ハスラーはなぜロングヒットを続けることができるのか!? 強力ライバル登場も横綱相撲の安定感!

■『ハスラー』人気の理由をスズキ販売店に聞いてみた

 ハスラーが人気を高めた理由をスズキの販売店に尋ねると、以下のように返答した。

 「ハスラーの人気は高く、昨今の半導体不足も影響して、納期が長引いている。メーカーオプションのメモリーナビを装着すると3カ月近くに達する。人気の理由は、まず外観が人気車のジムニーに似てカッコイイこと。車内も広く実用的で使いやすい。そしてハイブリッドの低燃費も人気の秘訣だ。そのために従来型からの乗り替えも多い」

 現行型の外観は先代型の路線を踏襲したが、従来以上に水平基調に近づけて、ボディ側面のウィンドーを3分割させた。SUVらしい力強さがさらに強調され、ピラー(柱)やサイドウィンドーの上に向けた絞り込みも抑えたので、ボディが少し大きくなったように見える。車内の広々感も増している。

現行の2代目『ハスラー』のエクステリアはアウトドア感を強め、より角ばった力強いスタイルになった
現行の2代目『ハスラー』のエクステリアはアウトドア感を強め、より角ばった力強いスタイルになった

 丸型ヘッドランプは従来型に似ているが、ジムニーと同様、ほかの車種とは違う個性を表現している。もともとSUVには、サイズや価格に基づくヒエラルキーに捕らわれない魅力があるが、ハスラーは個性的な外観と相まってその傾向が特に強い。

 現行型ではハイブリッドの搭載も注目される。ハイブリッドといってもマイルドタイプだから、モーター機能付き発電機が、減速時の発電、アイドリングストップ後の再始動、エンジン駆動の支援を行う。

 それでも「軽自動車のハイブリッド」であることは、電動化が話題に登る昨今ではセールスポイントになり得る。WLTCモード燃費も、ノーマルエンジンは25km/Lと良好で、ライバル車となるタフトの20.5km/Lと比べても優れている。

■スズキのライバル会社ダイハツとの販売・商品戦略の比較

 さらに先に述べたとおり、衝突被害軽減ブレーキを始めとする安全装備と運転支援機能も進化させたから、ハスラーは現行型も好調な売れ行きに至った。

 しかもハスラーでは先代型も好調に売れたから、新型への乗り替え需要が多い。この点は、現行型が初代モデルになるタフトとの違いでもある。タフトは外観とコンセプトがハスラーに似ているのに、2020年6月に発売された現行型が最初だから、後追い商品の印象も強い。乗り替え需要もなく、販売面ではハスラーよりも不利になった。

2020年6月に発売開始されたダイハツ『タフト』。「バックパック・スタイル」をコンセプトに、ハスラーの対抗馬として登場した
2020年6月に発売開始されたダイハツ『タフト』。「バックパック・スタイル」をコンセプトに、ハスラーの対抗馬として登場した

 そしてスズキとダイハツとの比較でいえば、車種数の違いもハスラーの売れ行きに影響を与えた。ダイハツのカーラインナップを見ると、全高が1600mmを超える背の高い前輪駆動の軽乗用車は、6車種用意されている。前述のムーヴキャンバスは、全高が1700mm以下の丸みを持たせたボディに、背の高いタントと同様のスライドドアを装着して人気も高い。

 対するスズキの場合は、全高が1600mmを超える前輪駆動の軽乗用車は、ハスラー/ワゴンR/スペーシアの3車種だけだ。ダイハツのムーヴキャンバスやウェイクに相当する車種がないため、スズキでは背の高い軽自動車のニーズが前述の3車種に集中した。

 そうなるとハスラーは、1車種でさまざまなユーザーに対応する必要がある。そこで後席には、左右独立式のスライド機能と平らな荷室の得られるフォールディング機能を採用した。ワゴンRと同様に座り心地も優れ、ファミリーカーとしても使いやすい。

 このようにハスラーにはもともと大量に売る使命があり、1カ月の販売目標も6000台に設定した。ダイハツ『タフト』の4000台を上まわる。

 そこで2020年度におけるメーカー別の軽自動車販売ランキングを見ると、ダイハツが1位(54万9409台)、スズキは2位(53万9396台)だが、両社の差は1年間でわずか1万台少々だ。しかも軽乗用車に限ると、2020年度はスズキが41万9966台で、40万4446台のダイハツを上まわった。スズキは車種数が少なく、なおかつ軽乗用車の販売台数は多いので、ダイハツに比べると1車種当たりの売れ行きが伸びた。ハスラーの売れ行きも、この影響を受けている。

 以上のようにハスラーは、個性的で好感度の強い外観、ワゴンRに準じた広い室内、多彩なシートアレンジ、マイルドハイブリッドによる優れた燃費などによって人気を高めた。

 タフトも低価格まで含めた全グレードに、ガラスルーフのスカイフィールトップ、フルLEDヘッドランプ、電動パーキングブレーキを標準装着して装備を充実させたが、売れ行きはハスラーが勝っている。

 車種数を抑えながら販売台数を増やすスズキの戦略は、効率が優れ、同社の得意ワザともいえるだろう。それがハスラーを成功に導いた。

【画像ギャラリー】「タフ&力強さ」を強調した2代目『ハスラー』を写真でチェック!!

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