■迷走からの回帰 シンプル&クリーンに戻ったホンダ
ホンダ車のデザインは、昔からシンプル&クリーンが基本。トヨタや日産が「ブリキバロック」とでもいうべき安っぽい装飾に走ってもホンダはなびかず、それが知的で貴族的なイメージを醸し出してきた。
が、シンプル&クリーンも何十年も続くと、新鮮さを打ち出すのが難しくなる。
21世紀に入るとホンダデザインのもがきが始まり、3代目ステップワゴンのサイドに無意味な斜めエッジを入れたり、3代目フィットの前後に左右に分割されたダミーグリルを付けたり、レジェンドをカラス天狗にしたり、無駄な装飾が散見されるようになった。
造形にも徐々にたるみが出た。ホンダのドル箱SUVであるCR-Vがその典型だ。
初代、2代目はホンダらしいシンプル&クリーン路線だったが、3代目でふくよかなフォルム&複雑なディテールに転換。4代目、5代目もそれを継承している。
海外市場重視によりサイズも大幅に肥大化し、そのため国内ではサッパリ売れなくなったが、海外では大ヒットを続け、ホンダで一番売れるクルマになったのは皮肉だ。
初代ヴェゼルも、CR-Vの弟分的なふくよか系デザインで、こちらはサイズが手頃なこともあり国内でも大ヒット。海外ではHR-Vの名前でCR-V、シビックに次ぐ量販モデルに成長したが、新型は一転、シンプル&クリーン路線に回帰したわけだ。
その背景には、世界的なデザイントレンドがシンプル&クリーンへと向かっていることがあるだろう。ホンダとしても、一部のモデルでデザインを複雑化しすぎたことへの反省があったと推察する。
マツダデザインの基本も、無駄をそぎ落としたシンプルな美だ。それゆえ、フロントフェイスに類似点が出たと見る。テールがハリアーに似て見えるのは、表面的な指摘に過ぎない。
新型ヴェゼルのデザインは、ホンダのSUVとして、初代HR-Vに迫る秀作ではないか。
コメント
コメントの使い方