毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はスバル WRX STI(1992-2019)をご紹介します。
文/伊達軍曹、写真/SUBARU
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■車格アップしたレガシィの穴を埋めたインプレッサ そこから生まれ出た「WRX」の系譜
中型ステーションワゴンと軽自動車との間にあった大きな隙間を埋める、Cセグメントのセダンおよびステーションワゴンとして開発されたが、結果としてそのセダンはモータースポーツの分野で世界を制覇。
その後も熟成とモデルチェンジを重ね、高出力・高性能のセダンは世界の車好きを唸らせたが、いつしか「ベーシックモデル」と「スポーツモデル」との乖離がさまざまな矛盾を生んだことで、両者を別のモデルとして分離。
そして分離されたスポーツモデルは相変わらず多くの車好きを唸らせ続けたが、「企業別平均燃費基準」をクリアするため、いったん生産終了を余儀なくされた名車。
それが、スバル インプレッサWRXおよびスバル WRX STIです。
1980年代までのスバルの主力車種はレオーネでしたが、その後継モデルとして1989年に登場したレガシィがレオーネより上のセグメントに移行したことで、当時のスバルのラインナップは「レガシィか、それとも軽自動車か」みたいな状況になっていました。
その好ましからざる隙間を埋めるため1992年に登場したのが、初代インプレッサおよびインプレッサ スポーツワゴンでした。
レガシィより小ぶりで安価な初代インプレッサのベーシックモデルはそれなりの人気を博しましたが、それ以上にインプレッサの人気を決定づけたのは、レガシィRSの後釜として世界ラリー選手権(WRC)参戦車両となった「インプレッサWRX」です。
EJ20型水平対向4気筒ターボエンジンを搭載したインプレッサWRXのラリーカーは、紆余曲折はありながらも、冒頭で述べたとおりWRCを制覇。
そのイメージでもって販売されたインプレッサWRXの市販バージョンも、小メーカーですから「世間一般で大ヒット! 爆売れ!」というほどではありませんでしたが、少なくとも車好きの間では大ヒット作になりました。
インプレッサWRXは2000年に2代目の「GD型」へとフルモデルチェンジされ、2007年には3代目の「GR型」へとさらなるモデルチェンジを実施。
この際、ボディ形状は4ドアセダンから5ドアハッチバックに変更されました。
そして2010年にはファン待望の「4ドアセダンのインプレッサWRX STI」が追加され、このときから、店頭などで表示する車名をスバル インプレッサ WRX STIから「スバル WRX STI」に変更しています(正式な車名はスバル インプレッサ WRX STIのまま)。
インプレッサのベーシックモデルは2011年に4代目へとフルモデルチェンジされましたが、WRX STIだけは3代目のまましばらく生産と販売を続行。
しかし2014年、WRXのほうも「VAB型/VAG型」へとフルモデルチェンジされると同時に、車名から正式に「インプレッサ」の文字が消滅。
そしてスバルWRXは「WRX STI」と「S4」という、キャラクターとエンジンが異なる2モデルに分かれることになりました。
WRX STIのほうは従来どおりのEJ20型ターボエンジン+6MTの硬派仕様で、S4は当時のレヴォーグと共通のFA20型2Lターボ+CVTとなる、ややマイルドな仕様です(といっても十分以上に速いのですが)。
そしてEJ20型エンジンを搭載するWRX STIのほうはこれまでのモデル同様の人気を(スバリストおよび車好きからは)博していましたが、2019年度内にEJ20型エンジンが生産終了になるのに伴い、WRX STIも2019年12月に注文受付を終了。
そして流通在庫を売り切り、そして555台限定で発売された最後の特別仕様車「スバル WRX EJ20 Final Edition」があっという間に完売するとともに、その長い歴史にいったんの終止符を打つことになりました。
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