オラオラ顔が流行する理由として考えられる背景は?
要因はふたつある。第一に、ヤンキー需要の相対的な増大がある。
日本でクルマ離れが言われて久しい。もはやクルマを最初の車検ごとに買い替えるような風習はまったく見られなくなくなった。多くのユーザーが、1台のクルマを大事に長く乗るようになり、「もっといいクルマに乗りたい」という上昇志向もなくなった。
が、ヤンキーは違う。もっと目立つ、もっといいクルマに乗りたいと思っている。彼らは相対的にクルマ消費に積極的である。
彼らの思いにズバリ応えたのが、アルファード/ヴェエルファイアだ。正確には、先代ヴェルファイアと現行アルファードである。
現行アルファードが登場した時、ハイエース等に乗る職人さんからの視線が猛烈に熱かった。それはもう、食いつかんばかりだった。クルマ好きからはデザインを全否定されたが、結果的にアルファードは大ヒット。ヤンキー系御用達どころか、セレブまでこぞって乗るようになり、大増殖した。
アルファードがそこらじゅうに走っていれば、どんなオラオラ顔も控え目に見える。すでにオラオラ顔は全ミニバン及び全軽ハイトワゴンに波及しており、慣れは全国民に広まっている。
あおり運転問題もオラオラ顔の追い風になった。優しそうなクルマに乗っていると、何をされるかわからない。主婦層までもが――というより、主婦層があえて「なるべく強そうな顔つきのクルマに乗りたい」と思うようになった。恐るべき大転換である。
世界的にも押し出しの強いデザインが潮流に
もうひとつの要因は、自動車デザインのグローバル化である。
欧米では、デザインで目立つことは決して悪ではない。特に北米は、大地がケタはずれに広いこともあって、昔からピックアップトラックを中心にオラオラ顔がスタンダードだった。
欧州には、「周囲を威嚇するデザインは好ましくない」という良識があったが、アウディのシングルフレームグリルのヒットでその流れが徐々に変化。こちらも周囲を適度に威嚇するのがアタリマエになった。
海外で売れるクルマを作るためには、日本車もデザインを攻撃的かつ個性的にする必要がある。
バブル崩壊以来、国内需要は年500万台前後で横ばいから低落傾向を示す一方、海外需要は増大したため、日本車もグローバルモデルが多数を占めるようになり、攻撃的なデザインが主流になったのである。
最近私は、中古のルノー トゥインゴを買ったのだが、買って早々、首都高で良識的な車間距離で走っていたところ、パッソ(たぶん営業車)に延々とアオられてビックリした。
トゥインゴは、欧州現行モデルの中では、指折りに優しくてかわいらしいデザインだが、欧州での販売は思わしくなく、2020年のフランス国内での販売ランキングは8位にとどまっている。1位はルノークリオ(ルーテシア)、2位はプジョー208。今どきオラオラとも言えないが、ごく普通に攻撃的な顔つきだ。
少なくとも今、優しくて親しみやすい自動車デザインは、全世界的にウケないようだ。
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