登録済み未使用車いわゆる「新古車」はなぜなくならないのか?

■ユーザー側からすると必ずしも悪とはいえない!?

輸入車の場合はオーダーした場合、最短でも納期は3ヵ月ほどが必要だ。そのため、あらかじめ人気の高いモデルの人気のある仕様(グレード、装備など)を見込み発注して在庫車を抱えている(写真/AdobeStock Ocean Prod)
輸入車の場合はオーダーした場合、最短でも納期は3ヵ月ほどが必要だ。そのため、あらかじめ人気の高いモデルの人気のある仕様(グレード、装備など)を見込み発注して在庫車を抱えている(写真/AdobeStock Ocean Prod)

 しかし、登録済み未使用車が必ずしも悪ともいえないのも事実なのだ。輸入車の場合、インポーターは、海外のメーカー本社と年間の輸入台数や価格などの交渉を行っている。

 当然、それぞれの思惑があり、メーカーサイドは、たくさん売って欲しいと考えるのは当然のこと。逆にインポーターは、人気車の台数確保や仕入れ価格の低減が大きな課題となる。

 また日本での販売台数が伸びれば、メーカーに対して、日本に適した仕様や要望を要求しやすくもなる。しかも輸入車の場合、輸送に最短でも3ヵ月ほどが必要。顧客を待たせないようにするに、在庫の確保も重要なのだ。

 そのため、資金力のあるディーラーでは、人気仕様を在庫として確保するケースもある。もちろん、人気仕様なら登録済み未使用車にしても売りやすい。

 かつてA氏が勤務した店舗でも、計画的に自社登録するクルマは、人気グレードに定番オプションを装着したものを仕入れていたという。このため、色も定番の白、黒、シルバーがほとんどだったそうだ。

 「当時、人気仕様ばかりだった登録済み未使用車は、好みの色とグレードがあれば、お買い得でしたね。ただ私は新車セールス。やはり新車を買って欲しいので、お客様に登録済み未使用車を勧めることはありませんでしたが……」と当時を振り返るA氏。

 また登録済み未使用車が発生する理由のひとつに完成車検査の期限がある。国産車は生産工場にて、輸入車ではインポーターの新車整備センター(PDIセンター)で実施される。

 この完成検査証があれば、書類だけで車両の登録が可能。その有効期限は9ヵ月となっており、これを過ぎると、再度検査が必要なため、車両を持ち込み、検査を受けて登録を行う必要があるのだ。

 そうなれば、コストもかさむため、登録してしまうケースもある。また輸入車の場合だと、年次改良のタイミングで登録済み未使用車が放出されるケースも多い。

■登録済み未使用車は減少傾向にあるのか?

 現在の登録済み未使用車事情は、ネガティブな要素を打開するため、減少傾向にある。それは新車ディーラーへの過剰なノルマが、社会的に問題として捉えられたことが主な原因だ。

 しかし、輸入台数を減らすことは、様々なデメリットも生む。そのため、登録済み未使用車となるはずだった新車たちは、活躍の場を変え、試乗車やセールスマンの移動車、代車などのPRや顧客サービス用のクルマとして短期間の活用後、中古車として放出されるようになった。

 もちろん、それらの車両は、何らかの形で使用されているので登録済み未使用車とは呼ばれない。

 しかも、新型コロナウイルスの世界的な流行が始まった2020年は、工場の操業停止などで自動車の生産台数が減少。その一方で、安全な移動手段としてクルマが再評価され、即納が可能である中古車の人気も高まった。

 軽自動車を含め、前年割れを記録した新車に対して、中古車全体の落ち込みは、新車よりも少なかった。しかも輸入車に限定すれば、前年越えを記録したほど。このため、2020年の中古車市場は、強気の展開となっていた。

■現在、どんな登録済み未使用車があるのか調べてみた

 しかし、先にも述べたようにさまざまな事情で登録済み未使用車は発生するため、今も売り物がないわけではない。そこで輸入車の登録済み未使用車について調べてみた。

■サンプル1:メルセデス・ベンツA200d 車両価格:408万円
2020年式、走行距離:50km以下、車検:2023年11月、色:ホワイト、オプション:AMGラインおよびナビゲーションパッケージ付き。

