ノーマルタイヤと入れ替えの春到来 スタッドレスタイヤの限界はどこで見極める?

保管状態もその後の寿命を左右する。

タイヤの保管場所は、ゴムが劣化しにくい冷間暗所の環境が望ましい。タイヤ専門店の保管サービスを利用するのもおすすめ
タイヤの保管場所は、ゴムが劣化しにくい冷間暗所の環境が望ましい。タイヤ専門店の保管サービスを利用するのもおすすめ

 夏タイヤに交換した後のスタッドレスを、どこでどうやって保管するか。これが性能の維持には極めて重要だ。なぜならゴムは適度に振動を加えていた方が、弾力性が維持されるという性質がある。

 そのため保管しておくより、走行していた方がゴムとしての劣化は少ない場合もあるのだ。つまり保管しておくなら保管環境が大きく影響する、ということを覚えておきたい。

 高温多湿の環境は、ゴム分子の加水分解を引き起こし、コンパウンド自体をボロボロにしてしまう。さらに紫外線が直接当たることもやはりゴムの分子を寸断させてしまうから、これらの環境下でタイヤを保管することは、スタッドレスでも夏タイヤでも禁物だ。

 日に当たるところでの保管は、例えビニール袋などで覆ってタイヤに直接紫外線が当たらないようにしていたとしても、袋内部の温度が上昇してしまうとタイヤの劣化を早めることになる。

 さらにはマンションなどのベランダに保管しておく場合、エアコンの室外機が近くにあるのも要注意だ。コンプレッサーを駆動したり、ファンを回すモーターは、電力を消費するだけでなくオゾン(酸素原子が3つつながった分子)を発生させる。これは極めて酸性度が高く、やはりゴムを分解させてしまう。

 室外機とは十分に離して風通しの良い状況にしておくか、タイヤをビニール袋などで密閉しておくしかないが、ビニール袋も同様にオゾンで劣化してしまうので、破けてしまうし、内部に水分などがあったり、日に当たって内部の温度が上昇してしまうと、これもコンパウンドを傷める原因になるので、注意したい。

 つまり冷間暗所がタイヤ保管のベストな環境なのだが、一般家庭ではなかなか難しい。タイヤ専門店では、倉庫などでタイヤを預かってくれるサービスを展開しているところも多いから、これを利用するのもいい。

 単にタイヤに適した環境で保管してくれるだけでなく、交換時には夏タイヤ、冬タイヤのコンディションをチェックして、交換時期などを判断してくれるから、より安心して冬タイヤも夏タイヤも利用し続けることができる。

摩耗したスタッドレスは夏タイヤとして使えるか

スタッドレスタイヤは残り溝1.6mmまでは公道で使用可能、かつ夏用タイヤとしても使える。ただしグリップ性能が低いため、夏タイヤと同じ感覚で乗り回さないよう注意が必要だ
スタッドレスタイヤは残り溝1.6mmまでは公道で使用可能、かつ夏用タイヤとしても使える。ただしグリップ性能が低いため、夏タイヤと同じ感覚で乗り回さないよう注意が必要だ

 スタッドレスタイヤは、磨り減ったら夏タイヤの代わりにそのまま履き続けて、摩耗限界まで履きつぶす、という使い方もある。ただし乗用車の場合はそれは「使えないことはない」というレベルの話だ。

 トラックの分野では、すでにそうした使い方が確立されており、1年を通じて冬タイヤを履き、冬前になったら新品タイヤに履き替えることで、常に冬タイヤとしての性能を維持することができる。

 しかし乗用車では毎年タイヤを履きつぶす人は極めて希だろう。それに乗用車とトラックではスタッドレスタイヤの特性もかなり違い、夏に冬タイヤを使うのは安全性も含めてお勧めできないから、そうした使い方ならオールシーズンタイヤを使って、履きつぶすまで使ったほうがいいだろう。

 スタッドレスタイヤはトレッド面の溝が深く、2段階で摩耗限度を判断できるようになっている。まず最初に現れるのが、スタッドレスタイヤとしての使用限度であるプラットフォームと呼ばれるもので、そこまで減ったら冬タイヤとしての能力は維持できていないから、冬タイヤとしては使うことは危険だ。

 それでも道路運送車両法で定められているタイヤの残り溝の1.6ミリより溝高さがあれば、公道上で使用することは、「法律上はできる」ということなのだ。

 この摩耗限界で現れるのがスリップサイン(正式名称はウエアインジケーター)で、プラットフォームと同じく、トレッドパターンを横断するちょっと盛り上がった山のこと。ここの部分でトレッドデザインが消えてなくなってしまうのが、摩耗したサインなのだ。

 晴れた日にゆっくり走っているだけならば、摩耗したスタッドレスタイヤでも十分、走行することはできる。けれどもステアリングの応答性やコーナリング時の安定性、ブレーキング時の制動力の立ち上がりは、同じ残り溝の夏タイヤとは比べるべくもない。

 スタッドレスタイヤと夏タイヤでは、根本的に構造が異なり、スタッドレスはタイヤ全体の構造でもグリップ力を引き出すため、ケーシング剛性が低めで、より空気によって車体を支えている比率が高い。乗り味を夏タイヤに近付けようと空気圧を調整しても、それは感触だけの変化で、夏タイヤに走行性能が近付いている訳ではないのだ。

タイヤとしての摩耗限界を示すスリップサイン。写真のタイヤはスリップサインが左右のタイヤ溝と同じ高さまで来ており、もう限界だ(Adobe Stock@kumi)
タイヤとしての摩耗限界を示すスリップサイン。写真のタイヤはスリップサインが左右のタイヤ溝と同じ高さまで来ており、もう限界だ(Adobe Stock@kumi)

 またスタッドレスタイヤは、新品時でも夏タイヤと比べるとウエット性能が低い、ということにも注意が必要だ。

 冬タイヤとしての寿命を終えたスタッドレスならなおさらで、夏タイヤと同じ感覚で乗り回し、雨の日にも気を付けずに運転すると、わだちに溜まった雨でクルマがコントロールを失ったり、止まりきれずに前走車に衝突してしまう可能性もある。

 車間距離を多めにとったり、車速を抑えて走るだけでなく、周囲の状況に常に注意して、早め早めに操作することで、グリップ力低下によるリスクはある程度はカバーできるが、それにはそれなりのスキルが要求される。

 例えば空気圧の違いに敏感に反応できるような感覚と注意力があれば、そのタイヤでは色々な走行状況によってそれぞれどの程度危険か判断できるだろうが、漫然と運転しているようでは、それは難しい。

 タイヤは消耗品であると同時に、道路とクルマを結ぶ唯一の部品だけに「安心を買う」という意識も大事だ、まだ使えると思っても、早めに交換した方がリスクは少なくなる。ブランドや生産地、生産年(新しさ)にこだわるのも、タイヤに対する安心を買う行為なのだ。

【画像ギャラリー】スタッドレスタイヤの使用限界はいつ? 見極めるためのポイントを写真でチェック!

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