世界5位の実力!? 韓国車は日本車に並ぶのか? 釜山モーターショーに見る韓国車の今

 電気自動車の激増やクルマそのものの質の著しい向上により、ここ1年ほど日本での販売はないものの、中国車への関心は日本でもにわかに高まっている。

 日本国内で販売されることはないが、北米市場などで日本メーカーが圧迫される可能性も大いにある。今日でも世界シェアが5位ともいわれるヒュンダイだけに、そのポテンシャルは侮れない。

 しかし、しばらく前に現在の中国車と同じように躍進したのは韓国車で、日本でもときおり話題になっていたが、最近の韓国車に関する話題は自動車メディアを見てもほとんどない。

 そんな中6月初旬に韓国釜山でモーターショーが行われ(韓国のモーターショーは隔年でソウルと釜山で開催される)、筆者は6年前の釜山モーターショー以来となる釜山に向かい、「韓国車の今」を取材した。

文/写真:永田恵一


■韓国メーカー5社をおさらい!!

 韓国メーカーといえば、現在日本国内で見かけるのはヒュンダイの観光バスが一番多いはずだ。しかし韓国には乗用車メーカー5社が存在し、北米などでも展開をしている。

【ヒュンダイ】
 もともとは三菱のようなグループ企業の自動車部門で、日本で言えばトヨタに相当する韓国最大の自動車メーカー。以前は三菱自動車と深い関係があった。

 ラインナップもトヨタのように商用車も含めフルラインナップに近く、トヨタのようといえば、後述する通り2015年にトヨタのレクサスにあたる高級ブランドの「ジェネシス」とトヨタのGRに近い「N」ブランドを立ち上げている。

【キア】
 以前はフェスティバを生産するなどマツダと深い関係があったが、1999年に経済危機の影響もあり経営破綻し、それ以降ヒュンダイ傘下となる。

 そのためキアのクルマはヒュンダイのプラットホームやパワートレーンを使いながら、価格も含めヒュンダイとはキャラクターの異なるモデルとなる。

 ヒュンダイとキアの関係を例えるならVWグループ内のVWに対するセアトやシェコダ、日産と今後の三菱自動車のようなところだ。

【韓国GM】
 かつての大字(デーウ)で2000年の経営破綻のあとGMが買収し、日本でも販売されたことがあるコンパクトカー「シボレーソニック」の生産を担当するなど、しばらく前まではGMにとって重要な部門であった。

 しかしGMが欧州からのシボレーブランドの撤退を決めるなどした影響で業績は低迷。最近は韓国国内の工場閉鎖や2兆ウォン(日本円で約2000億円、2017年)の赤字決算、賃上げのためのストライキなど暗い話題が目立つ。

【ルノーサムスン】
 1990年代に日産から技術提供を受け創業。しかし2000年に経営破綻し、日産に続くようにルノーアライアンスに入る。クルマ自体は一部ルノーサムソンが主導。

 ルノーへ供給されているモデルもあるが、ほとんどはルノー車と日産車ベースの兄弟車となる。

【サンヨン】
 現在はインドのマヒンドラ傘下で、SUVとピックアップトラックを得意とし、昨年まではベンツの旧世代直6エンジンを使う大型セダン「チェアマン」も生産していた。

 今回の釜山モーターショーには自国開催ながら不参加であった。

【韓国メーカーの韓国におけるシェア】

 韓国の年間乗用車販売台数は輸入車を含め約180万台。日本の人口が約1億3000万人で、軽と輸入車を含めた乗用車販売台数が約470万台なのを考えると、人口5000万人の韓国では妥当な台数といえる。

 韓国の乗用車販売台数の販売台数のうち70%以上をヒュンダイ&キアグループが占めており、実質的に韓国車=ヒュンダイ&キアグループと思っていいだろう。

 同時に韓国国内の販売よりずっと重要な世界販売台数では、2017年はヒュンダイが約451万台、キアが約275万台、ヒュンダイ&キアグループ合計では約726万台。

 この数字はVWグループ、ルノー&日産、トヨタグループ、GMに続く世界5位という高い国際競争力を持つ(6位はフォード、7位はホンダ)。

■エコカーは韓国勢の燃料電池車に要注目

 しばらく前の韓国車躍進の理由は大きくわけて以下の3点だった。

1. ヒュンダイソナタ(カムリ級のセダン)の先代モデルの流麗なスタイルに代表されるデザイン力の劇的な向上とインテリアの質感の高さ

2. エンジンはNAエンジンに加え、ディーゼルやダウンサイジングターボ、トランスミッションも多段ATに加え、DCTも設定するなど、豊富なパワートレーンを持つ

3. その上でアメリカでの価格を見ると同クラスのトヨタに対し約10%安と、やはり価格競争力が高い

 1.に関しては最近のヒュンダイ車のスタイル(主にグリル)にクセのようなものを感じるようになった、インテリアの質感が以前ほどは良くないモデルもある。

 エコカーに関してヒュンダイを例に挙げると、ハイブリッドカーはプリウスキラーという前評判もあったアイオニック、ソナタ、ソナタの1クラス上のグレンジャー(それぞれトランスミッションを持つフィットなどのホンダの1モーターハイブリッドに似た機構)がある。

