油圧などを利用したアクティブサスペンションである。

 アクティブサスは1980年代のロータスのF1が採用し、市販車において世界ではじめて実用化したのは1989年登場の5代目セリカに300台限定で設定されたアクティブスポーツで、5代目セリカに僅かに遅れて登場したインフィニティQ45と1991年登場の3代目ソアラという採用例もあった。

 アクティブサスは前後左右上下の動きを抑えることによるスタビリティ(安定性)や安心感の劇的な向上というメリットは確かにあった。

 だが、その反面前後左右上下の動きがないことによるフィーリングの不自然さやもっとも安かったインフィニティQ45で70万円という価格(3代目ソアラでは約200万円!)、重量増やアクティブサスに使う油圧をエンジンで発生させることによる動力性能と燃費の悪化といったデメリットのほうが大きく、短命に終わった。

 しかし、世界ではまだかろうじてアクティブサスペンションは生き残っている。油圧システムの欠点を克服して21世紀に復活したアクティブサスが、2013年にメルセデスベンツSクラス(W222)に装備された“マジックボディコントロール”だ。

 このシステムは、金属バネ、小容量のハイドロニューマチック、そして可変ダンパーの組み合わせで構成されているが、カメラで路面を監視してその情報を制御パラメータに入れているのが新しいアイディアだ。

 カメラからの情報を元にサスペンションが事前にスタンバイするからより、小容量のアクチュエータでも理想的なボディコントロールが可能だし、ポンプが消費する馬力も少ない。さらに、フル油圧に比べればハイドロニューマチックは枯れた技術だから、コストや信頼性もベンツなら許容範囲に収められる。

 Sクラスのユーサーにしてみれば、オプション価格54万6000円というのは格安といっていいレベル。

 100万円以上するAMGカーボンパッケージやセラミックブレーキより、よっぽど日常の快適性を向上させてくれる有意義なオプションだと思う。ベンツが先鞭をつけたカメラを使った路面センシングは、サスペンション制御全般に有望な技術といえる。

シトロエンのラグジュアリーSUV、DS7クロスバック
シトロエンのラグジュアリーSUV、DS7クロスバック
車速15~130km/hの時、ハイスピードカメラが5~25mの範囲で路面の凸凹をスキャンして分析。DSサスペンションが適切に調整し、常にフラットで快適な乗り心地と卓越した静粛性、さらに走行安定性を保ち続ける
車速15~130km/hの時、ハイスピードカメラが5~25mの範囲で路面の凸凹をスキャンして分析。DSサスペンションが適切に調整し、常にフラットで快適な乗り心地と卓越した静粛性、さらに走行安定性を保ち続ける

 また、ハイドロの元祖シトロエンは、新しいDS7クロスバックでカメラセンサーと可変ダンパーを組み合わせた“アクティブスキャンサスペンション”というシステムを導入。

 これまでは、タイヤが突起を踏んでからGセンサーでそれを感知してダンパーを制御するというロジックだったが、突起が事前にわかっていれば圧倒的に有利。

 制御レスポンスがよく減衰力変化の幅が広いKYB(カヤバ)製リニア可変ダンパーとあいまって、顕著な乗り心地向上効果をあげている。

 このリニア可変ダンパーの利用はより低価格なセグメントにも広がっていて、国産ではカローラスポーツなどにもオプションで設定。厳密にいえばアクティブサスではないが、それに近い効果を期待できるコストパフォーマンスのいい可変サスペンションシステムといえる。

【画像ギャラリー】世界初の栄光はどこへ!? 今はすっかり下火となったハイテク装備をつけたクルマたち

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