堅調人気もなぜ消滅?? 消えた実力車が生き残れなかった分水嶺

トヨタ エスティマ

エスティマ(販売期間:1990年~2019年/全長4795×全幅1800×全高1730mm)
エスティマ(販売期間:1990年~2019年/全長4795×全幅1800×全高1730mm)

 以前はLサイズミニバンの主力はエスティマだった。アルファード&ヴェルファイアも、このエンジンとプラットフォームを使って開発された。

 しかしその後にアルファード&ヴェルファイアの登録台数が増えた。2010年は、エスティマは1か月平均4500台前後で、アルファードは約3000台、ヴェルファイアは5000台であった。

 この時点ではエスティマも健闘していたが、アルファード+ヴェルファイアの姉妹車全体では8000台に達する。この後もアルファードとヴェルファイアは売れ行きを伸ばし、エスティマは古くなって登録台数を減らした。

 エスティマがフルモデルチェンジされずに廃止された理由には、アルファード&ヴェルファイアの好調な売れ行きと併せて、ミニバン需要に関する不安感もあった。現時点でミニバンは日本の人気カテゴリーだが、子どもの数は減っており、今後需要が急落する心配もある。そこに開発費用の削減も加わって廃止された。

 そして今ではトヨタの全店が全車を扱うから、販売格差も拡大している。ヴェルファイアはアルファードの8%しか売れていない。仮に2012年頃にエスティマをフルモデルチェンジしても、販売不信に苦しんでいた可能性がある。

 その一方でエスティマには、アルファード&ヴェルファイアとは違う独自の価値もある。トヨタの開発者は次の通りコメントした。

 「エスティマは空力特性に優れたミニバンだ。全高も低いから、アルファード&ヴェルファイアに比べるとボディも軽く、タイヤは細くできる。もしアルファード&ヴェルファイアが開発されていたら、走りが軽快で、なおかつ燃費の優れた上級ミニバンになっていたと思う」

 廃止するには惜しいクルマであった。

日産 ティーダ

ティーダ(国内販売期間:2004年~2012年/全長4205×全幅1695×全高1535mm ※前期型)
ティーダ(国内販売期間:2004年~2012年/全長4205×全幅1695×全高1535mm ※前期型)

 ティーダは日産のコンパクトカーで、業績の改善を目指す過程において2004年に発売された。

 使用される「Bプラットフォーム」は、先代マーチと共通だが、内外装は上質で、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2600mmと長いから後席も広い。「小さな高級車」を感じさせた。

 さらに良好な視界とバランスの取れたボディスタイルを両立させ、優れた商品に仕上げていた。そのために2005年には1か月平均で8000台以上が登録され、今日のフィットと同等に売れていた。

 ところが2代目は3ナンバー車に拡大され、海外専用車となった。日本では先代ノートに最上級のメダリストを設定したが、質感は大幅に下がり、ティーダの位置付けを埋めることはできなかった。

 2008年に発生したリーマンショックによる世界的な経済不況の後は、各社とも商品開発が海外市場中心になり、日産は特にこの傾向が強かった。この流れのなかで、国内市場に最適な「小さな高級車」の素性を備えるティーダが廃止された。前述のエスティマと同様、残念な結果となった。

 そこで改めて、数か月後には、現行ノートをベースにした上級モデルが追加される。実質的にティーダの復活となる。

ホンダ アクティトラック

アクティトラック(販売期間:1977年~2021年/全長3395×全幅1475×全高1745mm)
アクティトラック(販売期間:1977年~2021年/全長3395×全幅1475×全高1745mm)

 アクティはホンダの軽商用車で、アクティバンはすでに生産を終えて後継のN-VANに切り替わった。アクティトラックも2021年6月には生産を終える。

 ダイハツとスズキが生産する今日の軽トラックは、エンジンを前席の下に搭載する後輪駆動車だが、アクティトラックは後部(荷台の下側)に搭載する。そのため駆動力の伝達効率が優れ、2WDでも悪路走破力が高い。農道を走る機会の多い軽トラックでは強い魅力になっている。

 しかし軽商用車は薄利多売の象徴だ。採算を取るのが難しく、今では前述のダイハツとスズキしか軽商用車を手掛けていない。ほかのメーカーは、この2社のOEM車を販売している。そこでアクティバンに続いて、トラックも廃止される。

 ちなみにN-VANは、N-BOXと基本部分を共通しながら車内を刷新することで、軽商用バンを成立させた。OEM関係を持たないホンダらしいクルマ造りだが、軽トラックの開発までは無理であった。

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