■N-BOXの牙城を崩すか!? 2020年にはヤリスがいる!
もちろん僅差でのヤリストップなので、この時点で2020事業年度締めでもヤリスがトップになるとは、まだまだいえない状況にある。
軽自動車は年度末決算セール後半、つまり3月でも下旬近くなるにつれ、未使用状態の在庫車をディーラー名義などで“自社届け出”して販売台数の上積みをしかけてくる。(後に自社届け出車両は届け出済み未使用軽中古車として、中古車市場で流通)
しかし今期はコロナ禍でしかも、世界的半導体不足問題もあり、例年通りに在庫が豊富で自社届け出やり放題という状況にはない可能性もあるので、N-BOXの追い上げが厳しいかもしれないとの見方がある。
そして、もうひとつが納期遅延を抱えるヤリス側の事情である。つい最近まで、トヨタのウエブサイト上での“工場出荷目処”が、通常のヤリスならば1~2カ月となっていたのだが、本稿執筆中に調べると“詳しくは販売店でお問合せください”となっていた。
このような表示が出ていると、納期が乱れていることが多いので、納期遅延となっている様子。さらにヤリス クロスにいたっては販売現場で聞くと、「すでにいま受注をいただいても、納車は10月ごろになりそうです」とのこと。
つまり、納期に乱れが出ているので、ヤリスも自社登録や、レンタカーなどフリート販売の積極化などで販売台数を上積みするにしても、かなり限定的とならざるをえないことになるかもしれない。
もちろん、とくにヤリス クロスでは、大量のバックオーダーを抱えているので、増産をかければ販売台数の上積みは可能とはなるのだが、やはり世界的な半導体不足の問題が脳裏をよぎる。
それでも両車ともに販売トップの座を獲りたいだろうから、多少無理をして僅差でどちらかがトップとなるというパターンになりそうだ。とにかく、常勝N-BOXを脅かす存在が登録車のヤリスというのは、かなり意外な状態になっているといえるだろう。
■毎年恒例スズキとダイハツの軽自動車トップ争い
そして、毎回恒例となるスズキとダイハツでの、軽自動車販売ブランドトップ争い。
これも、2020年4月から2021年2月までの累計販売台数を集計すると、ダイハツが48万2183台、スズキが46万9044台となった。その差が約1.3万台となっているので、これをスズキが3月だけでひっくり返すのはかなり厳しいので、ダイハツがこのままトップとなりそうである。
しかし、ダイハツトップを支えているのは貨物車ともいえる状況にある。
軽四輪乗用車だけの累計販売台数をみると、ダイハツが35万3553台なのに対し、スズキが36万3607台となり、スズキがトップとなっているのである。その差は1万54台となっているので、軽四輪乗用車ではダイハツがスズキをひっくり返すのは厳しいと言えるだろう。
軽四輪貨物は軽乗用車より価格も安いので、とくに軽トラックは販売台数上積みのため、自社届け出がよく行われている。
定点観測している未使用中古車を多く扱う中古車展示場では、貨物車を問わずダイハツの届け出済み未使用軽中古車が目立つので(スズキが少ないというわけではない)、トップ死守でなりふり構わないといった様子が見える。
軽自動車はブランドを問わず、以前とは比べものにならないほど無理な販売が目立っている。その“無理”とは値引き額の拡大。利幅の少ない軽自動車で20万円前後の値引きも珍しくない状況では、“赤字にならない程度”の極端な薄利多売がブランドを問わず行われているのが現状。
スズキとダイハツは、とくに軽自動車では“業販(正規新車ディーラーと新車の販売協力関係となっているモータースや中古車店などを通しての販売)”比率の高さは有名な話。しかも、同じ業販店でスズキもダイハツも扱っているケースもある。
そこで両メーカーでは、そのような業販店を通してお互い情報収集を行い、ライバルに販売台数で負けないように自社届け出の規模を毎月調整しているとされている。
そして、いままではスズキの鈴木 修会長には世話になっているとして、スズキの軽自動車の業販を積極化する業販店が目立つといった話も聞いたことがある。
その鈴木修 会長は先ほど引退を表明している。鈴木 会長が退いたあとのスズキとダイハツのバトルに異変が起きるか起きないかも、今後は注目していきたいトピックである。
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