日本クルマ界創生期、グレード名といえば、「デラックス」や「スタンダード」など、そのクルマの仕様や装備を示すものだった。
いっぽうで日本のモータリゼーションが黎明期から普及期へ移る1970年代~80年代になると、人々のクルマへの憧れの強さから、そのグレード名に様々な意味を見出すようになり、またメーカー側も「そこ」にプライドやブランド力を込めるようになる。
例えば、「GT」や「SPORTS」と聞けば、そのクルマがどんな方向性のモデルかすぐにピンと来るはずだ。特にスポーツモデルのグレード名は、キャラクターを示すだけでなく、乗り手にある種のプライドを感じさせることができる。
そうした中で、各メーカーはそうしたブランド力をさらに高めた「エース級」のものも登場させ、それぞれの車種だけでなく、メーカーそのものの代名詞となるグレードまで存在した。
本稿ではそんな、耳にすれば今でもグッとくるグレード名を集めてみた。第一弾として今回は日産、トヨタ、ホンダ、マツダのグレード名を紹介したい。
(昭和に活躍したグレード名を中心に集めましたが、一部平成に入ってから誕生したグレード名も混在しています)
文:大音安弘
■日産 GT-R、SSS、GTi-R、NISMO、グランツーリスモアルティマ、K’s
日産を代表するグレード名といえば、やはり「GT-R」だろう。一時期他のモデルにも使われたものの(いすゞベレットGTR等)、この名を聞けばほとんどの人がまずスカイラインを連想するはずだ。レース用エンジンをデチューンしたS20型エンジンを搭載した昭和のスーパーヒーローは、平成になりハイテクスポーツカーとして復活。現在はモデル名へと出世している。
また日産の高性能セダンの代名詞といえば「SSS」がある。これはスーパースポーツセダンの頭文字を取ったもので、2代目ブルーバードから採用された歴史あるグレードだ。当初はスポーツモデルの「SS」も存在したが、その後、ブルーバードのスポーツモデルを象徴するグレードとなり、U12型ブルーバードには「SSS-R」も登場。最後のブルーバードとなる10代目まで、その名は受け継がれた。
WRCグループAで勝つために投入された(N14型系4代目パルサー)「GTI-R」も外せない名グレード(登場はギリギリ平成の1990年)。ギャレット製の大型ターボチャージャーと大容量インタークーラー、4連スロットルチャンバーや大口径インテークマニホールド等を惜しみなくつぎ込んだ専用チューニングエンジンを搭載し、1990年に登場。堅調な販売を見せるもWRCでは苦戦が続き、一代限りでその名を消すことになる。
近年、欧州日産がジュークにGT-Rのパワートレインを押し込んだモンスター「ジュークR」を販売し、話題となったことは記憶に新しい。日本人としては、単にRではなく、GTI-Rの名を与えて欲しかった。それだけで胸を熱くしてしまう名前なのだから。日本では手にすることはできない「ジュークR」。折角だから、日本では「ジュークGTI-R」で登場させませんか、日産さん!
現代の日産の高性能モデルとして活躍する「NISMO」が登場したのも、実は昭和のこと。7代目(R31)スカイラインの限定車やサニーのスポーツグレードとして投入されている。
高級セダンのビックネームも忘れてはならない。87年にY31系セドリック・グロリアより登場した「グランツーリスモ」だ。日産独自のスポーツ性の高い高級GTの世界を作り上げた功績は大きい。1991年に登場したY32系セドリック/グロリアからは、2代目F31型レパートに採用された「アルティマ」の名を加えた3.0Lターボモデルの「グランツーリスモ アルティマ」を投入。まさにダブルネームとなった、このグレード名は、セドグロのGTとしてのキャラクターと性能を見事に表現した最強ネームだったと思う。
最後に日産の歴史では外せない名スポーツカーグレードにも触れておきたい。それがデートカーとしても驚異的な人気を誇った88年より発売されたシルビアのターボモデル「K’s」だ。このトランプ由来の洒落たネーミングで、自然吸気のベースグレードの「J’s」、その豪華仕様の「Q’s」もあり、2世代に渡って使われた。キング・オブ・シルビアのグレード名として、特別な思い入れがあるファンも多いはずだ。
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