■中古車の供給過多が引き起こす暴落
ここで気になるのが、前述したアルファードの“暴落”である。
今の状況では、残価設定ローンでの、5年後の約50%という残価率設定は、相場を反映したものといえるので、仮に購入直後にトヨタ系ディーラー以外、特に買い取り専業店などへ持ち込めば同等もしくはそれ以上の価値判断をしてもらえる可能性が高い。
ただ、これが5年後になると、現状のアルファードがある意味“売れすぎている”状況が再販価値に影響してくる可能性が高い。しかも、2020年9月以降に購入していれば、単純に考えると5年後、つまり2025年9月以降には、毎月1万台近いアルファードが、中古車市場に放出されることになる。
そうなれば中古車市場では供給過剰気味となり、中古車相場の下落を招くと考えるのは自然の流れといえる。特に今、売れ筋となっているSタイプゴールドの下落はアルファードのなかでも激しくなるのではないかともいわれている。
ただし、仮に中古車相場が新車購入時に残価設定ローンを組んだ時の設定残価率を下回ったとしても、設定した残価率は保証されるので、据置き残価相当額の200万円は固定されることになる。
ただし、買い取り専業店などへ売却した際には、その200万円を期待することは難しくなり、前述したように、事実上“逃げ場”がなくなり、アルファード以外としても、トヨタの新車へ乗り換えるしか、選択肢がなくなってしまうというわけである。
「トヨタが200万円を残価保証しているので、中古車相場は下落しないのでは?」という見方もある。
しかし、「聞いた話では、相場が下落などして保証した残価率を維持できなくなった時には、200万円に足りない分は販売したトヨタ系ディーラーが補填するということです。
いずれにしろ、残価を保証する(規定走行距離オーバーや、外装の傷などによる規定減点をオーバーしなければ)ということは、当該車のリセールバリュー維持につなげようということなのですが、現状のアルファードほど販売台数が多いと、トヨタ系列内の枠を飛び出て、中古車として流通する台数も多くなるでしょうから、相場が荒れることは充分考えられます」(前出事情通)。
現在のアルファードの残価率がよくても、いまの新車販売状況が反映され、近い将来にはローンを組む際の残価率は現在のレベルを維持できなくなる。その幅はわからないが、今の水準よりはリセールバリューのダウンが避けられないとみることができる。
■海外への中古車輸出の動静がアルファードの相場を左右
前出セールスマンは、「今のアルファードの流れは、3代目プリウスが辿った道とよく似ている」と語ってくれた。
3代目プリウスはデビュー直後から大ブレイクしたモデル。残価率もアルファード並みか、それ以上に高かったのだが、やはり売れすぎたために、一般的な乗り換えのタイミングでは、リセールバリューが暴落。
ミントグリーンなど個性の強いボディカラーは特に暴落幅が激しく、現金一括で購入したユーザーなどでは、下取り査定額がユーザーの予想をはるかに下回ることが続出し、苦労したとのことであった。
さらに過去には、“昭和のベストセラーカー”として、いまのヤリス並みか、それ以上に売れたカローラも流通台数が多すぎたことで、リセールバリューが伸び悩んでいた。特に売れ筋の特別仕様車は、初回車検前に半額以下になることが珍しくなかった。
前出セールスマンは、「完済を待たずに、お客様個々の支払いプランなどを見ながら、支払い途中であっても、有利なタイミングで、お乗り換えなどをご案内していきたい(残価相当額より下取り査定額のほうが高くなることが多い)」と語ってくれた。
ただ、中古車市場に詳しいA氏は、「今は新型コロナウイルスの影響で滞っていますが、海外への中古車輸出が戻れば、それほど危惧する必要はないのでは?」と話してくれた。海外バイヤーの動向も今後のアルファードの相場がどうなるのかを左右しそうである。
また、「トヨタが今の状況を何も考えずに見過ごしているわけはない」という楽観論もある。
とにかく、販売サイドやクルマの流通事情に詳しい人の間では、いまのアルファードの売れ方は“尋常ではない”との判断で一致している。昭和の頃のカローラや、3代目プリウスのような“爆売れ”しているのも事実。
ただ、これほどの高額車が爆売れするのは大変珍しいことなので、必ずしも“前例”があてはまるとは限らない。また、ミニバン自体が値落ちスピードが遅いこともあり、先行きが読みにくいのも事実なのである。
ただ、いまの売れゆきは、さまざまな不安を抱いてしまうほどの“異常事態”であることは、重ねて述べておきたい。
コメント
コメントの使い方