WRX STIの終わりなき軌跡 名機EJ20を搭載し30年愛されたスバルの栄光! 【偉大な生産終了車】


 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はスバル WRX STI(1992-2019)をご紹介します。

文/伊達軍曹、写真/SUBARU

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■車格アップしたレガシィの穴を埋めたインプレッサ そこから生まれ出た「WRX」の系譜

 中型ステーションワゴンと軽自動車との間にあった大きな隙間を埋める、Cセグメントのセダンおよびステーションワゴンとして開発されたが、結果としてそのセダンはモータースポーツの分野で世界を制覇。

 その後も熟成とモデルチェンジを重ね、高出力・高性能のセダンは世界の車好きを唸らせたが、いつしか「ベーシックモデル」と「スポーツモデル」との乖離がさまざまな矛盾を生んだことで、両者を別のモデルとして分離。

 そして分離されたスポーツモデルは相変わらず多くの車好きを唸らせ続けたが、「企業別平均燃費基準」をクリアするため、いったん生産終了を余儀なくされた名車。

 それが、スバル インプレッサWRXおよびスバル WRX STIです。

 1980年代までのスバルの主力車種はレオーネでしたが、その後継モデルとして1989年に登場したレガシィがレオーネより上のセグメントに移行したことで、当時のスバルのラインナップは「レガシィか、それとも軽自動車か」みたいな状況になっていました。

 その好ましからざる隙間を埋めるため1992年に登場したのが、初代インプレッサおよびインプレッサ スポーツワゴンでした。

 レガシィより小ぶりで安価な初代インプレッサのベーシックモデルはそれなりの人気を博しましたが、それ以上にインプレッサの人気を決定づけたのは、レガシィRSの後釜として世界ラリー選手権(WRC)参戦車両となった「インプレッサWRX」です。

スバル インプレッサWRX。全長×全幅×全高は4340×1690×1405mm、ホイールベースは2520mm

 EJ20型水平対向4気筒ターボエンジンを搭載したインプレッサWRXのラリーカーは、紆余曲折はありながらも、冒頭で述べたとおりWRCを制覇。

 そのイメージでもって販売されたインプレッサWRXの市販バージョンも、小メーカーですから「世間一般で大ヒット! 爆売れ!」というほどではありませんでしたが、少なくとも車好きの間では大ヒット作になりました。

 インプレッサWRXは2000年に2代目の「GD型」へとフルモデルチェンジされ、2007年には3代目の「GR型」へとさらなるモデルチェンジを実施。

 この際、ボディ形状は4ドアセダンから5ドアハッチバックに変更されました。

 そして2010年にはファン待望の「4ドアセダンのインプレッサWRX STI」が追加され、このときから、店頭などで表示する車名をスバル インプレッサ WRX STIから「スバル WRX STI」に変更しています(正式な車名はスバル インプレッサ WRX STIのまま)。

3代目のWRXから登場した、2010年7月に追加された4ドアモデル(写真はAスペック)

 インプレッサのベーシックモデルは2011年に4代目へとフルモデルチェンジされましたが、WRX STIだけは3代目のまましばらく生産と販売を続行。

 しかし2014年、WRXのほうも「VAB型/VAG型」へとフルモデルチェンジされると同時に、車名から正式に「インプレッサ」の文字が消滅。

 そしてスバルWRXは「WRX STI」と「S4」という、キャラクターとエンジンが異なる2モデルに分かれることになりました。

 WRX STIのほうは従来どおりのEJ20型ターボエンジン+6MTの硬派仕様で、S4は当時のレヴォーグと共通のFA20型2Lターボ+CVTとなる、ややマイルドな仕様です(といっても十分以上に速いのですが)。

 そしてEJ20型エンジンを搭載するWRX STIのほうはこれまでのモデル同様の人気を(スバリストおよび車好きからは)博していましたが、2019年度内にEJ20型エンジンが生産終了になるのに伴い、WRX STIも2019年12月に注文受付を終了。

2011年にフルモデルチェンジし4代目となったスバルWRX。この際、「スポーツ」(5ドアハッチバックタイプ)と「G4」(4ドアセダンタイプ)にサブネームが改められる。2014年、WRX STIはセダンのみに集約され、インプレッサから独立したブランドとなる