メルセデス・ベンツとしてはコンパクトクラスに属するAクラス。A200dは、2リッター直列4気筒DOHCディーゼルターボエンジン搭載モデル。新車価格は436万円
メルセデス・ベンツとしてはコンパクトクラスに属するAクラス。A200dは、2リッター直列4気筒DOHCディーゼルターボエンジン搭載モデル。新車価格は436万円


■サンプル2:BMW 320i Mスポーツ 車両価格:538.8万円
2020年式、走行距離:200km以下、車検:2023年11月、色:ホワイト、オプション:レザーシートなど。

BMW3シリーズのなかでも人気の高いスポーツセダン、320i Mスポーツ。新車価格は607万円
BMW3シリーズのなかでも人気の高いスポーツセダン、320i Mスポーツ。新車価格は607万円


■サンプル3:アバルト595コンペティツォーネ 車両価格:339.9万円
2020年式、走行距離:10km以下、車検:2023年1月、色ホワイト、その他:右ハンドル仕様のMT。

1.4リッター直列4気筒DOHCターボエンジンは最高出力180psの高性能。5速MTモデルのハンドルは右・左選択可能で、新車価格は383万円
1.4リッター直列4気筒DOHCターボエンジンは最高出力180psの高性能。5速MTモデルのハンドルは右・左選択可能で、新車価格は383万円


■サンプル4:プジョー208アリュール 車両価格:225万円
2020年式、走行距離:10km以下、車検:2023年11月、色:イエロー。

プジョーのラインナップのなかではベーシックなハッチバックモデルの208。エンジンは1.2リッターターボで、208アリュールの新車価格は262.9万円
プジョーのラインナップのなかではベーシックなハッチバックモデルの208。エンジンは1.2リッターターボで、208アリュールの新車価格は262.9万円


■サンプル5:ボルボXC60 D4 AWDモメンタム 車両価格:578万円
2020年式、走行距離:50km以下、車検:2023年12月、色:パール、オプション:レザーシート。

ボルボのSUVのなかではミドルサイズに属するXC60。ボルボは電動化が進められており、現在新車で購入できるXC60は、ハイブリッドとプラグインハイブリッドのみ
ボルボのSUVのなかではミドルサイズに属するXC60。ボルボは電動化が進められており、現在新車で購入できるXC60は、ハイブリッドとプラグインハイブリッドのみ


■サンプル6:ジープ ラングラー アンリミテッド サハラ2.0T 車両価格:589万円
2021年式、走行距離:20km以下、車検:2024年1月、色:ホワイト。

本格的なクロスカントリー4WDのジープラングラー。アンリミテッド サハラ2.0Tは、2リッター直列4気筒DOHCターボエンジン搭載で、新車価格は613万円
本格的なクロスカントリー4WDのジープラングラー。アンリミテッド サハラ2.0Tは、2リッター直列4気筒DOHCターボエンジン搭載で、新車価格は613万円


■サンプル7:VW Tクロス 1STプラス 車両価格:285万円
2020年式、走行距離:10km以下、車検:2023年9月、色:ターコイズブルー。

1リッター直列3気筒DOHCターボエンジンを搭載する、コンパクトサイズのSUV。現在新車でのラインナップはTSIアクティブ(278万円)とTSIスタイル(303万円)の2タイプ
1リッター直列3気筒DOHCターボエンジンを搭載する、コンパクトサイズのSUV。現在新車でのラインナップはTSIアクティブ(278万円)とTSIスタイル(303万円)の2タイプ

 大手中古車検索サイトや認定中古車検索サイトで調べてみたが、全体的には、やはり輸入車の登録済み未使用車は少ないようだ。

 今回のサンプルには、500万円台までの多くの人が検討することの多いモデルをピックアップ。新車価格と比べると、「A200d」でも、新車時のメーカーオプションを含めた価格に比べ、70万円以上安い。

 値引きがシブそうな人気ホットハッチ「アバルト595」でも、価格差は約43万円にもなる。ところが、全てがお得かといえば、そうでもない。例えば、サンプル6の「ラングラー」は、流行りのSUVのなかでも特に人気が高い。

 しかも今年の登録車であるため、その価格差は24万円と新車に近い。このように全ての登録済み未使用車が、必ずしも超お買い得とは限らないのだ。

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