80点主義は過去のもの!? なぜトヨタ車は急激に良くなったのか


 トヨタのクルマ作りを示す言葉に「80点主義」がある。

 本来はユーザーにとってひとつでも劣っている点があってはならない、つまり欠点がないクルマ作りといった意味だったが、ともすればトヨタのクルマ作りは「平凡」、「つまらない」といったイメージでも語られてきた。

 しかし、ここ数年でそんなトヨタのクルマは(とりわけ2015年の現行型プリウス発売以降)急激に変わり、そんなイメージも大きく変化しつつある。なぜ、トヨタ車は急激に良くなったのか?

文/国沢光宏 写真/TOYOTA、池之平昌信

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保守的な姿勢から攻めの姿勢に!? 変貌を遂げたトヨタのクルマ作り

 ひと昔前まで――というか豊田章男社長が就任するまでトヨタのクルマ作りと言えば「金太郎飴」とか「80点主義」。はたまた石橋を叩い渡るじゃなく「石橋を叩きすぎて壊す」といった方向性だった。

 実際、個性的なクルマは少なく、たまに出たとしても思い切りが足らず、セラやWiLLのように販売面で成功していると言えなかった。

東京オートサロン2020にて世界初公開されたGRヤリス。こうした尖ったクルマが世に出るようになったこともトヨタのクルマ作りのおける大きな変化のひとつといえるだろう

 しかし、今やトヨタと言えば世界有数のイケイケ流メーカーになったと思う。象徴のような存在がGRヤリス。

 カーボンフリー&厳しくなるいっぽうのCAFÉ(企業別平均燃費基準)規制により、世界的に面白いクルマを作れなくなってきた状況のなか、ブランニューの高性能エンジンと専用シャシーを開発したのだから驚く。日本だとイメージできないが、世界中で評価される。

 はたまた2021年発効の新しいル・マンカテゴリーに合致するハイパーカーも作り販売するという。こういった動きを受け、欧州のメディアすら「アキオ・トヨタは現代のエンツォ・フェラーリ」と評すまでになった。一昔前のトヨタだと想像もできないこと。

 なんでこれほどの変化を遂げたのだろう? 私の経験から考察してみたいと思う。

収益一辺倒はクルマの本質ではない

購入後WRCドイツに登場するなどラリー仕様に仕立てた国沢氏のMIRAI(左)と、そのベースであり、量産世界初のFCVとなった初代MIRAI(右)

 2014年のこと。先代MIRAIのスペックを見て「これはラリーに使えますね」と考え、ロールケージ組んだ競技車両にしようと動いた。もちろんトヨタには何も伝えていない。

 実際、納車されたばかりのMIRAIが、その日のうちに窓ガラスまで外され、すべてのワイヤーハーネスも取り外された写真を見てMIRAIの開発部門は腰を抜かしたそうな。

 なんたって20年近くの開発期間と巨額の開発費用を投じて作られたクルマである。ヘタに手を加えられ、トラブルでも起こしたら大きなダメージを受けることになる。かといって販売したクルマだから止めろとも言えない。ハラハラして見ていたとか。

 そんななか、私はトヨタに「WRC(世界ラリー選手権)ドイツで走らせたいのだけれど、水素で困っています」と依頼。

 トヨタも困ったと思う。そんなタイミングで豊田章男さんと短い会話をすることになった。トヨタ関係者の前で私に「MIRAI頑張ってください」。これでドイツでの水素充填準備にスイッチ入りましたね! 皆さん迷っていたのだろう。されど社長が「頑張ってね」と言えば、少なくとも「やめろ」ということにならない。

「やってもいいかな? 会社から怒られないかな?」と迷っている人からすれば、公認をもらったようなもの。結果、ドイツで移動式の水素充填車を手配してもらえることになった。

 WRC関係者も「新しい時代だ!」と高く評価してくれ、先頭車スタートという日本人初の栄誉を体験させて頂いた次第。WRC好きとしちゃ思い残すコトなし!

 この1件だけでも今のトヨタの面白さに繋がっているとわかる。他の自動車メーカーのトップを見ると、収益しか考えていない。クルマの楽しさや本質を理解していないんだと思う。

 クルマの王道って競技であり、まったく新しい技術へのトライだと思う。それを豊田章男社長はわかっている。そして決め打ちもしないから周囲は考えざるを得ない。

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