N-VAN登場後も売れ筋は1BOX! 日本の誇り!! 軽バンは今後どうなる?

■N-VAN低迷の理由

軽バン唯一のFFレイアウトを活かしたN-VANのインテリア。助手席側はピラーレスで、シートをフルフラットに格納できるのが特徴
軽バン唯一のFFレイアウトを活かしたN-VANのインテリア。助手席側はピラーレスで、シートをフルフラットに格納できるのが特徴

 ハイゼットカーゴとエブリイが好調に売れて、N-VANが低迷する背景には3つの理由がある。

 ひとつ目の理由は、荷室の使い勝手が異なることだ。N-VANも前述のとおり左側のドアやシートの格納に特徴を持たせたが、荷室長には大きな差がある。ハイゼットカーゴの荷室長は、最も長い仕様では1860mm、エブリイなら1910mmに達するが、N-VANは1510mmと短い。

 荷室長に400mmの差が生じると、ハイゼットカーゴやエブリイには積める荷物がN-VANには収まらない。仮に通常運んでいる荷物が小さくても、万一の時に大きな荷物に対応できることは、商用車にとって大切だ。

 ハイゼットカーゴとエブリイは、N-VANよりも積載性に関する安心感が高く、好調な売れゆきに結び付いた。

 販売格差が生じた2つ目の理由は価格だ。ハイゼットカーゴで最も安いスペシャルの標準ルーフ(5速MT)は94万500円、エブリイのGAとPA(5速MT)は96万8000円だが、N-VANで最も安いGは127万6000円になる。

 装備はN-VANが充実して、衝突被害軽減ブレーキ、運転支援機能(CVT)、キーレスエントリーなどをGでも幅広く装着する。しかしビジネスに使われる軽商用車では、純粋な価格の安さが重視されることも多い。最廉価グレードに30万円以上の価格差があると、N-VANは敬遠されやすい。

2020年で発売60周年を迎えたダイハツ ハイゼットシリーズ。バンタイプのハイゼットカーゴは2004年12月の発売以降改良とマイナーチェンジを重ねている。価格は94万500円~
2020年で発売60周年を迎えたダイハツ ハイゼットシリーズ。バンタイプのハイゼットカーゴは2004年12月の発売以降改良とマイナーチェンジを重ねている。価格は94万500円~

 価格差が拡大した背景には、他メーカーに供給されるOEM車まで含んだ生産台数も影響している。

 ハイゼットカーゴの届け出台数に、OEM車のスバルサンバーバンとトヨタピクシスバンを加えると、2020年度に7万8339台が届け出された(1カ月平均では6528台)。この販売実績はダイハツミライース+ミラトコットよりも少し多い。

 エブリイの売れゆきに、OEM車の日産NV100クリッパー、マツダスクラムバン、ミニキャブバンを加えると、2020年度に9万6834台が届け出されている(1カ月平均では8070台)。この台数は日産ルークスに匹敵する。

 以上のようにハイゼットカーゴとエブリイは、OEM車を含めて生産台数が多く、薄利多売も可能になって100万円以下の価格を実現できた。N-VANもN-BOXと基本部分を共通化してコストを抑えたが、乗用車がベースだから、価格を安く抑えるのにも限界がある。

 販売格差が生じた3つ目の理由は顧客の違いだ。ダイハツとスズキは、以前からトラックも含めて軽商用車の取り扱いが多い。

 ダイハツの軽商用車の届け出台数は、2010年度:12万7582台、2015年度:13万8030台、2020年度:14万4963台だ。スズキも同様に13万1103台・13万8577台・11万9430台と推移している。

 ところがホンダは、3万8062台・2万7664台・5万4317台に留まる。ホンダは軽乗用車の販売は堅調だが、軽商用車はもともと少ないからN-VANも売りにくい。

 このように軽バンは機能と価格の両面で競争が激しく、ダイハツがウェイクをベースに開発したハイゼットキャディーは販売が低迷して2021年3月に廃止された。ウェイクの後席をはずした仕様で、実用性、価格の割安感ともに、ハイゼットカーゴに見劣りしていた。

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