■共通点が多いハリアーに人気を奪われるRAV4
RAV4とC-HRは、なぜここまで売れゆきを下げたのか。まずはRAVについて、トヨタの販売店に尋ねると以下のように返答された。「RAV4は今でも堅調に売れるSUVの主力車種だが、ハリアーに押されている面がある」。
ハリアーは人気の根強い上級SUVで、現行型は2020年6月に発売された。好調に売れて、小型/普通車登録台数ランキングの上位に入る。2020年9月以降は1カ月当たり8000~9000台を安定的に登録して、今でも同じ状態が続く。
RAV4の需要は、販売店の指摘どおり、ハリアーに奪われた面があるだろう。なぜならRAV4とハリアーは、両車とも基本的なメカニズムを共通化しているからだ。
プラットフォームはホイールベース(前輪と後輪の間隔)を含めて同じで、エンジンも直列4気筒2Lのノーマルタイプと2.5Lハイブリッドだ。PHV(プラグインハイブリッド)を選べるのはRAV4のみだが、そのほかは共通点が多い。車内の広さも大差はない。
両車で異なるのはデザインと質感で、RAV4には野性味が感じられ、ハリアーは都会的かつ上質だ。
そのために2Lノーマルエンジンを搭載するRAV4・4WD・Gの価格は339万1000円、ハリアー4WD・Gは361万円だから約22万円高い。それでもハリアーの内外装が好きなユーザーにとって、価格が割高な印象は受けないだろう。
従ってほぼ同サイズでエンジンも共通のハリアーとRAV4は互いに競争する。ハリアーは先代型の売れゆきも堅調で、現行型に乗り替えるユーザーが多く、知名度も高いことからRAV4の登録台数を上まわった。
■欲しいユーザーに行き渡り売れゆきが下がったC-HR
C-HRはどのような事情でユーザーを減らしたのか。この点も販売店に尋ねた。
「C-HRは発売直後は絶好調に売れたが、人気が下がるのも早かった。特に最近は、C-HRよりも価格の安いコンパクトSUVのライズとヤリスクロスが登場したから、さらに売れゆきが下がった。ファミリーのお客様は、C-HRを目当てに来店され、車内の広いRAV4を買うこともある」。
1980~1990年代のスポーティクーペにも見られた傾向だが、外観が目立つ個性的な車種は、好感を持たれると発売直後に売れゆきを急増させる。
ユーザーは購買意欲を刺激され、愛車の車検期間が満了するのを待たずに乗り替えるからだ。その代わり欲しいユーザーには短期間で行き渡り、売れゆきが下がるのも早い。
C-HRはまさにこの典型で、発売直後の2017年1~6月に、1カ月平均で1万3217台を登録した。その後は2019年に前述のRAV4とライズ、2020年にはヤリスクロスという具合に同じトヨタから競争相手になるSUVが発売され、C-HRは相対的に古さが目立って売れゆきを下げた。
■販売店の専売廃止も人気偏向の要因に
また2020年から全国的に展開されているすべてのトヨタの販売店が全車を扱う体制も、RAV4やC-HRの販売格差を助長した。
以前の体制であれば、RAV4はネッツトヨタ店、ハリアーはトヨペット店のみが扱った。専売車種だからネッツトヨタ店はRAV4、トヨペット店はハリアーの販売に力を入れた。
ヴォクシーのユーザーがミドルサイズのSUVに乗り替えたい時、ネッツトヨタ店はRAV4を推奨する。トヨペット店は、アルファードからSUVに乗り替えるのであればハリアーを薦めた。
あるいは自宅近所にトヨペット店がない場合、本当はハリアーが欲しくても、近所のネッツトヨタ店でRAV4を選ぶこともあっただろう。このように販売系列によって取り扱い車種が専門化されると、各車種ともに一定以上の売れゆきを保ちやすい。
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