「いいクルマ、だけどここだけがダメなんだよね~、残念」。あるいは「このクルマにアレが備われば理想的なんだよね~」。……こういうケースはけっこうある。
本誌・ウメキとババが、そんな“惜しいクルマ”をどんどこ取り上げ、自動車評論家と濃い意見交換座談会を開始。お招きしたのは自動車評論家 鈴木直也氏だ。
※本稿は2021年3月のものです
文/鈴木直也、ベストカー編集部 写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』 2021年4月26日号
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■ハスラーにガラスルーフを付けてほしい!
ババ まずは僕から。ハスラーにタフトのガラスルーフ(標準装備)があれば、マジで買うかも! 衝突安全性の面などでできないものなんですかね?
ウメキ そりゃババさん。スズキ広報へ電話して「なぜハスラーにできないの?」と聞いたほうが早いでしょ(笑)。
鈴木 教えてくれないでしょ(笑)。軽自動車はなにはなくともコスト命。薄利多売の凄くシビアなビジネスをやっている。例えば、ユーザーをはっきり絞りこまないと売れなかったり、売れ残りもある。
ババ 手広く商売をしてしまうとダメなんだ、と?
鈴木 そう。撒き餌を海へ放り込んで魚を集める、という商売ではない。狙った魚が必ずいるところに釣り竿を下ろす、という感じ。だからダイハツとスズキは綿密なマーケットリサーチをした結果、タフトにはガラスルーフはありだけど……。
ババ スズキはハスラーにガラスルーフを標準設定してもダメだろう、という営業リサーチの結果なんですね。
鈴木 タフトは初代ハスラー登場後の2番手的クルマだから攻めないといけない。だからガラスルーフを標準にしたという狙いだと思う。
ババ 軽はあれこれ欲張ってはダメなんですね。
ウメキ その理想を求める残念具合もわかるけど「ここだけが惜しい」というクルマ、多い。まずはロッキー/ライズのステアフィール。価格を含めた企画コンセプトはいいのに、試乗会で乗って、ずっこけた!
鈴木 ロッキー/ライズは一番安いパワステのモーターをください、と、それを搭載したもの。これ明確ですよ。
ババ へ? ここでもコストダウンの話ですか。
鈴木 そう。このクルマを買うユーザー層の9割はステアフィールは気にしないぞ、と。だから安いものでいいかなということでしょう。
ウメキ ただね、「ユーザーをなめちゃいかんぜよ」ですよ! メーカー側も「お客様は違いがわからない」に近いニュアンスで言う。確かにいいパワステ装着なら高価格になり、商売が成り立たない。でも、僕が言いたいのは、今もこれから先も「安ければいい」という時代ではない、ということですよ。
ババ おお~、アツい。
鈴木 日本車で残念と感じるのは総じて“選べない”こと。コストダウンをテーマにしたクルマはその道を歩むだけ。でも、例えばBMWの2シリーズやベンツAクラスはうまいやり方でベースグレードはしょうもないクルマなんだけど(笑)、グレードが上がるとレベル的に高くなっていく。
ババ それはステアフィールが廉価版だとしょぼいと?
鈴木&ウメキ そうそう!
ウメキ ベーシックは安っぽいよ~。ベンツAクラスはリアサスも違うからね。
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