毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ プリウスα(2011-2021)をご紹介します。
文/伊達軍曹 写真/TOYOTA
【画像ギャラリー】歴代プリウスとともに プリウスα10年の軌跡を辿る
■「車内や荷室がもっと広いHV車を!」の声に応えたプリウスα
「プリウスもいいが、我が家には車内や荷室がもっと広いハイブリッド車が必要だ」という声に応えるため登場し、約10年にわたって庶民の便利な足として奮闘。
だが時の経過とともに同種の車=車内や荷室が広いハイブリッド車が多数登場したことで、その使命を終えた一台。
それが、トヨタ プリウスαです。
プリウスαは2011年5月、3代目トヨタ プリウスをベースとするステーションワゴン……とミニバンの中間的な車として誕生しました。
車台は3代目プリウスと同じ新MCプラットフォームですが、ホイールベースをプリウスよりも80mm延長し、ボディサイズは全長4615×全幅1775×全高1575mmに拡大。
そのうえで、2列5人乗り仕様のほかに3列7人乗りの仕様も用意しました。
パワーユニットは3代目プリウスと同じ1.8Lガソリンエンジン(99ps/14.5kgm)を電気モーター(82ps/21.1kgm)がアシストする「THS II」(トヨタハイブリッドシステムII)。
5人乗り2列シート仕様の駆動用バッテリーも3代目プリウスと共通のニッケル水素バッテリーでしたが、7人乗り3列シート仕様はコンパクトなリチウムイオンバッテリーを採用し、3列目シートを設ける関係で、バッテリーはセンターコンソール下部に置かれました。
デザインはファミリー層を意識したコンサバな(保守的な)ニュアンスでしたが、その分だけ、後ろに行くにしたがって45mmずつ高くなるシートや、プリウスより拡大された2列目のニースペースなど、使い勝手のよさには強いこだわりが見られました。
フル乗車時の荷室容量も7人乗り仕様で200L、5人乗り仕様で535Lが確保され、床下にも予備の収納スペース(60L)が設けられています。
そんなプリウスαは発売後1カ月で5万2000台を受注し、2013年の時点でも月平均約8700台を販売。プリウス全体の約40%を占める人気モデルになりました。
しかし2015年に5ドアハッチバックのプリウスが現行4代目にフルモデルチェンジされるあたりからプリウスαの販売は低迷し、2019年の登録台数は2013年の約11%にまで下がってしまいました。
そしてトヨタは2020年12月、プリウスαの生産を2021年3月に終了すると発表し、実際に同年3月には生産を終了。
トヨタの公式サイトから「プリウスα」の車名が消滅しました。
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