アイオニックのEV。EV性能としてはリーフなどと遜色ない性能を持つ
アイオニックのEV。EV性能としてはリーフなどと遜色ない性能を持つ

 プラグインハイブリッドは1モーターハイブリッドのバッテリーを増やす形でアイオニック、ソナタに設定されているが、目新しさは特になかった。

 ヒュンダイのEVにはアイオニックとヴェゼルなどのサイズに相当するSUVのコナがある。

 アイオニックはハイブリッド、プラグインハイブリッド、EVと多くのラインアップを持つエコカーになる。28kWhのバッテリー容量で航続距離は約200km。

 SUVのコナはバッテリー容量64kWhで航続距離は約400kmとなる。キアにも数車種、韓国GMにもコンパクトカー級のボルトEV(バッテリー容量64kWhで航続距離は約400km)などがあり、日本車よりバリエーションは多い。

 しかしバッテリー容量と航続距離の関係をアメリカ仕様のリーフの約240kmを基準にして見ると、同等に近く、EVでも新しさは感じない。

 意外なのが燃料電池車で、2018年1月にアメリカで行われたCESで公開されたミドルクロスオーバーの燃料電池車となるネクソは韓国ではすでに販売されている。

燃料電池自動車のネクソ。燃料電池自動車が韓国でも発売されているというのは大きなトピックだ
燃料電池自動車のネクソ。燃料電池自動車が韓国でも発売されているというのは大きなトピックだ

 代表的なスペックは最高速179km/h、航続距離約600km、価格はベースグレードで約730万円(補助金などを差し引くと実質約340万円)といったあたり。

 「世界的に見れば燃料電池車が市販されているだけでも凄い」ということを頭に置けば、燃料電池車に関しては進んでいる。もはや日本並といえる。

 エコカーに関してまとめると「以前ほどの勢いはないにせよ、路線が近い日本車にとってはやはり手ごわい」というのが結論だ。

■ついにスポーツカーにも本腰で挑んできた韓国勢

 6年振りに韓国のモーターショーを見て最も韓国車の変化を感じたのはこのスポーツカーと高級車のカテゴリーだ。

 というのも6年前の韓国車にこの分野のモデルはヒュンダイのジェネシス(レクサスGS級のセダン)、スカイラインクーペのようなジェネシスクーペがあったくらいで寂しかった。

 そのあたりはかつての日本市場には山のようにスポーツカーがあったことを考えると、韓国メーカーのクルマ好き度は薄いのかもしれないと思ったものだ。

 しかし2018年に見たヒュンダイ&キアは「クルマ好き度」が一気に濃厚になっていた。驚くくらいに。

 その1台目が昨年(2017年)5月に登場したキアスティンガーだ。日本車ならスカイラインやレクサスIS級セダンのスティンガーは「BMW3シリーズキラー」とも言われているスポーツセダンである。

素直にカッコいい!! と思う人も多そうなスティンガー
素直にカッコいい!! と思う人も多そうなスティンガー

 開発にあたりBMWのスタッフを引き抜いていることもあり、内部構造を見てもエンジンルームの補強バーやバッテリーが後ろにある点などBMW的ではある

 スペック的には全長4830㎜×全幅1870㎜×全高1400㎜というスカイラインに近いボディサイズに、パワートレーンはすべて8速ATと組み合わせされる。

エンジンルーム内の補強などドイツ車らしき設計も垣間見える。開発者の影響だろう
エンジンルーム内の補強などドイツ車らしき設計も垣間見える。開発者の影響だろう

 2リッター直4ターボ(255馬力&36.0kgm)、2.2リッター直4ディーゼルターボ(202馬力&45.0kgm)、3.3リッターV6ツインターボ(370馬力&52.0kgm)を搭載し、4WDも設定される。

 プラットフォームは後述するジェネシスG70にも使われるものと共通で、このあたりはレクサスLSやLCに使われるトヨタのTNGA-Lプラットホームをサイズを変え新型クラウンも使っているのに似ているかもしれない。

 そして趣味性、スポーツ性という部分では各部にカーボンパーツやアルカンターラのステアリングやセレクトレバーを使う仕様もあり、全体的にビジネスライクな印象が強かった韓国車とは一線を画す。

