■フェラーリ初のe-4WD『SF90ストラダーレ』
一方で、スーパーカーカテゴリーにおいては単独でのCO2大幅低減という難題に向かういっぽうで、パフォーマンスの後退は許されないという相反要素を解決する術として、パワートレーンのPHEV化を採るメーカーが現れ始めた。その口火を切ったモデルがフェラーリの『SF90ストラダーレ』だ。
リアミッドに搭載されるエンジンは4L V8ツインターボ。そして駆動用モーターはこのエンジンとの8速DCTとの間に1つ、前軸の左右輪に各々1つの合計で3つとなる。システムの総合出力は1000ps。最高速は340km/h、0〜100km/h加速は2.5秒と『F8トリブート』を上回るパワフルさを誇るいっぽうで、搭載される7.9kWhバッテリーの満充電時からは最長25kmのEV走行が可能だ。前二輪はこのEV走行時の駆動輪となるほか、運転状況に合わせて協調制御され、旋回や制動、回生などの役割を担う、フェラーリ初のe-4WDとなっている。
ミッドシップ3モーターハイブリッドと聞けば、多くの方が思い出すのはホンダ『NSX』だろう。HEVとPHEVの違いはあれど、モーターを駆使した4WD化で運動性能の飛躍化とエネルギー回収の高効率化を両立させるというホンダが先駆けたコンセプトは、電動化がいよいよスーパースポーツの世界にも波及する中、大いに注目されていることは間違いない。
■レース屋マクラーレンが軽量化にこだわったPHEV『アルトゥーラ』
そしてこの2月にマクラーレンが発表した『アルトゥーラ』は、まったく新しいアーキテクチャーを採用したPHEVだ。
マクラーレンは『P1』『スピードテール』といった億超えのアルティメイトモデルでハイブリッドパワートレーンの経験を積んできたが、アルトゥーラは彼らのモデルレンジのど真ん中にあった570S系の後継、つまり数を売る前提のモデルとなる。日本の価格は未定だが、本国価格を換算すると約2700万円〜と、スーパーカーセグメントの中央値といっても過言ではない。
アルトゥーラはPHEVの質量増加に伴う運動性能の低下に、車両全体のライトウェイトデザインとエンジンの小型化という、いかにもレース屋出自らしい正面突破で対処している。
新設計のエンジンは従来のV8ツインターボから50kgの軽量化を果たした3LのV6ツインターボで585psを発揮。これとコンパクトな駆動用モーターとの組み合わせによるシステム出力は680psとなり、上位モデルの『720S』に迫るアウトプットを達成した。一方でシート後方には7.4kWhのバッテリーを搭載、走行時充電も可能としたそれにより、最長で約30kmのEV走行が賄えるという。
このバッテリーやモーターを含めた電動化による重量増は約130kgになるというが、アルトゥーラは先のエンジンだけでなく、車体の中核となるセルの新設計からハーネス類に至るまで徹底的な軽量化が施され、その増加分をほぼ相殺。乾燥重量1395kgはポルシェ『911』やフェラーリ『F8トリブート』とほぼ同水準だ。
ちなみにランボルギーニはアルティメイトモデルの『シアン』で、アヴェンタドール由来のV12に48Vモーターを組み合わせ、バッテリーの代わりに充放電をスーパーキャパシタに担わせるHEVパワートレーンをすでに発表している。
間もなくと噂される次期モデルに、このテクノロジーが転用されるか否かは定かではないが、自らの魅力をいかに活かしながら社会受容性と向き合うか、スポーツカーブランドの方向性はこの1〜2年で急速に浮かび上がってくるはずだ。
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