■デビュー当初はジャーナリストなどの評価は高くなかった
デビュー時に、最も高く評価されたのはパワーユニットだ。縦置きにマウントされた4A-GEU型エンジンは、クラス最強スペックだった。レスポンスは鋭く、アクセルを踏み込むとリミッターの作動する7800回転まで軽やかに回り切る。
3速まではクロスしているから、油断するとタコメーターの針は8000回転まで飛び込んでしまう。高回転は気持ちいいが、低回転域のトルクは細い。だから自然と高回転まで引っ張ってシフトアップするようになる。
少年向けの漫画雑誌に連載した「頭文字(イニシャル)D」で主人公が操ったのがAE86トレノだ。群馬の峠道で痛快なドリフト走りを見せ、走り屋たちを魅了した。この刺激的なドリフト走りが伝説になっていく。
だが、デビューした直後は、ジャーナリストやレーシングドライバーからそれほど高く評価されていなかったのである。販売もそれなりの台数にとどまり、大ブレイクという訳ではなかった。評価が高まるのは、あの「頭文字D」がヒットしてからだ。底値だった中古車価格も一気に高騰している。
■お世辞にもハンドリングのいいクルマではなかった
確かにFRならではの振り回すドライビングは楽しかった。だが、限界域での挙動はピーキーで、一気にリアが流れるからスリリングだったのである。とくに気を使ったのは60タイヤを履き、サスペンションをハードに締め上げたGTVだ。
前後の操舵バランスが悪く、限界付近ではアンダーステアが強く、ノーズをイン側に向けるのに苦労させられる。そして限界を超えた時のコントロール性にも難があり、一気にリバースステアへと転じてしまうのだ。
テクニックのあるドライバーなら、アンダーステアからオーバーステア方向にコントロールし、豪快なドリフト走行も引き出せる。だが、中途半端なドライビングだとなかなかスリリングだ。
バランス感覚がよく、コントロールしやすいのは、70タイヤのほうである。速いスピードでコーナリングした時に頑固なアンダーステアに悩まされないし、コントロールできる領域も広い。だが、リアサスペンションはラテラルロッド付きの4リンクだから、右コーナーと左コーナーではクルマの動きやロール量が異なる。
ドライビングテクニックを磨くなら、このレビン/トレノの後に登場したS13シルビアのほうがずっと好印象だった。ハンドリングは軽やかで、狙ったラインに乗せやすい。また、限界付近でもリアが破綻しないし、ドリフトアングルを維持するのもたやすかった。
だが、AE86レビン/トレノは920kg前後と軽量だから振り回して乗ると楽しい。この軽さは今のスポーツモデルには望めない魅力で、大きな武器になる。今はチューニングパーツが数多く用意されているから、自分好みのライトウエイトスポーツに仕立てることが可能だ。
最新の技術を用いてチューニングすれば、不安なく豪快な攻めの走りを楽しめる。自分好みに仕上げて乗れば、一生の良きパートナーになってくれるだろう。
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