 また釜山モーターショーに展示されていたのがSEMAショー(アメリカで行われる世界最大のカスタマイズカーショー)に出展されたモデルという点にも、韓国メーカーの変化を感じる。

 さらにアメリカでの価格は2リッターターボのベーシックモデルで3万1900ドル(約350万円)と、同等のエンジンを積むレクサスISのベーシックモデルに対し15%ほど安い。

 ベストカーでレーシングドライバーの松田秀士さんがレポートしているように乗ったフィーリングも良好というのだから日本車にとっては恐ろしい存在だ。

■高級車ブランドを生かすクルマ作り

 高級車分野での2つ目の話題が前述したヒュンダイの高級ブランド「ジェネシス」だ。車名からブランドに昇格したジェネシスは現在G70、G80、G90をラインアップ。

 時代とのマッチングはともかくとして、5リッターV8を積むG90があるというのもどこか余裕を感じられる。ジェネシスは現状だと全体的にリアビューやインテリアがベンツ的なところはあるのも事実。

G90は高級車感あふれる1台。外観はなにかの模倣にも見えるが、うかうかしていると脅威になるかもしれない
G90は高級車感あふれる1台。外観はなにかの模倣にも見えるが、うかうかしていると脅威になるかもしれない

 しかしG80とレクサスGSを比べるとやはり価格はG80が20%近く安く、これで高級品、高級車にとって機能以上に重要な要素でもある「個性、キャラクター、世界観」がハッキリしている。

 ここに2ドアクーペのような本当のラグジュアリーカーが「ジェネシスブランド」で出てくると、価格や機能だけでなくブランド力も高まりそうだ。

 と書いていたら、ジェネシスは今年のニューヨークモーターショーでEVで0-100km/h加速3秒というパフォーマンスを持つ2プラス2のスーパーカーのコンセプトカー「エッセンシア」をワールドプレミアしていたのを思い出した。

 また高級車ではキアもジェネシスG90の兄弟車となるK9を今年4月にフルモデルチェンジしている。

 そうそう、スポーツモデルといえば忘れてはいけない1台がある。

 ヒュンダイがi30(ゴルフ級の5ドアハッチバック)に続くNシリーズ第2弾として、デトロイトモーターショーでワールドプレミアしたヴェロスターNを釜山モーターショーで韓国初公開したのだ。

 ヴェロスターというクルマは一見3ドアのファストバッククーペに見えるのだが、よく見ると助手席側にはリアドアがあるという、ゴルフ級という車格も含め以前のVWシロッコに近いモデルである。

 ヴェロスターNは6速MTと組み合わされる2リッター直4ターボ(250馬力&36.0kgm)を搭載し、ラウンチコントロールやシビックタイプRのようなシフトダウンの際の回転を合わせてくれる機能なども備えるスポーツモデルだ。

ヴェロスターNはスポーツハッチ。スポーティな1台として人気が出そう
ヴェロスターNはスポーツハッチ。スポーティな1台として人気が出そう

 ここまではスタンダードモデルのスペックで、オプションのパフォーマンスパッケージを加えると最大トルクは変わらないものの、最高出力は275馬力にアップし、タイヤも18インチから19インチに大型化され、それに伴いブレーキディスクの1サイズ拡大。

 電子制御LSDなどが装備される。韓国での価格は約297万円(パフォーマンスパッケージは約20万円高)となる。ヴェロスターNはニュルブルクリンク北コースでのタイムの公表もなく、実力は未知数というのが率直な印象だ。

 しかしヒュンダイがこういった本格的なスポーツモデルを造り始めたというのは、韓国本国のユーザーへの影響はともかくとして、普通のクルマへのフィードバックやWRCでの活躍によるブランドイメージの向上につながるのは間違いないだろう。

 以上最新の韓国車を見た印象をまとめると、普及モデルやエコカーに関しては日本車にとって依然として怖い存在なのは事実ながら、特に新しい技術もなく停滞感のような印象は否めない。

 しかし高級車やスポーツモデルといった趣味性を求められるジャンルに力を入れ始めたヒュンダイ&キアを見ると、先々再び大化けする可能性は十分にある、というのが結論だ。

 それだけに日本のクルマ好きも日本で販売されないという背景は大きいにせよ、韓国車も常にマークしなければならない存在であるというのは頭に置くべきだと強く思う。

最新号

ベストカー最新号

さらばゴーン! どこへ行く? 日産 大特集|ベストカー 1月10日号

 いよいよ2018年は師走も中盤。12月10日に発売の「ベストカー」は、2019年1月10日号となる。そんな最新号では、来年登場が期待されるスモールカーの革命児、4台のスクープはもちろん、自動車業界内外で大きな話題となっている日産を大特集!…

カタログ