 そして流通在庫を売り切り、そして555台限定で発売された最後の特別仕様車「スバル WRX EJ20 Final Edition」があっという間に完売するとともに、その長い歴史にいったんの終止符を打つことになりました。

■今後も名車の生産終了は続く? WRX STIそしてEJ20終了の背景にある「CAFE」の存在

 長い歴史と人気を誇ったインプレッサ WRX/WRX STIが生産終了となった理由。

 それは、冒頭で申し上げたとおりの「企業別平均燃費基準(CAFE)」です。

 WRX STIの市販車に頑なに搭載され続け、そしてモータースポーツのトップカテゴリーでも使われ続けたEJ20型水平対向4気筒エンジン。

 それは今から30年以上前の1989年に登場した初代レガシィとともにデビューしたエンジンです。

EJ20

「きわめて高剛性で、高出力化への潜在性能が高い」というのがEJ20エンジンの最大の特徴で、2Lクラスでは当時世界最強クラスだった220psを発生する初代レガシィは、「10万kmアクセルを全開にし続けても壊れない」という驚異的な耐久性を試験で実証してみせました。

 そんなEJ20型エンジンだからこそスバルはトップカテゴリーのモータースポーツでそれを使い続け、そしてインプレッサ WRX/WRX STIの市販車にも搭載し続けました。

 そして市販車用のEJ20型エンジンは「ただ搭載され続けた」というわけでは決してなく、さまざまな改良が続けられました。

 パフォーマンスや信頼性の面で、そして環境性能の面で「30年前のEJ20とはほとんど別物」といっても過言ではないエンジンへと進化したのです。

 ……とはいえEJ20は「基本設計が30年以上前の古いエンジンである」という事実に変わりはありません。

 それゆえ「改良」だけで環境性能を向上させるには、どうしたって限界がありました。

 しかしEJ20を愛するスバリストはこう言いたかったでしょう。

「環境性能がどうでもいいとは言わないが、スバル車に燃費性能なんて求めてない。だからEJ20を作り続けてくれよ!」と。

 その気持ちは、筆者はわかるつもりですし、たぶんですがスバルの技術者や上層部も、理解しているのではないかと思います。

 しかしスバルは筆者のような単なる車好きのおっさんではなく「企業」ですので、前述した「CAFE(企業別平均燃費基準)」をクリアしないことにはどうにもなりません。

「CAFE」というのは要するに、車種ごとではなくメーカー全体で、出荷台数を加味した平均燃費を算出し、規制をかけるという燃費規制です。

 ある特定の車種が燃費基準を達成できなくても、そのほかの車種の燃費を向上させることでカバーできるという仕組みですが、逆に言えば「ある特定の燃費の悪い車種が、メーカー全体の足を引っ張ることになる」とも言える仕組みです。

 で、もしもメーカー全体の平均燃費が一定の基準値に達していない場合は巨額のクレジットを支払わなければいけなくなるという、自動車メーカーにとってはおそろしい仕組みでもあります。

 そのためスバルは断腸の思いで――かどうかは知りませんが――EJ20の生産を終了。そしてそれに伴って自動的に、WRX STIも生産を終了することになったのです。

 とはいえ、スバル WRX STIの系譜がこれで完全に途絶えたわけではありません。

 ベストカーのスクープ班によれば、EJ20より環境性能が高い「FA24ターボ」を搭載する新型WRX STIが、2022年中には登場するとのこと。

 ……ベストカースクープ班の情報確度がいかほどかはわかりませんが、インプレッサWRXおよびWRX STIの「第2章」に、大いに期待したいとは思っています。

■スバル WRX STI(4代目)主要諸元
・全長×全幅×全高:4595mm×1795mm×1475mm
・ホイールベース:2650mm
・車重:1500kg
・エンジン:水平対向4気筒DOHCターボ、1994cc
・最高出力:308ps/6400rpm
・最大トルク:43.0kgm/4400rpm
・燃費:9.4km/L(JC08モード)
・価格:485万1000円(2019年式 EJ20 Final Edition)

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