■三菱はEVの商用バンを生産終了したが今後は?
問題は今後の動向だ。軽バンは国内の物流を支える大切なツールで、価格の安さも重視される。例えば5台の軽バンを使う企業にとって、価格が10万円高ければ、合計50万円の上乗せになってしまう。
価格は最も安いグレードが100万円以下という設定でないと、ユーザーは選択に困り売れゆきも下がる。
その一方で、電動化などの環境対応も必要だ。2021年4月には、佐川急便が軽自動車サイズの電気自動車を開発して、配達に使うと発表した。開発はベンチャー企業のASFが担当して、生産は中国のメーカーに委託する。
詳細は不明だが、ASFの車両は2021年3月から走行試験や機能の検証を行い、2022年9月から運用を開始するという。
この車両の成り立ちは、三菱ミニキャブミーブに近い。先代ミニキャブをベースに、電気自動車であるiミーブのユニットを移植した軽バンで、2011年に発売された。
ミニキャブミーブの現行型は、モーターの最高出力が40馬力、最大トルクは20kgmで、リチウムイオン電池の総電力量は16kWhだ。1回の充電で、JC08モードにより、最大150kmを走行できる。
問題は価格で、2人乗りの2シーターが243万1000円、4人乗りの4シーターは245万3000円。軽バンは前述のとおり安いグレードになると100万円以下から用意されるので、240万円を超えると電気自動車でも購入しにくい。
そのためにミニキャブミーブの売れゆきは低迷して、2019年は521台(1カ月平均では43台)、2020年は1185台(同99台)であった。ASFと佐川急便が共同開発する配達用の電気自動車も、中国に生産を委託するとはいえ、価格をどの程度に設定できるかが課題になる。
その一方で、今後ミニキャブミーブを大幅に改良して、数年内に発売するという報道もある。販売店に問い合わせると「ミニキャブミーブは生産を終えて、改良やフルモデルチェンジを行う話は聞いていない」という。
ミニキャブミーブの大幅改良は不確定な情報だが、可能性はある。軽自動車サイズの電気自動車(乗用車)を市場に投入することは、すでに公表されているからだ。このユニットを使えば、新しい電気自動車の軽バンを開発できる。
この場合でも価格が課題になる。軽乗用車であれば、例えばN-BOXの最上級グレードは223万円に達するが、軽商用車でこの価格は難しい。そうなるとマイルドハイブリッドの燃費効率を高めて二酸化炭素の排出量を抑えるなど、既存の技術で対応する必要もある。
そもそも軽商用車は走る距離も短いので、燃費規制に別枠を設けてもいいだろう。公共の交通機関が未発達な地域では、軽乗用車はライフラインの役割を果たしている。
同様のことが軽商用車にも当てはまるから、環境対応の制度も、切実な経済状況のなかで軽バンを使うユーザーの目線で考えて欲しい。
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